ステアリン酸PEG-40の基本情報・配合目的・安全性

ステアリン酸PEG-40

化粧品表示名 ステアリン酸PEG-40
医薬部外品表示名 モノステアリン酸ポリエチレングリコール
部外品表示簡略名 ステアリン酸PEG
INCI名 PEG-40 Stearate
配合目的 乳化可溶化

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、ステアリン酸に酸化エチレンをエステル結合して得られるモノエステル(∗1)であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン脂肪酸エステル(∗2)に分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です[1a]

∗1 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

∗2 分類名称としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの他にもポリエチレングリコール脂肪酸エステルまたは単にポリエチレングリコールエステルとよばれることもありますが、呼び方が違うだけで同様の分類です。

ステアリン酸PEG-40

1.2. 物性・性状

ステアリン酸PEG-40の性状は、

状態 微黄色の固体

このように報告されています[2a][3a]

また、ステアリン酸PEG類の物性としては、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗3)
ステアリン酸PEG-2 2 親油性
ステアリン酸PEG-10 10 親水性
ステアリン酸PEG-25 25
ステアリン酸PEG-40 40
ステアリン酸PEG-45 45
ステアリン酸PEG-55 55
ステアリン酸PEG-75 75
ステアリン酸PEG-100 100
ステアリン酸PEG-150 150

∗3 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため[4]、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のモノステアリン酸ポリエチレングリコールが使用されます。

1.3. 化粧品以外の主な用途

ステアリン酸PEG-40の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 可溶・可溶化、基剤、乳化、溶解補助目的の医薬品添加剤として外用剤、眼科用剤に用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性乳化
  • 可溶化

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、マスク製品、ネイルケア製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性乳化

親水性乳化に関しては、まず前提知識として乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。

乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[6][7]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[8]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[9]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[10][11a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[11b]

ステアリン酸PEG-40の乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
O/W型乳化 16.0[3b], 17.0[12a], 17.5[2b]

このように報告されており、親水性乳化剤として主にリキッドアイライナー、アイシャドー、ジェル系ファンデーション、フェイスクリーム、乳液、ボディケア製品、ハンドクリームなどに使用されています。

2.2. 可溶化

可溶化に関しては、ステアリン酸PEG-40はHLB16.0-17.5の親水性乳化剤であり[3c][12b][2c]、可溶化作用をもつことから、一般に透明の水溶性基剤の中に香料や油性成分を透明かつ均一に溶かし込む目的でスキンケア製品などに使用されています[1b]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1983年および2002年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ステアリン酸PEG-40の配合製品数と配合量の比較調査結果(1983年および2002年)

4. 安全性評価

ステアリン酸PEG-40の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性(すすぎあり):ほとんどなし
  • 眼刺激性(すすぎなし):ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13a]によると、

  • [ヒト試験] 50名および10名の被検者に60%および30%ステアリン酸PEG-40を72時間閉塞パッチ適用し、適用後7日間の休息期間を設けた後に再び72時間閉塞パッチ適用したところ、濃度に関係なくいずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(ICI United States,1977)
  • [ヒト試験] 60名の被検者に10%ステアリン酸PEG-40水溶液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応を示さなかった(Avon Products Inc,1976)

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13b]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に100%ステアリン酸PEG-40を適用し、Draize法に基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、非洗眼群で最大平均眼刺激スコアは2.7であり、洗眼群では0であった(ICI United States,1977)
  • [動物試験] ウサギの片眼に100%ステアリン酸PEG-40を適用し、Draize法に基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、非洗眼群で最大平均眼刺激スコアは1.33であり、洗眼群では0であった(Bio-Toxicology Labolatories,1975)

このように記載されており、試験データをみるかぎり洗眼の場合で眼刺激なし、非洗眼の場合で最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は洗眼した場合はほとんどなし、非洗眼の場合は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「ステアリン酸PEG-40」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,556.
  2. abc日光ケミカルズ株式会社(2021)「ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(2)」製品カタログ,43-44.
  3. abc日本エマルジョン株式会社(2018)「モノステアリン酸ポリエチレングリコール」EMALEX Amiter & Pyroter,13-14.
  4. 田村 健夫・廣田 博(2001)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「モノステアリン酸ポリエチレングリコール」医薬品添加物事典2021,681-682.
  6. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  7. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  9. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  10. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  11. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  12. abEvonik Industries AG(2008)「TEGO Acid S 40 P」Technical Data Sheet.
  13. abR.L. Elder(1983)「Final Report on the Safety Assessment of PEG-2, 6, 8,-12, 20, 32, 40, 50, 100, and 150 Stearates」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),17-34. DOI:10.3109/10915818309142000.

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