PEG-60水添ヒマシ油の基本情報・配合目的・安全性

化粧品表示名 PEG-60水添ヒマシ油
医薬部外品表示名 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
部外品表示簡略名 POE硬化ヒマシ油、POE水添ヒマシ油
INCI名 PEG-60 Hydrogenated Castor Oil
配合目的 乳化可溶化 など

1. 基本情報

1.1. 定義

水添ヒマシ油に酸化エチレン(約60モル)を付加重合して得られるエーテルおよびエステルの混合物であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です[1a]

1.2. 物性・性状

PEG-60水添ヒマシ油の性状は、

状態 白-微黄色のペーストまたは固体

このように報告されています[2a][3a][4a]

また、一般に化粧品に使用されているポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の物性としては、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗1)
PEG-5水添ヒマシ油 5 親油性
PEG-10水添ヒマシ油 10
PEG-20水添ヒマシ油 20 親水性
PEG-30水添ヒマシ油 30
PEG-40水添ヒマシ油 40
PEG-50水添ヒマシ油 50
PEG-60水添ヒマシ油 60
PEG-80水添ヒマシ油 80
PEG-100水添ヒマシ油 100

∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が大きくなるため、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が使用されています。

1.3. 化粧品以外の主な用途

PEG-60水添ヒマシ油の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 安定・安定化、界面活性剤、可溶・可溶化、基剤、懸濁・懸濁化、コーティング、乳化、溶解、賦形、分散、崩壊、溶剤、溶解補助目的の医薬品添加剤として経口剤、各種注射、外用剤、眼科用剤、歯科外用および口中用剤などに用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性乳化
  • 可溶化

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、マスク製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、ヘアスタイリング製品、プレスタイリング製品、アウトバストリートメント製品、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性乳化

親水性乳化に関しては、まず前提知識として乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。

乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[6][7]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[8]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[9]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[10][11a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[11b]

PEG-60水添ヒマシ油の乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
O/W型乳化 14.0[2b][3b][4b], 15.0[12]

このように報告されており、親水性乳化剤として主にスキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、マスク製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、ヘアスタイリング製品、プレスタイリング製品、アウトバストリートメント製品、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料など様々な製品に汎用されています。

2.2. 可溶化

可溶化に関しては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は付加モル数30-60のものが可溶化剤として最適であり、アルコールを多く含む系には酸化エチレン付加モル数の少ないほうが最適であることが知られています[13]

このような背景から、PEG-60水添ヒマシ油は一般にアルコールの少ない透明の水溶性基剤の中に香料や油性成分を透明かつ均一に溶かし込む目的で使用されています[1b][2c]

3. 混合原料としての配合目的

PEG-60水添ヒマシ油は、混合原料が開発されており、PEG-60水添ヒマシ油と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 EMALEX ML-158
構成成分 トリイソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油セテス-20
特徴 香料の可溶化剤としても使用できるマイクロエマルション用の乳化剤混合物
原料名 NIKKOL アクアソーム BH
構成成分 水添レシチンBGPEG-60水添ヒマシ油
特徴 皮膚への水分補給、保湿効果を高める多価アルコール含有リポソーム
原料名 NIKKOL アクアソーム VE
構成成分 水添レシチンBG酢酸トコフェロールPEG-60水添ヒマシ油
特徴 ビタミンEの皮膚への浸透を促進し効果を高めるビタミンE含有リポソーム
原料名 NIKKOL アクアソーム VA
構成成分 水添レシチンBGパルミチン酸レチノールピーナッツ油トコフェロールPEG-60水添ヒマシ油
特徴 ビタミンAの皮膚への浸透を促進し効果を高めるビタミンA含有リポソーム
原料名 NIKKOL アクアソーム AE
構成成分 水添レシチンBG酢酸トコフェロールパルミチン酸レチノールピーナッツ油トコフェロールPEG-60水添ヒマシ油
特徴 ビタミンA、Eの皮膚への浸透を促進し効果を高めるビタミンA、E含有リポソーム
原料名 NIKKOL ニコファイン UV
構成成分 PEG-60水添ヒマシ油メトキシケイヒ酸エチルヘキシルイソステアリン酸ソルビタンジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルDPGエチルヘキシルトリアゾンBGトコフェロールクエン酸クエン酸NaBHT
特徴 難溶性紫外線吸収剤を安定配合したナノエマルションベース

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

PEG-60水添ヒマシ油の配合製品数と配合量の比較調査結果(2012年)

5. 安全性評価

PEG-60水添ヒマシ油の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 1970年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14a]によると、

  • [ヒト試験] 102名の被検者に3%PEG-60水添ヒマシ油を含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、誘導期間においていずれの被検者においても皮膚刺激反応はみられず、また1名の被検者を除いて皮膚感作反応もみられなかった。反応がみられた1名の被検者はチャレンジ期間において偽陽性反応を示したため、再チャレンジパッチを適用したところ、陰性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)
  • [ヒト試験] 12名の被検者に3%PEG-60水添ヒマシ油を含む製剤を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、総合皮膚累積刺激スコアを0-756のスケールで評価したところ、総合皮膚累積刺激スコアは22であり、この試験物質を含む製剤は実質的に非刺激であると結論付けられた(Hill Top Research,1976)

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に3%PEG-60水添ヒマシ油を含む製剤を点眼し、眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、スコアは2であり、2匹に最小限の眼刺激がみられたが、すべての刺激は48時間までに消失した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

6. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「PEG-60水添ヒマシ油」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,51.
  2. abc日光ケミカルズ株式会社(2021)「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」製品カタログ,35-36.
  3. ab日本エマルジョン株式会社(2018)「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」EMALEX Amiter & Pyroter,17-18.
  4. ab花王株式会社(2020)「エマノーンCHシリーズ」花王の香粧品・医薬品原料,17-18.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60」医薬品添加物事典2021,572-573.
  6. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  7. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  9. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  10. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  11. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  12. 日油株式会社(2019)「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」化粧品用・医薬品用製品カタログ,76.
  13. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「ポリオキシエチレンヒマシ油, ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」新化粧品原料ハンドブックⅠ,231-232.
  14. abF.A. Andersen(1997)「Final Report on the Safety Assessment of Peg-30,-33,-35,-36, ANd-40 Castor Oil and Peg-30 and-40 Hydrogenated Castor Oil」International Journal of Toxicology(16)(3),269-306. DOI:10.1080/109158197227189.

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