ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの基本情報・配合目的・安全性

ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン

化粧品表示名 ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
INCI名 Polyglyceryl-3 Polydimethylsiloxyethyl Dimethicone
配合目的 乳化感触改良分散

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される有機化合物であり、シリコーン分岐型のポリグリセリン変性シリコーンに分類されるシリコーン系界面活性剤です[1]

ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン

1.2. 性状

ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの性状は、

状態 無色-淡黄色の液体

このように報告されています[2a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • シリコーン油の乳化
  • 柔らかさおよびしっとり感向上による感触改良
  • 分散

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、日焼け止め製品、化粧下地製品、コンシーラー製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親油性乳化またはシリコーン油の乳化

親油性乳化またはシリコーン油の乳化に関しては、まず前提知識としてシリコーン油(シリコーンオイル)、乳化およびエマルションについて解説します。

シリコーン油とは、ケイ素(Si)と酸素(O)が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格として構成された合成高分子化合物の総称であり、代表的なシリコーンかつPEG-3ジメチコンの主成分でもあるジメチコンは、直鎖状に伸びた Si-O-Si(シロキサン)主鎖に、側鎖として各ケイ素原子に2つのメチル基(-CH3をもつ高分子化合物です。

シリコーン油は、炭化水素と比較して分子容積が大きく、主鎖の屈曲・回転が容易に起こり、化学反応性の低いメチル基で覆われていることから、安定性および柔軟性が高く、分子間力や表面張力が低いなどの特徴があります[3a]

このような特徴から、肌表面への拡がり、撥水性(∗1)の付与、低表面張力などに起因するすべり性およびベタつきの防止などの効果が明らかにされており、1950年代から化粧品分野で汎用されています[3b]

∗1 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、シリコーン油は乳化が困難なオイルであり、感触改良を目的に少量添加する場合はそれほど問題にならないものの、主成分として使用するためには安定な乳化が必要となり、安定に乳化させるためには一般的にポリエーテル変性シリコーンが用いられます[3c]

次に、乳化とは互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[4][5]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[6]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[7]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[8][9a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[9b]

ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
W/Si型乳化 [2b]

このように報告されており、シリコーン油の乳化剤として主にメイクアップ製品、日焼け止め製品、化粧下地製品、コンシーラー製品などに汎用されています。

2.2. 柔らかさおよびしっとり感向上による感触改良

柔らかさおよびしっとり感向上による感触改良に関しては、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは親水性部分にポリグリセリンを用いたシリコーン界面活性剤であり、水分保持力に優れ、肌になじみやすく、非常に柔らかくしっとりとした感触を付与することから[10]、感触調整目的で主にメイクアップ製品、日焼け止め製品、化粧下地製品、コンシーラー製品などに汎用されています。

2.3. 分散

分散に関しては、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンはシリコーン分岐鎖型のシリコーン系界面活性剤であり、分岐鎖としてシリコーン鎖を有することによりシリコーンをはじめとする油性基剤への高い分散性を示し、顔料を均一かつ安定的に分散することにより製剤の安定性や透明性に高い効果を発揮することから[11]、油性基剤中に顔料を均一に分散させる目的でメイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品などに汎用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは混合原料が開発されており、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 SPD-T5
構成成分 シクロペンタシロキサン酸化チタンポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン水酸化Alステアリン酸
特徴 非常に低粘度でありながら、優れた分散安定性を有した微粒子チタンのシクロペンタシロキサン分散物
原料名 SPD-T6
構成成分 シクロペンタシロキサン酸化チタンポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンシリカ、(ハイドロゲンジメチコン/オクチルシルセスキオキサン)コポリマー、水酸化Al
特徴 非常に低粘度でありながら、優れた分散安定性を有した微粒子酸化チタンのシクロペンタシロキサン分散物
原料名 SPD-T7
構成成分 シクロペンタシロキサン酸化チタンポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン水酸化Alステアリン酸
特徴 非常に低粘度でありながら、優れた分散安定性を有した微粒子酸化チタンのシクロペンタシロキサン分散物
原料名 SPD-Z5
構成成分 酸化亜鉛シクロペンタシロキサンポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン
特徴 非常に低粘度でありながら、優れた分散安定性を有した微粒子酸化亜鉛のシクロペンタシロキサン分散物
原料名 SPD-Z6
構成成分 酸化亜鉛シクロペンタシロキサンポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、(ハイドロゲンジメチコン/オクチルシルセスキオキサン)コポリマー
特徴 非常に低粘度でありながら、優れた分散安定性を有した微粒子酸化亜鉛のシクロペンタシロキサン分散物

4. 安全性評価

ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの現時点での安全性は、

  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,916.
  2. abShin-Etsu Chemical Co., Ltd.(2012)「KF-6104」Technical Data Sheet.
  3. abc近藤 秀俊(2012)「パーソナルケア製品におけるシリコーンの利用」化学と教育(60)(7),318-319. DOI:10.20665/kakyoshi.60.7_318.
  4. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  5. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  6. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  9. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  10. 信越化学工業株式会社(2021)「ポリエーテル変性シリコーンゲル」化粧品用シリコーン オリジナル原料 Plus,10.
  11. 信越化学工業株式会社(2015)「シリコーン分散剤」製品カタログ.

TOPへ