PPG-2-デセス-7の基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | PPG-2-デセス-7 |
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INCI名 | PPG-2-Deceth-7 |
配合目的 | 乳化 |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表されるデシルアルコールに酸化エチレン(約7モル)および酸化プロピレン(約2モル)をエーテル結合して得られるエーテルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルに分類される非イオン性界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)です[1]。
1.2. 物性・性状
PPG-2-デセス-7の性状は、
状態 | 微黄色の液体 |
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このように報告されています[2a]。
また、一般に化粧品に使用されているポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルの物性としては、
種類 | 平均酸化エチレン付加モル数 | HLB(∗1) |
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PPG-2-デセス-7 | 7 | 親水性 |
PPG-2-デセス-12 | 12 | |
PPG-2-デセス-30 | 30 |
∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。
これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が大きくなるため[3]、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルが使用されています。
2. 化粧品としての配合目的
- 親水性乳化
主にこれらの目的で、香水、フレグランス製品、メイクアップリムーバー製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 親水性乳化
親水性乳化に関しては、まず前提知識として乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。
乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[4][5]。
そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[6]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、
水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[7]。
身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。
次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[8][9a]。
このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、
HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[9b]。
PPG-2-デセス-7の乳化の特徴は、
乳化の種類 | HLB |
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O/W型乳化 | 10.0[2b] |
このように報告されており、親水性乳化剤として香水、フレグランス製品、メイクアップリムーバー製品などに使用されています。
3. 安全性評価
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(PEG/PPGアルキルエーテル)は、アルキルアルコールに1モル以上のPEGおよびPPGが結合したエーテルですが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(PEGアルキルエーテル)と似た物理化学的特性を有しており、PEGアルキルエーテルは非刺激性となるように処方されている場合において安全であることが判明しています[10a]。
また、PEGアルキルエーテルとの唯一の違いはポリオキシプロピレン(PPG)の有無ですが、PPGは非刺激性となるように配合されている場合は安全であることが明らかとなっています[10b]。
PPG-2-デセス-7については、試験データはみあたりませんが、PEGアルキルエーテルおよびPPGはそれぞれ非刺激性となるように処方されている場合に安全性が明らかにされており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。
3.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
4. 参考文献
- ⌃日本化粧品工業連合会(2013)「PPG-2-デセス-7」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,87.
- ⌃ab日本エマルジョン株式会社(2018)「ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルエーテル」EMALEX Amiter & Pyroter,3-4.
- ⌃田村 健夫・廣田 博(2001)「酸化エチレン縮合型」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-146.
- ⌃薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
- ⌃鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
- ⌃鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
- ⌃田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
- ⌃鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
- ⌃ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
- ⌃abM.M. Fiume, et al(2016)「Safety Assessment of Alkyl PEG/PPG Ethers as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(35)(1_suppl),60S-89S. DOI:10.1177/1091581816650626.