ラウレス-9の基本情報・配合目的・安全性

ラウレス-9

化粧品表示名 ラウレス-9
医薬部外品表示名 ポリオキシエチレンラウリルエーテル
部外品表示簡略名 POEラウリルエーテル
INCI名 Laureth-9
配合目的 乳化

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるラウリルアルコールに酸化エチレン(約9モル)をエーテル結合して得られるエーテルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンアルキルエーテルに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です[1]

ラウレス-9

1.2. 物性・性状

ラウレス-9の性状は、

状態 無色-微黄色の透明液体、黄色のペーストまたは白色の固体

このように報告されています[2a][3a][4a][5a]

また、一般に化粧品に使用されているポリオキシエチレンラウリルエーテルの物性としては、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗1)
ラウレス-2 2 親油性
ラウレス-3 3 親水性
ラウレス-4 4
ラウレス-7 7
ラウレス-9 9
ラウレス-21 21
ラウレス-23 23
ラウレス-25 25
ラウレス-30 30

∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が大きくなるため[6a]、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレンラウリルエーテルが使用されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性乳化

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性乳化

親水性乳化に関しては、まず前提知識として乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。

乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[7][8]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[9]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[10]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[11][12a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[12b]

ラウレス-9の乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
O/W型乳化 12.0[3b], 13.6[4b][13], 14.3[5b], 14.5[2b]

このように報告されており、親水性乳化剤としてメイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ラウレス-9は、混合原料が開発されており、ラウレス-9と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Euperlan PK 810 JP
構成成分 ジステアリン酸グリコールラウレス硫酸NaコカミドMEAラウレス-9
特徴 パール化剤

4. 配合製品数および配合量範囲

ポリオキシエチレンラウリルエーテル(8-10E.O.)は麻酔性があることから[6b]配合制限リスト(リストリクテッドリスト)収載成分となっており、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
すべての化粧品 合計量として1.0

化粧品に対する実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウレス-9の配合製品数と配合量の比較調査結果(2010年)

5. 安全性評価

ラウレス-9の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし-ごくまれに皮膚感作を引き起こす可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14a]によると、

  • [ヒト試験] 1992-1999年において3,186名の被検者に0.5%ラウレス-9を対象にパッチテストを実施し、パッチ除去72時間まで皮膚反応を評価したところ、29名(0.94%)にほとんど知覚できない紅斑、28名(0.88%)にわずかな刺激反応がみられた(W. Uter,2000)
  • [ヒト試験] 6,202名の被検者に3%ラウレス-9を対象にパッチテストを実施し、パッチ除去72時間まで皮膚反応を評価したところ、111名(1.79%)にほとんど知覚できない紅斑、30名(0.48%)に刺激反応がみられた(W. Uter,2000)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-わずかな皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14b]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に5%ラウレス-9水溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激を示さなかった(Food and Drug Administration,-)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14c]およびイタリアのジェノバ大学皮膚科とサンマルティーノ病院アレルギー科の臨床データ[15]によると、

  • [ヒト試験] 1992-1999年において3,186名の被検者に0.5%ラウレス-9を対象にパッチテストを実施し、パッチ除去72時間まで皮膚反応を評価したところ、30名(0.97%)に弱い陽性反応、8名(0.25%)に強い陽性反応がみられた(W. Uter,2000)
  • [ヒト試験] 6,202名の被検者に3%ラウレス-9を対象にパッチテストを実施し、パッチ除去72時間まで皮膚反応を評価したところ、109名(1.77%)に弱い陽性反応、21名(0.34%)に強い陽性反応がみられた(W. Uter,2000)
  • [ヒト試験] 51名の被検者に10%,15%および20%ラウレス-9を含むクリーム製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間においてすべての濃度で皮膚反応がみられた。反応のほとんどは軽度であった中で、濃度20%の3回目のパッチ以降およびすべての濃度の6回目のパッチ以降で中程度の反応がいくつかみられたが、これらは皮膚疲労であると解釈された。チャレンジ期間においては濃度10%および15%でそれぞれ5名、濃度20%で9名に軽度の反応がみられたが、これらはいずれも感作反応ではなかった(DA Berberian,1965)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [個別事例] ニッケルおよび香料にアレルギーを有する32歳の看護師(アトピー性皮膚炎ではない)は様々なブランドの使い捨て手袋が多く使用されている救急病棟で働いており、仕事に関連した手の湿疹が1年ほど続いていることから、天然ゴムラテックスアレルギーのパッチテストを行ったところ皮膚感作反応を示さず、またイタリアの標準シリーズでのパッチテストでは、明らかに無関係であるニッケルと香料に対する感作が確認されただけだった。彼女は無香料の保湿ローションを1日に数回使用しており、保湿ローションの使用を停止したところ、湿疹は3週間以内に治りました。この保湿ローションの個々の成分をパッチテストする中で3%ラウレス-9水溶液およびポリクオタニウム-7で陽性反応を示した。0.3%,3%および10%ラウレス-9水溶液および0.1%,0.5%および1%ポリクオタニウム-7水溶液を彼女および対照の20名にパッチテストしたところ、彼女は両方の物質のすべての希釈液に++の陽性反応を示したが、対照の20名は反応を示さなかった。彼女には無香料、ラウレス-9およびポリクオタニウム-7を含まないスキンケア製品が処方され、それ以来症状はなかった(R. Gallo et al,2002)

このように記載されており、試験データをみるかぎり実際に使用されている濃度2%以下においてほとんど皮膚感作なしと報告されていることから、一般に濃度2%以下において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、少ないながら皮膚感作の報告もあることから、ごくまれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ラウレス-9」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1041.
  2. ab日光ケミカルズ株式会社(2021)「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(1)」製品カタログ,37-38.
  3. ab日本エマルジョン株式会社(2018)「ポリオキシエチレンラウリルエーテル」EMALEX Amiter & Pyroter,3-4.
  4. ab花王株式会社(2020)「エマルゲンシリーズ(1)」花王の香粧品・医薬品原料,13-14.
  5. abCroda Inc(2010)「Ethoxylated Fatty Alcohols」Personal Care Product Guide,18-19.
  6. ab田村 健夫・廣田 博(2001)「酸化エチレン縮合型」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-146.
  7. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  9. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  10. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  11. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  12. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  13. 日油株式会社(2019)「ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル」化粧品用・医薬品用製品カタログ,57-59.
  14. abcM.M. Fiume, et al(2012)「Safety Assessment of Alkyl PEG Ethers as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(31)(5),169S-244S. DOI:10.1177/1091581812444141.
  15. R. Gallo, et al(2002)「Allergic contact dermatitis from laureth‐9 and polyquaternium‐7 in a skin‐care product」Contact Dermatitis(45)(6),356-357. DOI:10.1034/j.1600-0536.2001.450608.x.

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