ステアリン酸PEG-15グリセリルの基本情報・配合目的・安全性

ステアリン酸PEG-15グリセリル

化粧品表示名 ステアリン酸PEG-15グリセリル
医薬部外品表示名 モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル
部外品表示簡略名 ステアリン酸POEグリセリル
INCI名 PEG-15 Glyceryl Stearate
配合目的 乳化

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるステアリン酸のカルボキシ基(-COOH)にポリオキシエチレングリセリルのヒドロキシ基(-OH)を脱水縮合(∗1)したエーテルエステル化物であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに分類される非イオン性界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)です[1]

∗1 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。

ステアリン酸PEG-15グリセリル

1.2. 物性・性状

ステアリン酸PEG-15グリセリルの性状は、

状態 白-微黄色のペーストまたは固体

このように報告されています[2a][3a]

また、一般に化粧品に使用されているモノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルの物性としては、

種類 酸化エチレン
(平均付加モル数)
HLB(∗2)
ステアリン酸PEG-5グリセリル 5 親水性
ステアリン酸PEG-15グリセリル 15

∗2 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が大きくなるため[4]、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のモノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルが使用されています。

1.3. 化粧品以外の主な用途

ステアリン酸PEG-15グリセリルの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 乳化目的の医薬品添加剤として外用剤に用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性乳化

主にこれらの目的で、マスカラ製品、スキンケア製品、クレンジング製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性乳化

親水性乳化に関しては、まず前提知識として乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。

乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[6][7]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[8]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[9]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[10][11a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[11b]

ステアリン酸PEG-15グリセリルの乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
O/W型乳化 13.0[3b], 13.5[2b]

このように報告されており、親水性乳化剤としてマスカラ製品、スキンケア製品、クレンジング製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ステアリン酸PEG-15グリセリルは混合原料が開発されており、ステアリン酸PEG-15グリセリルと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 EMACOL SKN-131
構成成分 ポリソルベート60ベヘニルアルコールステアリン酸グリセリルエチルヘキサン酸セチルオクチルドデカノールステアリン酸ポリグリセリル-2ステアリン酸PEG-15グリセリル
特徴 耐塩性に優れたスキンクリームベース

4. 安全性評価

ステアリン酸PEG-15グリセリルの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

医薬部外品原料規格2021に収載されており、15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ステアリン酸PEG-15グリセリル」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,558.
  2. ab日光ケミカルズ株式会社(2021)「ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル」製品カタログ,29-30.
  3. ab日本エマルジョン株式会社(2018)「イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル」EMALEX Amiter & Pyroter,15-16.
  4. 田村 健夫・廣田 博(2001)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン」医薬品添加物事典2021,682-683.
  6. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  7. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  8. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  9. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  10. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  11. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.

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