ステアリン酸PEG-55の基本情報・配合目的・安全性

ステアリン酸PEG-55

化粧品表示名 ステアリン酸PEG-55
医薬部外品表示名 モノステアリン酸ポリエチレングリコール
部外品表示簡略名 ステアリン酸PEG
INCI名 PEG-55 Stearate
配合目的 乳化 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、ステアリン酸に酸化エチレンをエステル結合して得られるモノエステル(∗1)であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン脂肪酸エステル(∗2)に分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です[1]

∗1 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

∗2 分類名称としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの他にもポリエチレングリコール脂肪酸エステルまたは単にポリエチレングリコールエステルとよばれることもありますが、呼び方が違うだけで同様の分類です。

ステアリン酸PEG-55

1.2. 物性・性状

ステアリン酸PEG-55の性状は、

状態 白-微黄色のフレークまたはペレット

このように報告されています[2a]

ステアリン酸PEG類の物性は、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗3)
ステアリン酸PEG-2 2 親油性
ステアリン酸PEG-10 10 親水性
ステアリン酸PEG-25 25
ステアリン酸PEG-40 40
ステアリン酸PEG-45 45
ステアリン酸PEG-55 55
ステアリン酸PEG-75 75
ステアリン酸PEG-100 100
ステアリン酸PEG-150 150

∗3 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため[3]、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のモノステアリン酸ポリエチレングリコールが配合されます。

1.3. 化粧品以外の主な用途

ステアリン酸PEG-55の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 可溶・可溶化、基剤、乳化、溶解補助目的の医薬品添加剤として外用剤、眼科用剤に用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 親水性乳化

主にこれらの目的で、コンディショナー製品、トリートメント製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 親水性乳化

親水性乳化に関しては、まず前提知識として乳化、エマルションおよびHLBについて解説します。

乳化とは、互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)となり他方の液体中に均一に分散されることをいいます[5][6]

そして、油と水のように互いに溶け合わない2種の液体の一方が微細な液滴(乳化粒子)として他の液体中に分散している乳化物をエマルション(emulsion)といい[7]、基本的なエマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散しているO/W型(Oil in Water type:水中油滴型)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散しているW/O型(Water in Oil type:油中水滴型)があります[8]

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

次に、界面活性剤のように分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せもつ両親媒性分子は、どちらかといえば水になじみやすいものとどちらかといえば油になじみやすいものがあり、このわずかな親和性の違いが界面活性剤の挙動を劇的に変えることが知られています[9][10a]

このような背景から、界面活性剤の水と油へのなじみやすさの程度を示す指標としてHLB(hydrophile-lipophile-balance:親水性-親油性バランス)が提案・提唱されており、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、水への分散・溶解の挙動

HLB「7」を基準とし、「7」以上でどちらかといえば親水性を、「7」以下でどちらかといえば親油性を示すことが予想され、またHLB8-18の界面活性剤はO/W型エマルションを、HLB3.5-6の界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから、界面活性剤型乳化剤の作用を知る上で有用であると考えられています[10b]

ステアリン酸PEG-55の乳化の特徴は、

乳化の種類 HLB
O/W型乳化 18.0[2b]

このように報告されており、親水性乳化剤として主にコンディショナー、トリートメント、ボディローション、ハンドクリーム、乳液などに使用されています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1983年および2002年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ステアリン酸PEG-55の配合製品数と配合量の比較調査結果(1983年および2002年)

4. 安全性評価

ステアリン酸PEG-55の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

ステアリン酸PEG-55については十分な安全性データがありませんが、化学構造が類似していてポリエチレングリコールの付加数が近いステアリン酸PEG-50やステアリン酸PEG-100については皮膚刺激性および皮膚感作性がほとんどないことから[11]、同様に安全性に問題のない成分であると考えられます。

また、医薬品添加物規格2018および医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないこともステアリン酸PEG-55の安全性を裏付けていると考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ステアリン酸PEG-55」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,557.
  2. ab日光ケミカルズ株式会社(2021)「ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(2)」製品カタログ,43-44.
  3. 田村 健夫・廣田 博(2001)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「モノステアリン酸ポリエチレングリコール」医薬品添加物事典2021,681-682.
  5. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「乳化」薬科学大辞典 第5版,1150.
  6. 鈴木 敏幸(2003)「乳化」化粧品事典,638-639.
  7. 鈴木 敏幸(2003)「エマルション」化粧品事典,356.
  8. 田村 健夫・廣田 博(2001)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  9. 鈴木 敏幸(2003)「親水性-親油性バランス」化粧品事典,531.
  10. ab野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,35-39.
  11. R.L. Elder(1983)「Final Report on the Safety Assessment of PEG-2, 6, 8,-12, 20, 32, 40, 50, 100, and 150 Stearates」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),17-34. DOI:10.3109/10915818309142000.

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