スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの基本情報・配合目的・安全性

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa

化粧品表示名 スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa
医薬部外品表示名 スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)ナトリウム液
部外品表示別名 ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム液
部外品表示簡略名 スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa液、ジオクチルスルホコハク酸Na液
INCI名 Diethylhexyl Sodium Sulfosuccinate
配合目的 分散乳化安定化 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるスルホコハク酸と2-エチルヘキシルアルコールのジエステル(∗1)のナトリウム塩であり、アルキルスルホコハク酸塩(Alkyl Sulfosuccinate)に分類される陰イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤)です[1]

∗1 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa

1.2. 性状

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの性状は、

状態 無色の液体

このように報告されています[2a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 分散
  • 乳化安定化

主にこれらの目的で、アイ系メイクアップ製品、ネイル製品、パック製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 分散

分散に関しては、スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは親水基が分子の中央にあり、2個のアルキル基が分岐した構造のジアルキルスルホコハク酸塩であり、浸透剤としては優れるものの洗浄力は発揮しないことが知られていますが[3]、有機溶剤や油に溶けやすく、顔料を均一かつ安定的に分散することから、顔料を均一に分散させる目的でメイクアップ製品、ネイル製品などに使用されています[2b]

2.2. 乳化安定化

乳化安定化に関しては、スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは親水基が分子の中央にあり、2個のアルキル基が分岐した構造のジアルキルスルホコハク酸塩であり、油に溶けやすく、油に対する界面張力が低く、液晶構造をつくりやすいことなどから[4]、O/W型マイクロエマルションの調整・安定化目的でメイクアップ製品などに使用されています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984-1995年および2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの配合製品数と配合量の比較調査結果(1984-1995年および2013年)

4. 安全性評価

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし-中程度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし
  • 皮膚吸収性:非常に低い(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下の中で非刺激性になるよう配合される場合において一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5a][6a]によると、

  • [ヒト試験] 50名の被検者に2.5%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製剤を対象に24時間閉塞パッチを適用し、パッチ除去24および48時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(Gesellschaft für Therapie-und Leistungsforschung,1994)
  • [ヒト試験] 7名の被検者に1.13%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象に21日間累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施し、日々の皮膚刺激スコア0-4のスケールで皮膚刺激性を評価したところ、7名の被検者の21日間総合累積刺激スコアは最大578のうち324であった。被検者1名の平均スコアは最大84のうち46.3であり、被検者のうち最小スコアは15、最大スコアは73であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 100名の被検者に0.42%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において4名の被検者に軽度の紅斑がみられたが、チャレンジ期間ではいずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 94名の被検者に0.21%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間で27名の被検者にほとんど知覚できないレベルから軽度の紅斑がみられ、チャレンジ期間では5名の被検者にほとんど知覚できないレベルの紅斑がみられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 94名の被検者に0.1%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において4名の被検者にほとんど知覚できないレベルの紅斑がみられたが、チャレンジ期間ではいずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 100名の被検者に2.5%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む軟膏0.3gを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において11名の被検者に軽度の紅斑がみられたが、チャレンジ期間ではいずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(European Commission,2013)

– 個別事例 –

  • [個別事例] 1名の女性患者は局所コルチコステロイドの単一皮膚用量成分の後に皮膚刺激がみられたため、パッチテストを実施したところ、1%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa水溶液に対して+++の反応を示した。これはまれな反応であることが指摘された(AY Lee and KH Lee,1998)

このように、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

また、皮膚累積刺激については、非刺激-中程度の累積刺激が報告されているため、一般に非刺激-中程度の皮膚累積刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性については、試験データをみるかぎり、個別事例を除いて共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5b]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に10%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含むPG溶液を点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、この試験製剤は最小限の眼刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [動物試験] ウサギの片眼に0.1,0.25,0.5および1%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを1日1回6日間にわたって点眼したところ、濃度0.1%の単回適用は影響がなく、反復投与は軽度の結膜刺激が生じたものの24時間以内に消失した。濃度0.5%の単回適用は結膜充血、浮腫、上皮の弛緩、わずかな角膜の染色を生じ、反復適用はこれらの影響が増したが、48時間以内には影響は消失した。濃度1%の単回適用は結膜充血、上皮の弛緩、眼瞼痙攣、角膜の曇りと染色がみられたが24時間以内に消失し、反復適用では同様の影響を生じたが72時間以内に消失した(Leopold,1945)
  • [動物試験] 3匹のウサギの両眼にスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを数滴点眼し、右眼は点眼30秒後にすすぎ、左眼はすすがず、1,24時間および48時間および7日後に眼刺激性を評価したところ、濃度1%は両眼にほとんどまたはまったく影響を与えなかった。濃度5%は両眼で同様の最小限の刺激が観察されたが、1週間以内に消失し、角膜の損傷はなかった。濃度25%はすすがれた眼では5%よりわずかに強い刺激がみられ、すすいでいない眼では角膜損傷および視力傷害などの重篤な影響が生じた(Olson et al,1962)

このように、記載試験データをみるかぎり実際に使用されている配合範囲である4.4%以下において非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5c]によると、

  • [ヒト試験] 25名の被検者に0.25%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても光感作の兆候はみられなかった((Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)

このように、記載試験データをみるかぎり光感作なしと報告されているため、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

4.4. 皮膚吸収性

試験データはみあたりませんが、スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは皮膚から吸収されるとは考えられないと報告されており、また動物による急性皮膚毒性は非常に低く、皮膚に影響を与える可能性がほとんどないことが示唆されています[6b]

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,584.
  2. ab日光ケミカルズ株式会社(2021)「アルキルスルホン酸塩」製品カタログ,51-52.
  3. 日本油化学会編(2009)「アニオン界面活性剤」界面と界面活性剤 改訂第2版,42-47.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「アルキルスルホコハク酸塩」新化粧品原料ハンドブックⅡ,188-189.
  5. abcF.A. Andersen(1998)「Amended Final Report On the Safety Assessment of Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」International Journal of Toxicology(17)(4),1-20. DOI:10.1177/109158189801700403.
  6. abM.M. Fiume, et al(2016)「Safety Assessment of Dialkyl Sulfosuccinate Salts as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(35)(3_suppl),34S-46S. DOI:10.1177/1091581816673808.

TOPへ