ココイルグルタミン酸2Naの基本情報・配合目的・安全性

公開日:2023年2月9日  最終更新日:2023年02月09日

ココイルグルタミン酸2Na

化粧品表示名 ココイルグルタミン酸2Na
INCI名 Disodium Cocoyl Glutamate
配合目的 洗浄
  1. 基本情報
    1. 定義
    2. 性状
  2. 化粧品としての配合目的
    1. 洗浄作用
  3. 混合原料としての配合目的
  4. 配合製品数および配合量範囲
  5. 安全性評価
    1. 皮膚刺激性および皮膚感作性（アレルギー性）
    2. 眼刺激性
  6. 参考文献

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるヤシ脂肪酸とグルタミン酸との縮合物の二ナトリウム塩であり、アミノ酸系界面活性剤のアシルグルタミン酸塩（Acyl Glutamate：AG）に分類される陰イオン性界面活性剤（アニオン性界面活性剤）です[1]。

ココイルグルタミン酸2Na

1.2. 性状

ココイルグルタミン酸2Naの性状は、

状態 液体

このように報告されています[2a]。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 洗浄作用

主にこれらの目的で、シャンプー製品、洗顔料、ボディソープ製品、ハンドソープ製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 洗浄作用

洗浄作用に関しては、前提知識として洗浄作用および洗浄のメカニズムについて解説します。

「汚れる」ということは、汚れが固体表面へ付着することであり、汚れを除去するためには汚れの付着エネルギー以上のエネルギーを外部から加える必要があることが知られています[3a]。

洗浄作用とは、この付着エネルギーを最小にして、汚れを取り除きやすくして汚れを再付着しにくくすることをいい、具体的な洗浄作用のメカニズムについては以下の洗浄のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

洗浄のメカニズム

まず汚れおよび固体表面が洗浄液でぬれ、次に汚れおよび固体表面に界面活性剤が吸着し、そして汚れがローリングアップ(∗1)、乳化、可溶化によって分散・溶解し、最後に再付着しないようにすすぐことで除去されるといった一連の過程になります[3b][4]。

∗1 液体汚れが油滴となって固体表面から離脱する現象のことです。

アニオン界面活性剤においてアシルグルタミン酸塩は、皮膚または粘膜に対する刺激が少なく、適度な起泡力および洗浄力を有することが知られており[5][6][7]、ココイルグルタミン酸2Naは皮膚と同じ弱酸性を示し、低刺激性で耐硬水性、適度な洗浄力および優れた起泡力を有すること、使用後になめらかな感触を付与することから[2b][8]、主にシャンプー製品、洗顔料、ボディソープ製品、ハンドソープ製品などに使用されています。

2007年に味の素によって報告されたココイルグルタミン酸2Naの起泡性検証によると、

– 泡立ち性試験 –

ココイルグルタミン酸2Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルサルコシンNaおよびココイルメチルタウリンNaそれぞれ濃度1.2%水溶液の0および5分後の泡高さを35℃、pH5.8、軟水の条件下で0および5分後の泡ボリュームを測定したところ、以下のグラフのように、

ココイルグルタミン酸2Naの起泡性

ココイルグルタミン酸2Naは0および5分後の両方において優れた起泡力を示した。

このような検証結果が明らかにされており[2c]、ココイルグルタミン酸2Naは優れた起泡力が認められています。

3. 混合原料としての配合目的

ココイルグルタミン酸2Naは混合原料が開発されており、ココイルグルタミン酸2Naと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Amisoft CS-22
構成成分 ココイルグルタミン酸2Na、ココイルグルタミン酸Na、水
特徴 溶液中で弱酸性を示し、低刺激性で毛髪にパサつきなくなめらかな感触を付与する混合陰イオン活性剤および保湿剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)。

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品（スキンケア製品やメイクアップ製品など）を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品（シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど）を指します。

ココイルグルタミン酸2Naの配合製品数と配合量の比較調査結果（2013年）

5. 安全性評価

ココイルグルタミン酸2Naの現時点での安全性は、

  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性（リーブオン製品）：濃度0.3%以下においてほとんどなし（データなし）
  • 皮膚刺激性（リンスオフ製品）：濃度3%以下においてほとんどなし（データなし）
  • 眼刺激性：詳細不明
  • 皮膚感作性（アレルギー性）：ほとんどなし（データなし）

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性（アレルギー性）

試験データはみあたりませんが、15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらず、現在の使用法および化粧品配合濃度において安全であると結論付けられていることから[9]、一般にリーブオン製品では濃度0.3%以下、リンスオフ製品では濃度3%以下において安全に使用できると考えられます。

5.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

6. 参考文献

  1. ⌃日本化粧品工業連合会（2013）「ココイルグルタミン酸2Na」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,404.
  2. ⌃abS.A. Ajinomoto OmniChem N.V（2007）「AMISOFT ECS-22W」Technical Data Sheet.
  3. ⌃ab日光ケミカルズ株式会社（2006）「洗浄のメカニズム」新化粧品原料ハンドブックⅡ,631-635.
  4. ⌃鈴木 敏幸（2003）「洗浄剤」化粧品事典,567.
  5. ⌃吉田 良之助, 他（1977）「新界面活性剤 N-アシルグルタマートの製造技術及び応用技術の開発と工業化」油化学(26)(12),747-753. DOI:10.5650/jos1956.26.747.
  6. ⌃竹原 将博（1985）「アミノ酸系界面活性剤」油化学(34)(11),964-972. DOI:10.5650/jos1956.34.964.
  7. ⌃坂本 一民（1995）「アミノ酸系界面活性剤」油化学(44)(4),256-265. DOI:10.5650/jos1956.44.256.
  8. ⌃Sino Lion USA, Ltd.（2021）「Eversoft UCS-100S」Product Catalog,3.
  9. ⌃C.L. Burnett（2017）「Safety Assessment of Amino Acid Alkyl Amides as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(36)(1_suppl),17S-56S. DOI:10.1177/1091581816686048.

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