デシルグルコシドの基本情報・配合目的・安全性

デシルグルコシド

化粧品表示名 デシルグルコシド
医薬部外品表示名 アルキル(8~16)グルコシド
部外品表示別名 アルキルグリコシド
INCI名 Decyl Glucoside
配合目的 洗浄 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるデシルアルコール(∗1)とグルコースポリマー(∗2)を縮合して得られる物質であり、多価アルコール縮合型(∗3)のアルキルグリコシド(∗4)に分類される非イオン性界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)です[1]

∗1 アルコール類のうち炭素数6以上の一価アルコールが高級アルコールに分類されることからデシルアルコールは高級アルコールの一種であり、化学物質名として1-デカノール(1-Decanol)とよばれます。

∗2 ポリマー(polymer)とは、モノマー(monomer:単量体)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(重合体)のことをいいます。

∗3 グルコースは単糖であり、糖は多価アルコールの最初の酸化生成物であることから、非イオン界面活性剤の分類においては多価アルコール関連物質として多価アルコールに分類し、ここでは多価アルコール縮合型としています。

∗4 アルキルポリグリコシドともよばれます。

デシルグルコシド

1.2. 性状

デシルグルコシドの性状は、

状態 淡黄色-黄色の液体

このように報告されています[2a][3a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 洗浄作用

主にこれらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料、クレンジング製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 洗浄作用

洗浄作用に関しては、前提知識として洗浄作用および洗浄のメカニズムについて解説します。

「汚れる」ということは、汚れが固体表面へ付着することであり、汚れを除去するためには汚れの付着エネルギー以上のエネルギーを外部から加える必要があることが知られています[4a]

洗浄作用とは、この付着エネルギーを最小にして、汚れを取り除きやすくして汚れを再付着しにくくすることをいい、具体的な洗浄作用のメカニズムについては以下の洗浄のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

洗浄のメカニズム

まず汚れおよび固体表面が洗浄液でぬれ、次に汚れおよび固体表面に界面活性剤が吸着し、そして汚れがローリングアップ(∗5)、乳化、可溶化によって分散・溶解し、最後に再付着しないようにすすぐことで除去されるといった一連の過程になります[4b][5]

∗5 液体汚れが油滴となって固体表面から離脱する現象のことです。

デシルグルコシドは、グルコースポリマーを親水基、デシルアルコールを疎水基としたアルキルグリコシド(非イオン界面活性剤)ですが、アルルグリコシドは非イオン界面活性剤でありながら優れた洗浄力と高い起泡性を有しており、かつ陰イオン界面活性剤と比較して皮膚に対して低刺激性であることから、洗浄目的で主にシャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料、クレンジング製品などに汎用されています[2b][3b][6]

3. 混合原料としての配合目的

デシルグルコシドは混合原料が開発されており、デシルグルコシドと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Pureact 138
構成成分 デシルグルコシドラウロイルラクチレートNa
特徴 マイルドな活性剤ブレンド
原料名 Plantasil Micro
構成成分 ジカプリリルエーテル、デシルグルコシドオレイン酸グリセリル
特徴 シャンプーのコンディショニング効果向上することができるマイクロエマル ジョン

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗6)

∗6 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

デシルグルコシドの配合製品数と配合量の比較調査結果(2011年)

5. 安全性評価

デシルグルコシドの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • タンパク質変性:ほとんどなし
  • 皮膚のアミノ酸および脂質の溶出:少ない

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7a]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 20名の被検者に2%デシルグルコシド(pH6.5)を対象に24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は最小限の皮膚刺激剤であった(A. Mehling,2007)
  • [ヒト試験] 90名の被検者に0.5%デシルグルコシド水溶液を対象に48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激はみられなかった(M. Corazza,2010)
  • [ヒト試験] 103名の被検者に0.5%デシルグルコシドを含む日焼け製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった(AMA Laboratories,2002)
  • [ヒト試験] 107名の被検者に0.75%デシルグルコシドを含む日焼け製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった(Clinical Research Laboratories Inc,2011)
  • [ヒト試験] 103名の被検者に1.8%デシルグルコシドを含むリキッドファンデーションを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった(Product Investigations Inc and Product,2005)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] アトピー性皮膚炎を有する15名の被検者に0.5%デシルグルコシド水溶液を対象に48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激はみられなかった(M. Corazza,2010)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7b]によると、

  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて3%デシルグルコシド水溶液(pH6.5)を処理したところ(HET-CAM法)、この試験物質はわずかな眼刺激が予測された(A. Mehling,2007)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデルを用いて、モデル角膜表面に0.6%デシルグルコシド水溶液(pH7.0)を処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、この試験物質の眼刺激性は予測されなかった(A. Mehling,2007)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.3. タンパク質変性

アルキルグリコシドは、非イオン界面活性剤ではあるものの洗浄剤に応用されており、化粧品における洗浄剤の対象である毛髪や皮膚の最外層はケラチンタンパク質であるため、これらタンパク質に対するアルキルグリコシド類の影響は重要です。

花王によって報告されたタンパク質に対するアルキルグリコシドの影響検証によると、

陰イオン界面活性剤であるラウレス硫酸Naと非イオン界面活性剤であるアルキルグリコシド類のタンパク質に対する変性作用を比較検証した。

水溶性タンパク質であるミオグロビンにラウレス硫酸Na水溶液および各アルキルグリコシド水溶液を添加し、UV吸収量によってタンパク質量を測定したところ、ラウレス硫酸Na添加時ではUV吸収が減少し、タンパク変性が起きていることが確認されたが、アルキルグリコシド水溶液の添加では変化しないことが確認された。

このように報告されており[8a]、アルキルグリコシドはタンパク質変性に対して影響を及ぼさないことが認められています。

この結果は、陰イオン界面活性剤が静電気的および疎水的な相互作用によってタンパク質に結合するのに対して、非イオン界面活性剤は疎水的相互作用および水素結合による結合であるため、結合エネルギーとしてタンパク質を変性させるポテンシャルは、陰イオン界面活性剤のほうが高いためと考えられています[8b]

5.4. 皮膚のアミノ酸および脂質溶出

ラウリル硫酸Naなどに代表されるAS系は、皮膚の角質層において水分要素である天然保湿因子やバリア機能を構築しているコレステロール、また皮脂腺由来のスクワレンなどを多く溶出することが知られており、皮膚のアミノ酸や脂質を溶出する洗浄剤の連用はバリア機能の低下や皮膚の乾燥による落屑などにつながる可能性が高まることから、健常な皮膚構成成分の溶出性の低い洗浄剤を使用することが重要であると考えられています。

1993年に花王によって報告されたデシルグルコシドによる皮膚からのアミノ酸、脂質溶出の影響検証によると、

ヒト前腕部に、陰イオン界面活性剤としてラウリン酸Na(石鹸)およびラウレス硫酸Naを、アルキルグリコシドとしてデシルグルコシドおよびラウリルグルコシドを、比較対照としてを用いた洗浄試験を実施し、各溶液における皮膚のアミノ酸および脂質(スクワレン、コレステロール)溶出量を評価したところ、以下のグラフのように、

陰イオン界面活性剤とアルキルグリコシドのアミノ酸溶出量比較

陰イオン界面活性剤とアルキルグリコシドの脂質溶出量比較

アミノ酸溶出量はラウリン酸Naが、脂質溶出量はラウレス硫酸Naが最も高く、非イオン界面活性剤でありアルキルグリコシドであるデシルグルコシドはどちらも陰イオン界面活性剤よりも溶出量は低い値を示した。

このように報告されており[8c]、アルキルグリコシドは陰イオン界面活性剤と比較して皮膚からのアミノ酸および脂質類の溶出量が低いことが明らかにされています。

また、アルキルグリコシドは皮膚への吸着性も低いことが確認されています[8d]

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「デシルグルコシド」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,656.
  2. ab花王株式会社(2020)「マイドールシリーズ」花王の香粧品・医薬品原料,17-18.
  3. abThe Dow Chemical Company(2013)「EcoSense Surfactants」Product Catalog.
  4. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「洗浄のメカニズム」新化粧品原料ハンドブックⅡ,631-635.
  5. 鈴木 敏幸(2003)「洗浄剤」化粧品事典,567.
  6. 東西田 奈都子・齋藤 明良(2014)「糖系非イオン性界面活性剤アルキルグルコシドの特性と応用」オレオサイエンス(14)(11),473-477. DOI:10.5650/oleoscience.14.473.
  7. abM.M. Fiume, et al(2013)「Safety Assessment of Decyl Glucoside and Other Alkyl Glucosides as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(32)(5_suppl),22S-48S. DOI:10.1177/1091581813497764.
  8. abcd亀谷 潤, 他(1993)「糖系非イオン性界面活性剤アルキルサッカライドの特性とシャンプーへの応用」日本化粧品技術者会誌(27)(3),255-266. DOI:10.5107/sccj.27.255.

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