ラウレス硫酸Naの基本情報・配合目的・安全性

ラウレス硫酸Na

化粧品表示名 ラウレス硫酸Na
医薬部外品表示名 ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
部外品表示簡略名 ラウレス-5硫酸Na、ラウレス-7硫酸Na、ラウレス-8硫酸Na、ラウレス-12硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩
INCI名 Sodium Laureth Sulfate
配合目的 洗浄 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるラウリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルと硫酸のエステルのナトリウム塩であり、アルキルエーテル硫酸エステル塩(Alkyl Ether Sulfate:AES)に分類される陰イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤)です[1]

ラウレス硫酸Na

1.2. 物性・性状

ラウレス硫酸Naに付加しているポリエチレングリコール(酸化エチレン)の付加モル数は定義としては1-4個であり、付加モル数(重合度)によって物性が異なりますが、その物性・性状は、

酸化エチレン
付加モル数
性状 cmc
(mmol/L)
クラフト点
(℃)
1 無色-淡黄色の液体
2 3.0(50℃) -1
3 2.0(25℃) <0
4

このように報告されています[2a][3a][4a][5a][6]

cmcおよびクラフト点についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基と疎水基(親油基)をもち、界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込むものの、疎水基部分は安定しようとする性質があるため、以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

陰イオン界面活性剤の構造図

界面活性剤の濃度変化と界面活性剤の挙動の関係

界面活性剤のごく薄い水溶液では、1個ずつ単分散状態で溶解し、空気と水との界面にはあまり界面活性剤が集まっていないので、空気と水とはほとんど直接に接触していることになり、表面張力はあまり下がらず、水に近い状態ですが、界面活性剤の濃度が増していくにつれて水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に集まり、空気と水とが直接接触する面積を減少させ、それに比例して表面張力も下がっていきます[7a]

表面があるうちは表面に集まりますが、表面には限りがあるので、さらに界面活性剤の濃度が増していくと疎水基の逃げ場がなくなり、水との反発をなるべく減らすために、界面活性剤はお互いの疎水基を互いに向け合いはじめ、親水基を水側に向けて球状のミセル(micelle:会合体)を形成し始めます[7b][8a]

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度を臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することではじめて界面活性剤が有する様々な機能を発揮します(∗1)[8b]

∗1 cmc以上に界面活性剤の濃度を高めていくと、ミセルの数が増加し、次に棒状や板状のミセルとなり、それ以上の高濃度では液晶が形成されます。

次に、クラフト点とは個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)のことをいいます[9]

界面活性剤は、クラフト温度以下の条件では水にほとんど溶けず、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成しませんが、クラフト点以上の温度以上で水への溶解性が急激に高くなり、その上で臨界ミセル濃度(cmc)以上の濃度によりミセルを形成することでその機能を発揮します[10][11]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 洗浄作用
  • 配合目的についての補足

主にこれらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、ハンドソープ製品、洗顔料、洗顔石鹸、マスカラ製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、アウトバストリートメント製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 洗浄作用

洗浄作用に関しては、前提知識として洗浄作用および洗浄のメカニズムについて解説します。

「汚れる」ということは、汚れが固体表面へ付着することであり、汚れを除去するためには汚れの付着エネルギー以上のエネルギーを外部から加える必要があることが知られています[12a]

洗浄作用とは、この付着エネルギーを最小にして、汚れを取り除きやすくして汚れを再付着しにくくすることをいい、具体的な洗浄作用のメカニズムについては以下の洗浄のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

洗浄のメカニズム

まず汚れおよび固体表面が洗浄液でぬれ、次に汚れおよび固体表面に界面活性剤が吸着し、そして汚れがローリングアップ(∗2)、乳化、可溶化によって分散・溶解し、最後に再付着しないようにすすぐことで除去されるといった一連の過程になります[12b][13]

∗2 液体汚れが油滴となって固体表面から離脱する現象のことです。

アニオン界面活性剤の中でもアルキル鎖が炭素数12-14の直鎖構造をもつ界面活性剤の起泡性が優れていることが知られていますが、ラウレス硫酸Naは炭素数12(C12の直鎖構造をもつラウリルアルコールに1-4個のポリエチレングリコールを付加させた上で硫酸エステル塩にした陰イオン性界面活性剤であり、耐硬水性や水への溶解性に優れ、かつ良好な洗浄性と起泡性を示すことから[2b][3b][4b][5b][14a]、主にシャンプー製品、ボディソープ製品、ハンドソープ製品、洗顔料などに汎用されています。

アルキル硫酸エステル塩であるラウリル硫酸Naとの違いは、ラウレス硫酸Naはラウリル硫酸Naにポリエエチレングリコールが付加されたもの(ポリエチレングリコール鎖が加わったもの)であり、ポリエチレングリコール付加モル数が増えるほど、水溶性が向上するとともに硬水中でも起泡性が大きくなり、また皮膚刺激性が低減されるという特徴も加わることが知られています[14b][15]

ラウレス硫酸塩の性質は、以下の表をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

付加モル数 起泡力(c㎥)
濃度:0.1g/L 温度:70℃
洗浄力(白度)
濃度:0.5g/L 温度:40℃
1 150 51
2 215 45
3 240 26

ポリエチレングリコールの付加数が多いほど起泡力が増す一方で洗浄力は低下していくことが明らかにされています[16]

1990年に資生堂によって報告された陰イオン性界面活性剤の人工皮脂に対する洗浄性比較検証によると、

– 洗浄性試験 –

各油脂を混合した人工皮脂にカーボンブラックを加えた汚垢(おこう)を用いて、陰イオン性界面活性剤であるラウリン酸Naラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNaそれぞれ10mM濃度の人工皮脂に対する洗浄力を40℃および2分間の洗浄で評価したところ、以下のグラフのように、

人工皮脂に対する陰イオン性界面活性剤の洗浄性比較

ラウレス硫酸Naは人工皮脂に対してラウリン酸Na(ラウリン酸セッケン)と同等の優れた洗浄力をもつことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており[17]、ラウレス硫酸Naは皮脂に対する洗浄力が認められています。

2.2. 配合目的についての補足

アルキルエーテル硫酸エステル塩は、割合としては多くはありませんが乳化剤や香料などの可溶化剤として用いられることがあります[18a]

3. 混合原料としての配合目的

ラウレス硫酸Naは混合原料が開発されており、ラウレス硫酸Naと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 CERASYNT LP
構成成分 ステアリン酸グリセリルラウレス硫酸Naヘキシレングリコールラウリル硫酸Naグリセリンステアリルアルコール
特徴 O/W型乳化剤
原料名 Lamesoft Care
構成成分 PEG-4ジステアリルエーテル、ラウレス硫酸Na、ジステアリルエーテル、ジカプリリルエーテル
特徴 カチオン性ポリマーとの組み合わせにおいて皮膚および毛髪のコンディショニング効果を付与するとともに毛髪においては切断を防ぎ、ツヤを高めるマイクロサイズの脂質を含有した高性能ワックス分散液

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2007-2008年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラウレス硫酸Naの配合製品数と配合量の比較調査結果(2007-2008年)

5. 安全性評価

ラウレス硫酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度18%以下においてほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性(洗い流さない場合):濃度依存的にほとんどなし-中程度
  • 眼刺激性(洗い流す場合):ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚吸収性:24時間以下の曝露において低い
  • タンパク質変性:低い

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[18b]および資生堂の試験データ[19a]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 196名の被検者に0.5%ラウレス硫酸Naを含むシャンプーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激を示したが、皮膚感作は示さなかった(Hill Top Research,1973)
  • [ヒト試験] 4名の被検者に0.7%ラウレス硫酸Naを含む製剤を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、累積刺激性を評価したところ、この試験製剤は軽度の累積刺激剤である可能性を示した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 25名の被検者に2.5%ラウリル硫酸Na水溶液の24時間閉塞パッチで前処理したのちに14.3%ラウレス硫酸Naを含むバブルバス製剤を48時間閉塞パッチにて5回適用し、10日間の休息後に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去後に皮膚反応を観察したところ、この試験物質は接触性皮膚感作の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 20名の被検者に18%ラウレス硫酸Na水溶液を24時間閉塞パッチ適用したところ、3名の被検者は軽度以下の皮膚刺激を示し、残りの17名の被検者は皮膚反応を示さなかった(Avon,1972)
  • [ヒト試験] 20名の被検者に18%ラウレス硫酸Na水溶液を24時間閉塞パッチ適用したところ、11名の被検者は軽度以下の皮膚刺激を示し、残りの9名の被検者は皮膚反応を示さなかった(Avon,1972)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する29名の患者に代表的な各界面活性剤水溶液それぞれ50mM(0.05mol/L)および100mM(0.1mol/L)を対象に48時間閉塞パッチを適用し、パッチ除去24時間後に皮膚刺激性を0,0.5,1,2,3,4の6段階で評価したところ、以下の表のように、
    界面活性剤 陽性数(29名中) 平均刺激スコア
    100mM 50mM 100mM 50mM
    ラウリル硫酸Na 28 1.66
    ラウレス硫酸Na 16 13 0.76 0.63
    ラウロイルグルタミン酸Na 11 12 0.60 0.63
    ココイルメチルタウリンNa 13 12 0.64 0.62

    ラウリル硫酸Naは刺激反応を起こした患者が多く、また刺激スコアも比較的高かったが、ラウレス硫酸Naは刺激反応人数はラウリル硫酸Naの半分ほどであり、また平均刺激スコアも0.63-0.76(かすかな紅斑)と比較的低かった(資生堂,1989)

このように、試験データをみるかぎり濃度18%以下かつ皮膚につけっぱなしにする製品の場合、皮膚の状態にかかわらず濃度依存的に非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は濃度18%以下において非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性については、試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[18c]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に1.3%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、1日目に眼刺激スコア1.3を示したが、2日目以降は0であり、この試験物質は一過性の最小限の眼刺激剤であった(Cosumer Product Testing Co,1976)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に1.3%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼は30秒すすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激性はすべて0であり、この試験物質は刺激性を示さなかった(Cosumer Product Testing Co,1976)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1.5%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,および3日目にそれぞれ21,9および1.3であり、4日目以降は0であった。この試験物質は刺激性を示さなかった(Avon,1971)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1.75%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,3,4および7日目にそれぞれ33,24,18,15および8であり、この試験物質は中程度の眼刺激剤であった(Avon,1978)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に10%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,3,4および7日目にそれぞれ32,30,21,20および10であり、この試験物質は中程度の眼刺激性を示した(Avon,1975)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に25%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,3,4および7日目にそれぞれ31.2,30.5,29.7,26.3および17.7であり、この試験物質は中程度の眼刺激性を示した(Cosumer Product Testing Co,1977)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に28%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼を30秒すすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性をを評価したところ、眼刺激スコアは1,2および3日目にそれぞれ2,0.7および0であり、この試験物質は一過性の軽度の眼刺激性を示した(Bio-Toxicology Labs,1975)

このように記載試験データをみるかぎり濃度1.3-28.0%の範囲で濃度依存的に非刺激-中程度の眼刺激が報告されていますが、眼をすすいだ場合において濃度28%でも一過性の軽度の眼刺激であり、一般に眼刺激性は洗い流さない場合で濃度依存的に非刺激-中程度の眼刺激を、洗い流す場合で非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.3. 皮膚吸収性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[18d]によると、

  • [動物試験] モルモットの脇腹領域に14Cで標識した3μmolラウレス硫酸Na水溶液0.6mLを適用し、10分間擦った後に部位を水で洗い、非閉塞パッチで24時間覆い、24時間後にラウレス硫酸Naの吸収経路を調べたところ、ほとんどは皮膚洗浄液、パッチ、適用部位に結合していた。皮膚吸収がほとんどみられなかったため、表皮および真皮の吸収率などを調べる試みは行われず、また血液からも識別可能な検出はなかった(D. Prottley and T.F.M. Ferguson,1976)
  • [動物試験] ラットの皮膚に0.2-2.0w/v%ラウレス硫酸Na溶液を塗布し、24時間ごとに2日間にわたって呼気CO2、尿および糞便を収集し、また皮膚の試験部位を切断し、ラウレス硫酸Naの皮膚浸透性および排泄を評価したところ、すすぎ中に92.1 ± 10.4%、皮膚には5.8 ± 0.9%、パッチには1.2 ± 0.2%、2日間の尿中には0.39 ± 0.12μg/c㎡であり、皮膚浸透が1%未満であることを示唆した。この結果は成分のエトキシル化(ポリオキシエチレンの付加)が生物活性を低下させることに起因していると考えられた(J.G. Black et al,1979)

このように記載されており、試験データをみるかぎり24時間以下の曝露で皮膚吸収性は低いと報告されているため、一般に塗布24時間以下において皮膚吸収性は低いと考えられます。

5.4. タンパク質変性

界面活性剤が皮膚刺激性を発現するためには、角層バリアを障害する機能として角質タンパク変性能を有する必要があると考えられています。

1989年に資生堂によって報告された代表的な陰イオン界面活性剤のタンパク変性への影響検証によると、

最初に、タンパク質への収着性を検討するために代表的な陰イオン性界面活性剤としてラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na(酸化酸化エチレン付加数3)ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNa各20mLにケラチンパウダーおよびハイドパウダー(∗3)をそれぞれ0.4gおよび0.2g添加し、各界面活性剤のクラフト点以上である40℃にて5時間培養し、タンパク質の収着量(∗4)を測定したところ、以下のグラフのように、

∗3 ケラチンパウダーとは、毛髪に類似したタンパク質配合パウダーであり、ハイドパウダーは頭皮に類似したタンパク質配合パウダーです。

∗4 収着とは固体が気体や溶液と接触しているとき、吸着質が固体表面に吸着すると同時にさらに固体の内部に拡散吸収される現象のことをいいます。

ケラチンパウダーおよびハイドパウダーに対する陰イオン性界面活性剤のタンパク質収着性比較

ラウレス硫酸Naは、ケラチンパウダーおよびハイドパウダーの両方に対して収着を示し、とくにハイドパウダーに対して強い収着がみられた。

次に、同様の陰イオン性界面活性剤を各濃度10mMに調整しタンパク変成率を資生堂が開発した簡易で精度の高い水系GPCを用いて測定したところ、以下のグラフのように、

タンパク質変性に対する代表的な陰イオン性界面活性剤の影響

ラウレス硫酸Naは、タンパク変性作用の影響が低いことがわかった。

アルキル硫酸エステル塩(AS)に酸化エチレンを付加したアルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)ならびにアミド基を導入したアシルメチルタウリン塩(AMT)が低い変性率を示したことから、酸化エチレンの付加あるいはアミド基の導入がタンパク質との相互作用を弱める働きがあることが示唆された。

このように報告されており[19b]、ラウレス硫酸Naは毛髪や頭皮への収着を示すことが認められている一方でタンパク質変性への影響は低いことが認められています。

ただし、アルキルエーテル硫酸エステル塩と両性界面活性剤を特定の配合比率によって併用することによってアルキルエーテル硫酸エステル塩のタンパク質への吸着量が最小となり、毛髪および頭皮への刺激が緩和されることが明らかになっていることから[20]、洗浄系製品においてラウレス硫酸Naに両性界面活性剤が併用されている場合は、タンパク変性作用の影響を抑えた処方が用いられている可能性が考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ラウレス硫酸Na」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1049.
  2. ab花王株式会社(2020)「エマールシリーズ」花王の香粧品・医薬品原料,1-2.
  3. abミヨシ油脂株式会社(2021)「プリストール&スパミン」製品カタログ,7-8.
  4. ab三洋化成工業株式会社(2019)「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩・アルキル硫酸塩」香粧品用商品リスト,5-6.
  5. ab第一工業製薬株式会社(-)「アルキル硫酸塩」香粧品用製品総合カタログ,5-6.
  6. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤の基本的物性」油脂化学便覧 改訂3版,476-493.
  7. ab藤本 武彦(2007)「界面活性剤の基本的な性質と作用」界面活性剤入門,14-26.
  8. ab鈴木 敏幸(2003)「臨界ミセル濃度」化粧品事典,846.
  9. 鈴木 敏幸(2003)「クラフト点」化粧品事典,427-428.
  10. 藤本 武彦(2007)「界面活性剤の親水基の種類と性質の関係」界面活性剤入門,147-152.
  11. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,30-33.
  12. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「洗浄のメカニズム」新化粧品原料ハンドブックⅡ,631-635.
  13. 鈴木 敏幸(2003)「洗浄剤」化粧品事典,567.
  14. ab藤本 武彦(2007)「高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩」界面活性剤入門,101-102.
  15. 野々村 美宗(2015)「アニオン界面活性剤」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,43-48.
  16. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「アルキルエーテル硫酸エステル塩」新化粧品原料ハンドブックⅡ,191-193.
  17. 宮澤 清, 他(1990)「頭皮・頭髪用洗浄剤(シャンプー) としてのN-アシル-N-メチルタウリン(AMT)の開発と工業化」油化学(39)(11),925-930. DOI:10.5650/jos1956.39.11_925.
  18. abcdR.L. Elder(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Laureth Sulfate and Ammonium Laureth Sulfate」Journal of the American College of Toxicology(2)(5),1-34. DOI:10.3109/10915818309140713.
  19. ab宮澤 清, 他(1989)「頭皮・頭髪用洗浄剤としてのアニオン界面活性剤の研究」油化学(38)(4),297-305. DOI:10.5650/jos1956.38.297.
  20. 永井 邦夫(2005)「低刺激性シャンプー基剤」三洋化成ニュース(430),1-4.

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