ラウリル硫酸アンモニウムの基本情報・配合目的・安全性

ラウリル硫酸アンモニウム

化粧品表示名 ラウリル硫酸アンモニウム
医薬部外品表示名 ラウリル硫酸アンモニウム
部外品表示簡略名 ラウリル硫酸塩
INCI名 Ammonium Lauryl Sulfate
配合目的 洗浄

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるラウリルアルコールの硫酸エステルのアンモニウム塩であり、アルキル硫酸エステル塩(Alkyl Sulfate:AS)に分類される陰イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤)です[1]

ラウリル硫酸アンモニウム

1.2. 物性・性状

ラウリル硫酸アンモニウムの物性・性状は、

状態 淡黄色の液体
cmc(mg/L) 136
クラフト点(℃)

このように報告されています[2a][3a][4a]

cmcおよびクラフト点についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基と疎水基(親油基)をもち、界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込むものの、疎水基部分は安定しようとする性質があるため、以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

陰イオン界面活性剤の構造図

界面活性剤の濃度変化と界面活性剤の挙動の関係

界面活性剤のごく薄い水溶液では、1個ずつ単分散状態で溶解し、空気と水との界面にはあまり界面活性剤が集まっていないので、空気と水とはほとんど直接に接触していることになり、表面張力はあまり下がらず、水に近い状態ですが、界面活性剤の濃度が増していくにつれて水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に集まり、空気と水とが直接接触する面積を減少させ、それに比例して表面張力も下がっていきます[5a]

表面があるうちは表面に集まりますが、表面には限りがあるので、さらに界面活性剤の濃度が増していくと疎水基の逃げ場がなくなり、水との反発をなるべく減らすために、界面活性剤はお互いの疎水基を互いに向け合いはじめ、親水基を水側に向けて球状のミセル(micelle:会合体)を形成し始めます[5b][6a]

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度を臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することではじめて界面活性剤が有する様々な機能を発揮します(∗1)[6b]

∗1 cmc以上に界面活性剤の濃度を高めていくと、ミセルの数が増加し、次に棒状や板状のミセルとなり、それ以上の高濃度では液晶が形成されます。

次に、クラフト点とは個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)のことをいいます[7]

界面活性剤は、クラフト温度以下の条件では水にほとんど溶けず、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成しませんが、クラフト点以上の温度以上で水への溶解性が急激に高くなり、その上で臨界ミセル濃度(cmc)以上の濃度によりミセルを形成することでその機能を発揮します[8][9]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 洗浄作用

主にこれらの目的で、ボディソープ製品、シャンプー製品、洗顔料、クレンジング製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 洗浄作用

洗浄作用に関しては、前提知識として洗浄作用および洗浄のメカニズムについて解説します。

「汚れる」ということは、汚れが固体表面へ付着することであり、汚れを除去するためには汚れの付着エネルギー以上のエネルギーを外部から加える必要があることが知られています[10a]

洗浄作用とは、この付着エネルギーを最小にして、汚れを取り除きやすくして汚れを再付着しにくくすることをいい、具体的な洗浄作用のメカニズムについては以下の洗浄のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

洗浄のメカニズム

まず汚れおよび固体表面が洗浄液でぬれ、次に汚れおよび固体表面に界面活性剤が吸着し、そして汚れがローリングアップ(∗2)、乳化、可溶化によって分散・溶解し、最後に再付着しないようにすすぐことで除去されるといった一連の過程になります[10b][11]

∗2 液体汚れが油滴となって固体表面から離脱する現象のことです。

アニオン界面活性剤は優れた起泡性を有しており、中でもアルキル鎖が炭素数12-14の直鎖構造をもつ界面活性剤の起泡性が優れていることが知られていますが[12]、ラウリル硫酸アンモニウムは炭素数12(C12の直鎖構造をもつ陰イオン性界面活性剤であり、低pHに適し、優れた洗浄力と泡立ちを示し、洗髪後に柔らかくしっとりした感触を付与することから[2b][3b][4b]、主にボディソープ製品、シャンプー製品、洗顔料、クレンジング製品などの洗浄系製品に使用されています。

1953年にスモカ歯磨本舗によって報告されたアルキル硫酸エステル塩の起泡性の検証によると、

– 泡立ち性試験 –

アルキル硫酸エステル塩類であるラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸Naおよびセチル硫酸Naの0.3%,0.15%および0.075%水溶液を調製し、30℃で2分後および5分後の泡数および泡量を測定し、泡消率を算出したところ、以下の表のように、

アルキル硫酸塩 濃度
(%)
泡数 泡量 泡消率
(%)
2分後 5分後 2分後 5分後
ラウリル硫酸アンモニウム 0.30 20.7 10.1 970 960 51.7
0.15 16.7 8.7 417 409 48.8
0.075 10.8 6.0 101 96 46.8
ラウリル硫酸Na 0.30 6.8 1.6 907 901 76.5
0.24 7.4 2.2 857 852 70.5
0.15 8.4 2.7 758 753 68.2
0.075 8.0 2.3 408 402 68.7
セチル硫酸Na 0.30 24.8 16.2 265 256 36.7
0.15 19.8 13.4 180 173 34.7
0.075 16.3 11.5 116 112 32.4

ラウリル硫酸アンモニウムは、ラウリル硫酸Naと比較して泡数が多く、2-5分間の泡持続率が高いことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており[13]、ラウリル硫酸アンモニウムの泡の性質は泡量が多く、2-5分間の泡持続性が高いことが明らかにされています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1983年および2002年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラウリル硫酸アンモニウムの配合製品数と配合量の比較調査結果(1983年および2002年)

4. 安全性評価

ラウリル硫酸アンモニウムの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度1%未満においてほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性(洗い流し製品の場合):ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚吸収性:濃度2.5%以下の曝露において極めて低い

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14a]によると、

  • [ヒト試験] 53名の被検者に0.11%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、誘導期間において3名の被検者にわずかな紅斑がみられたが、皮膚感作の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 52名の被検者に0.15%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、誘導期間において7名の被検者にわずかな紅斑、2名の被検者に中程度の紅斑がみられたが、皮膚感作の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 209名の被検者に1.68%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、誘導期間において16名の被検者に最小限-軽度の刺激性がみられ、また56名の被検者に2回以上のパッチ適用で疲労剤であったが、皮膚感作の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 209名の被検者に0.42%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 52名の被検者に0.98%ラウリル硫酸アンモニウムを含む製剤水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(University if Carifornia at Los Angeles,1979)

このように、試験データをみるかぎり皮膚につけっぱなしにする製品の場合、濃度2%以下においてわずか-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚につけっぱなしにする製品においては濃度1%を超えないように注意喚起されており、濃度1%未満において皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

しかし、ラウリル硫酸アンモニウムはつけっぱなしにする製品としての使用がほとんどなく、一般に洗い流し製品(洗浄系製品)に使用されており、洗い流し製品においては試験データはみあたらないものの、断続的で短時間の使用に続いて皮膚の表面から完全にすすぐように設計された製品では安全に使用できると考えられています[14b]

皮膚感作性については、試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14c]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に27.4%ラウリル硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、1日目において眼をすすいだ場合の眼刺激スコアは30.7、眼をすすがなかった場合の眼刺激スコアは36.0であった。この試験物質は中程度の眼刺激剤であった(Product Safety Labs,1980)
  • [動物試験] 10匹のウサギの片眼に15%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、眼をすすいだ群の1日目および7日目の眼刺激スコアは15および1であり、一過性の軽度の眼刺激であった。眼をすすがなかった群の1日目および7日目の眼刺激スコアは34および6であり、一過性の中程度の眼刺激であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に11.2%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、眼をすすがなかった群に48時間までわずかな角膜刺激がみられ、眼をすすいだ群では24時間までわずかな角膜刺激がみられた(Applied Biological Sciences Laboratory,1979)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に11.2%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、眼をすすがなかった群に48時間までわずかな角膜刺激がみられ、眼をすすいだ群では刺激は起こらなかった(Applied Biological Sciences Laboratory,1979)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に9.8%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、1日目において眼をすすがなかった群にわずかな角膜刺激がみられたが、眼をすすいだ群では刺激の兆候はみられなかった(Applied Biological Sciences Laboratory,1979)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に2%ラウリル硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、1日目に軽度の眼刺激を示したが、7日目では実質的に非刺激であった(H.P. Ciuchta,1978)
  • [動物試験] 3匹のウサギ2群の両眼に1.25%または2.5%ラウリル硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、片眼はすすがず、残りの片眼は2秒後にすすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、眼をすすがなかった場合は最小限-中程度の眼刺激がみられ、眼をすすいだ場合はすべての眼で刺激は減少した(J.J. Serrano et al,1977)

このように試験データをみるかぎり眼をすすがなかった場合においてわずか-中程度の眼刺激が、眼をすすいだ場合において非刺激-軽度の眼刺激が報告されていますが、ラウリル硫酸アンモニウムは主に洗い流す製品に使用されていることから、一般に眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性に留まると考えられます。

4.3. 皮膚吸収性

残留農薬研究所の安全性データ[15]によると、

  • [動物試験] 剃毛したラットの背部に14C標識のC1225mMアルキル硫酸塩溶液0.5mLを塗布し、15分間接触させた後に湯ですすぎ、非閉塞型保護貼布環境下で24時間目までの排泄量と体内残存量を測定して、それらの値から皮膚吸収量を推定したところ、皮膚吸収量は0.26μg/c㎡と見積もられた(D. Hpwes,1975)
  • [動物試験] ラット背部皮膚に14C標識の1%C12アルキル硫酸塩溶液を10分間接触させ、すすいだ後に保護貼布を行い、48時間までに排泄された尿中の排泄量から皮膚透過量を推定したところ、皮膚透過量は0.26μg/c㎡と推定された。濃度、接触時間、適用回数を変えると、濃度と適用回数に比例して透過量が増加したが、接触時間の長さと透過量の間には直接的な関連性は認められなかった(J.G. Black and D. Howes,1979)

このように記載されており、試験データをみるかぎりアルキル硫酸塩の皮膚からの吸収性は極めて低いと報告されているため、一般に皮膚吸収性は極めて低いと考えられます。

また、同じアルキル硫酸塩であるラウリル硫酸Naの試験データ(ヒト試験データ含む)においても同様の皮膚吸収性の傾向を示すことも、この皮膚吸収性の結果を裏付けていると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ラウリル硫酸アンモニウム」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1029.
  2. ab花王株式会社(2020)「エマールシリーズ」花王の香粧品・医薬品原料,1-2.
  3. abMiwon Commercial Co., Ltd.(2015)「MICOKIN」Personal Care Ingredients,1.
  4. abStepan Company(2019)「STEPANOL AM」Product Bulletin.
  5. ab藤本 武彦(2007)「界面活性剤の基本的な性質と作用」界面活性剤入門,14-26.
  6. ab鈴木 敏幸(2003)「臨界ミセル濃度」化粧品事典,846.
  7. 鈴木 敏幸(2003)「クラフト点」化粧品事典,427-428.
  8. 藤本 武彦(2007)「界面活性剤の親水基の種類と性質の関係」界面活性剤入門,147-152.
  9. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 -基礎から応用まで,30-33.
  10. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「洗浄のメカニズム」新化粧品原料ハンドブックⅡ,631-635.
  11. 鈴木 敏幸(2003)「洗浄剤」化粧品事典,567.
  12. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「アニオン界面活性剤の性質」新化粧品原料ハンドブックⅠ,167-172.
  13. 中島 英郎(1953)「合成洗剤の起泡性について(第1~2報)(第1報)アルキル硫酸エステル塩の起泡性及びラウリル硫酸ナトリウムの起泡性に及ぼすラウリルアルコール,芒硝,保護膠質性物質の影響」工業化学雑誌(56)(8),611-613. DOI:10.1246/nikkashi1898.56.611.
  14. abcR.L. Elder(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Lauryl Sulfate and Ammonium Lauryl Sulfate」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),127-181. DOI:10.3109/10915818309142005.
  15. 青山 博昭(2010)「アルキル硫酸エステル塩の安全性について」日本家政学会誌(61)(5),327-329. DOI:10.11428/jhej.61.327.

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