ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6とは…成分効果と毒性を解説

乳化 分散 効果促進成分
ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6
[化粧品成分表示名称]
・ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6

[医薬部外品表示名称]
・縮合リシノレイン酸ポリグリセリル

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるリシノレイン酸(∗1)の重合体(∗2)を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗3)の一種であり、8個の水酸基をもつポリグリセリン-6(∗4)を親水基としたポリエステル(∗5)であり、多価アルコールエステル型のポリグリセリン脂肪酸エステルに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です。

∗1 リシノレイン酸は一般的にはリシノール酸と呼ばれており、主にヒマシ油から得られる炭素数18および二重結合1つをもつ不飽和脂肪酸です。

∗2 重合体とは、複数の分子結合がまとまって機能する多量体であり、ポリリシノレイン酸の「ポリポリ(poly)」はギリシャ語で「複数・多数」を意味することから、ポリリシノレイン酸という名称はリシノレイン酸がいくつかまとまった複合物であることを意味します。

∗3 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。

∗4 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ポリグリセリル-6とは6個のグリセリンがまとまって6量体(平均重合度6)として機能する重合体であり、ギリシャ語で「6」を「ヘキサ(hexa)」ということから、ヘキサグリセリンとも呼ばれます。

∗5 ギリシャ語で「1」は「モノ(mono)」を意味することから、分子内に1基のエステル結合をもつエステルをモノエステルといい、同様に「2」は「ジ(di)」を意味することからジエステル、「3」は「トリ(tri)」を意味することからトリエステルといい、同様に「ポリ(poly)」は「複数・多数」を意味することからポリエステルといいます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、スキンケア化粧品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献1:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献1:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献2:2015)

ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
3.3 W/O型乳化 わずかに分散

このように報告されており(文献6:-)、W/O型乳化剤(親油性界面活性剤)として、主にメイクアップ化粧品、乳化系スキンケア製品、日焼け止め製品などに使用されています。

一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品用乳化剤として汎用されていることから、安全性の高さが認められており、疎水基である脂肪酸の種類や親水基であるグリセリンの重合度を変えることで様々なHLBのものが利用できることから、化粧品用乳化剤としても汎用されています。

分散

分散に関しては、0.1%濃度以上の低濃度領域から極性油において非常に優れた個体粒子(紫外線散乱剤や顔料など)の分散性を示すことが報告されており(文献3:1997)、主にメイクアップ化粧品や日焼け止め製品に用いられています。

ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6が極性油にのみ分散性を発揮するメカニズムは、親油基であるポリリシノレイン酸が水酸基やエステル結合をもっていることで、親和性の高い極性油では十分に広げることができ、粒子同士の凝集を抑えることができることにあります(文献3:1997)

O/W型エマルション中での植物エキスの抗酸化効果促進作用

O/W型エマルション中での植物エキスの抗酸化効果促進作用に関しては、まず前提知識として抗酸化活性を有する植物エキスのO/W型エマルション中での挙動について解説します。

抗酸化効果を有する植物エキスの多くは、O/W型エマルション系で抗酸化剤として配合した場合、植物エキス自体の高い親水性のために、酸化に対して最も活性な水/油界面に配向することなく、水相(∗6)に留まってしまい、本来の抗酸化活性を示さないと予想されていることが報告されています(文献4:1994)

∗6 水相とは、エマルションを構成する水と油のように互いに溶解しない2液相のうち、水あるいは水溶性の成分が溶解した水溶液の相のことをいいます。

1998年に日本サーファクタント工業および丸善製薬によって報告されたO/W型エマルション中で有効な抗酸化剤検証によると、抗酸化効果をもつ植物エキスを含むO/W型エマルションに親油性ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することで、植物エキスの油への分配率は飛躍的に向上し、一例として20%から82%となることが明らかにされています(文献5:1998)

この検証において、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6添加による植物エキスの油への分配率向上も確認されているため(文献5:1998)、O/W型エマルションにポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6と抗酸化能を有する植物エキスが併用されている場合は、植物エキスの抗酸化効果促進作用である可能性が考えられます。

この分配率向上の発現メカニズムについては、明確な知見は明らかになっていませんが、親油性ポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合した分厚い分子構造をもち、抗酸化剤の親油基との親油基同士の相互作用と、親水基同士の相互作用によりなんらかの複合体を形成することで、実質的に抗酸化剤の界面活性が向上し、結果的に水/油界面に配向しやすくなっているものと考えられています(文献5:1998)

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ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6の安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激性および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  2. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  3. 中村 順一, 他(1997)「粉体用分散剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル」日本化粧品技術者会誌(31)(3),297-303.
  4. E. N. Frankel, et al(1994)「Interfacial Phenomena in the Evaluation of Antioxidants: Bulk Oils vs Emulsions」Journal of Agricultural and Food Chemistry(42)(5),1054-1059.
  5. 橋本 悟, 他(1998)「抗酸化力を有する植物抽出物のO/Wエマルジョン中での抗酸化能に与えるポリグリセリン脂肪酸エステルの効果」日本化粧品技術者会誌(32)(2),178-185.
  6. 坂本薬品工業株式会社(-)「SYグリスター CRS-75」技術資料.

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