PEG-60水添ヒマシ油とは…成分効果と毒性を解説

乳化 可溶化
PEG-60水添ヒマシ油
[化粧品成分表示名称]
・PEG-60水添ヒマシ油

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油

化学構造的に水添ヒマシ油から得られる脂肪酸およびトリグリセリドに酸化エチレン(約60モル)を付加重合して得られるエーテルおよびエステル混合物であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です。

一般的に化粧品に使用されているポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗1)
PEG-5水添ヒマシ油 5 親油性

親水性

PEG-10水添ヒマシ油 10
PEG-20水添ヒマシ油 20
PEG-30水添ヒマシ油 30
PEG-40水添ヒマシ油 40
PEG-50水添ヒマシ油 50
PEG-60水添ヒマシ油 60
PEG-80水添ヒマシ油 80
PEG-100水添ヒマシ油 100

∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が配合されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディケア製品、シート&マスク製品、クレンジング製品、ヘアケア製品、ヘアスタイリング製品などに汎用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献2:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献2:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献3:2015)

PEG-60水添ヒマシ油の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
14.0 , 15.0 O/W型乳化 透明溶液

このように報告されており(文献4:-;文献5:-;文献6:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主にスキンケア化粧品、ボディケア製品、シート&マスク製品、クレンジング製品などに使用されています。

リポソームの乳化安定

リポソームの乳化安定に関しては、まず前提知識として細胞膜の構造およびリポソーム技術について解説します。

細胞膜とは、細胞の内外を隔てる生体膜であり、以下の図をみてもらうとわかるように、

細胞膜の構造

親水性のリン酸基(頭部)と疎水性の脂肪酸鎖(テール部分)をもつリン脂質が二層に連なった脂質二重層で構成されており、ほぼ全ての生物で細胞膜の基本構造として存在しています。

リン脂質のような両親媒性分子は、水溶液中に存在すると親水性のリン酸基は水溶液側に向かって動くため外側に位置し、また疎水性の脂肪酸鎖は水溶液から自ら離れて内側に向くように自然に自己集合して、以下の図のように、

リポソームの構造

脂質二分子膜を形成し、さらにリポソームと呼ばれる閉じた球状の閉鎖小胞を形成します。

このリポソーム形成現象は、1960年代にBanghamによって見いだされ(文献8:1965)、医療分野においては、そのままでは皮膚に浸透しない成分を脂質二重膜の親水性部分および/または脂肪酸鎖部分に充填・内包することで、安定性を保持したまま皮膚内へ浸透させるDDS(Drug Derivery System:ドラッグ輸送技術)とよばれる医療技術に応用されており、現在では化粧品においてもその技術が応用されています(文献9:2005;文献10:2011)

ただし、リポソームの形成により皮膚に対して内包成分に薬効が認められる場合は、医薬品または医薬部外品として扱われることから(文献11:1990)、化粧品においては化粧品としての効果にとどまると考えられます。

リポソームの経時安定性・乳化安定性を高める目的でPEG-60水添ヒマシ油が使用される場合は、一例として、

原料名 NIKKOL アクアソーム VE
内包成分 酢酸トコフェロール
リポソーム成分 水添レシチンBGPEG-60水添ヒマシ油
特徴・主な用途 ビタミンEの皮膚への浸透を促進し効果を高めるビタミンE含有リポソーム
原料名 NIKKOL アクアソーム VA
内包成分 パルミチン酸レチノール
リポソーム成分 水添レシチンBGピーナッツ油トコフェロールPEG-60水添ヒマシ油
特徴・主な用途 ビタミンAの皮膚への浸透を促進し効果を高めるビタミンA含有リポソーム
原料名 NIKKOL アクアソーム AE
内包成分 酢酸トコフェロールパルミチン酸レチノール
リポソーム成分 水添レシチンBGピーナッツ油トコフェロールPEG-60水添ヒマシ油
特徴・主な用途 ビタミンA、Eの皮膚への浸透を促進し効果を高めるビタミンA、E含有リポソーム
原料名 NIKKOL アクアソーム BH
内包成分 BG
リポソーム成分 水添レシチンPEG-60水添ヒマシ油
特徴・主な用途 皮膚への水分補給、保湿効果を高める多価アルコール含有リポソーム

このような処方が知られています。

可溶化

可溶化に関しては、香料や油溶性ビタミン(∗3)を透明に溶かし込む可溶化剤として使用されています(文献4:-;文献5:-;文献7:1979)

∗3 代表的な油溶性ビタミンとしては、ビタミンA(レチノール)、ビタミンC(アスコルビン酸)およびビタミンE(トコフェロール)の各誘導体があります。ビタミンCについてはビタミンC自体は水溶性ですが、誘導体としては油溶性のものがあります。

一般に、酸化エチレンのモル数の多い非イオン界面活性剤は極性の高い香料を可溶化しやすく、一方で酸化エチレンのモル数の少ない非イオン界面活性剤は極性の低い香料を可溶化しやすいことが明らかにされていることから(文献7:1979)、可溶化する香料または油溶性ビタミンなどに最適なポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が配合されます。

混合乳化剤としてのPEG-60水添ヒマシ油

PEG-60水添ヒマシ油は、他の原料と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、PEG-60水添ヒマシ油と以下の成分が併用されている場合は、混合系乳化剤として配合されている可能性が考えられます。

原料名 EMALEX ML-158
構成成分 トリイソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油セテス-20
特徴・主な用途 マイクロエマルション用の乳化剤混合物であり、主に化粧水、ヘアケア製品に配合
原料名 NIKKOL ニコファイン UV
紫外線吸収剤 メトキシケイヒ酸エチルヘキシルジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン
エマルション成分 PEG-60水添ヒマシ油イソステアリン酸ソルビタンDPGBGトコフェロールクエン酸クエン酸NaBHT
特徴・主な用途 難溶性紫外線吸収剤を安定配合したナノエマルションベース

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

PEG-60水添ヒマシ油の配合製品数と配合量の調査結果(2012年)

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PEG-60水添ヒマシ油の安全性(刺激性・アレルギー)について

PEG-60水添ヒマシ油の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1970年代からの使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1997)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に3%PEG-60水添ヒマシ油を含む製剤を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、総合皮膚累積刺激スコアを0-756のスケールで評価したところ、総合皮膚累積刺激スコアは22であり、この試験物質を含む製剤は実質的に非刺激であると結論付けられた(Hill Top Research,1976)
  • [ヒト試験] 102人の被検者に3%PEG-60水添ヒマシ油を含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間においていずれの被検者においても皮膚刺激反応は観察されず、また1人の被検者を除いて皮膚感作反応も観察されなかった。1人の被検者はチャレンジ期間において偽陽性反応を示したため、再チャレンジパッチを適用したところ、陰性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1997)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に3%PEG-60水添ヒマシ油を含む製剤を点眼し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-110のスケールで評価したところ、PIIは2であり、2匹に最小限の眼刺激が観察されたが、すべての刺激は48時間までに消失した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

PEG-60水添ヒマシ油は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1997)「Final Report on the Safety Assessment of Peg-30,-33,-35,-36, ANd-40 Castor Oil and Peg-30 and-40 Hydrogenated Castor Oil」International Journal of Toxicology(16)(3),269-306.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  3. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  4. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX HC-60」技術資料.
  5. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL HCO-60」技術資料.
  6. 日油株式会社(-)「ユニオックスHC-60」技術資料.
  7. 田川 正人, 他(1979)「非イオン界面活性剤によるリモネンの可溶化に及ぼすエタノールの影響」日本化粧品技術者会誌(13)(1),47-51.
  8. A.D.Bangham, et al(1965)「Diffusion of univalent ions across the lamellae of swollen phospholipids」Journal of Molecular Biology(13)(1),238-252.
  9. 内藤 昇, 他(2005)「化粧品とリポソーム」リポソーム応用の新展開,644-650.
  10. 紺野 義一(2011)「リン脂質の化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(45)(2),83-91.
  11. 田村 健夫, 他(1990)「リポソーム」香粧品科学 理論と実際 第4版,281-283.

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