PEG-3ジメチコンとは…成分効果と毒性を解説

乳化
PEG-3ジメチコン
[化粧品成分表示名称]
・PEG-3ジメチコン

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体

化学構造的にシリコーンの一種であるジメチコンの側鎖に存在するメチル基の一部を親水性である酸化エチレン(約3モル)に置換して得られる重合体(∗1)であり、ポリエーテル変性シリコーンのシリコーン直鎖型ポリエーテル変性シリコーンに分類されるシリコーン系界面活性剤です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、一般的に高分子化合物です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、日焼け止め製品、スキンケア化粧品などに使用されています。

シリコーン油の乳化

シリコーン油の乳化に関しては、まず前提知識としてシリコーン油(シリコーンオイル)、乳化およびエマルションについて解説します。

シリコーン油とは、ケイ素(Si)と酸素(O)が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格として構成された合成高分子化合物の総称であり、代表的なシリコーンかつPEG-3ジメチコンの主成分でもあるジメチコンは、直鎖状に伸びた Si-O-Si(シロキサン)主鎖に、側鎖として各ケイ素原子に2つのメチル基をもつ高分子化合物です。

シリコーン油は、炭化水素と比較して分子容積が大きく、主鎖の屈曲・回転が容易に起こり、化学反応性の低いメチル基で覆われていることから、安定性および柔軟性が高く、分子間力や表面張力が低いなどの特徴があります(文献2:2012)

このような特徴から、肌表面への拡がり、撥水性(∗2)の付与、低表面張力などに起因するすべり性およびベタつきの防止などの効果が明らかにされており、1950年代から化粧品分野で汎用されています(文献2:2012)

∗2 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、シリコーン油は乳化が困難なオイルであり、感触改良を目的に少量添加する場合はそれほど問題にならないものの、主成分として使用するためには安定な乳化が必要となり、安定に乳化させるためには一般的にポリエーテル変性シリコーンが用いられます(文献2:2012)

次に、乳化とは1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

PEG-3ジメチコンの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
4.5 W/O型乳化 わずかに分散

このように報告されており(文献5:-)、シリコーンを乳化し、シリコーン特有のベタつきの少ないさっぱり感を付与するシリコーンW/O型乳化剤(親油性乳化剤)として、主にファンデーション、化粧下地、チーク、日焼け止め製品、乳化系スキンケア化粧品などに使用されています(文献6:2006)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

PEG-3ジメチコンの配合製品数と配合量の調査結果(2014年)

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PEG-3ジメチコンの安全性(刺激性・アレルギー)について

PEG-3ジメチコンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1990年代からの使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 11人の被検者に5%PEG-3ジメチコンを含むリップメークアップベースを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応は観察されなかった(Personal Care Products Council,2014)
  • [ヒト試験] 51人の被検者に3%PEG-3ジメチコンを含むメークアップベース0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も有害な皮膚反応は観察されなかった(Essex Testing Clinic Inc,2003)
  • [ヒト試験] 102人の被検者に1%PEG-3ジメチコンを含むフェイスローション0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、21日間の標準累積刺激スコアは0であり、いずれの被検者も皮膚感作反応の兆候はみられなかった(Clinical Research Services Inc,2008)
  • [ヒト試験] 119人の被検者に1%PEG-3ジメチコンを含むフェイスローションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、21日間の標準累積刺激スコアは132であり、陰性対照パッチおよび陽性対照パッチの標準累積刺激スコアはそれぞれ294および3,861であった。いずれの被検者も皮膚感作反応の兆候はみられなかった(RTCS Inc,2008)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

PEG-3ジメチコンは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, Alkyl-Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, and Related Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 近藤 秀俊(2012)「パーソナルケア製品におけるシリコーンの利用」化学と教育(60)(7),318-319.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 信越化学工業株式会社(-)「KF-6015」技術資料.
  6. 日光ケミカルズ(2006)「ポリエーテル変性シリコーン」新化粧品原料ハンドブックⅠ,249-251.

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