PEG-12ジメチコンとは…成分効果と毒性を解説

乳化 刺激緩和
PEG-12ジメチコン
[化粧品成分表示名称]
・PEG-12ジメチコン

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体

化学構造的にシリコーンの一種であるジメチコンの側鎖に存在するメチル基の一部を親水性である酸化エチレン(約12モル)に置換して得られる重合体(∗1)であり、ポリエーテル変性シリコーンのシリコーン直鎖型ポリエーテル変性シリコーンに分類されるシリコーン系界面活性剤です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、一般的に高分子化合物です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、シート&マスク製品、ボディ&ハンドケア製品、シャンプー製品、ボディソープ製品、アウトバストリートメント製品、ヘアスタイリング製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています。

シリコーン油の乳化

シリコーン油の乳化に関しては、まず前提知識としてシリコーン油(シリコーンオイル)、乳化およびエマルションについて解説します。

シリコーン油とは、ケイ素(Si)と酸素(O)が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格として構成された合成高分子化合物の総称であり、代表的なシリコーンかつPEG-12ジメチコンの主成分でもあるジメチコンは、直鎖状に伸びた Si-O-Si(シロキサン)主鎖に、側鎖として各ケイ素原子に2つのメチル基をもつ高分子化合物です。

シリコーン油は、炭化水素と比較して分子容積が大きく、主鎖の屈曲・回転が容易に起こり、化学反応性の低いメチル基で覆われていることから、安定性および柔軟性が高く、分子間力や表面張力が低いなどの特徴があります(文献2:2012)

このような特徴から、肌表面への拡がり、撥水性(∗2)の付与、低表面張力などに起因するすべり性およびベタつきの防止などの効果が明らかにされており、1950年代から化粧品分野で汎用されています(文献2:2012)

∗2 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、シリコーン油は乳化が困難なオイルであり、感触改良を目的に少量添加する場合はそれほど問題にならないものの、主成分として使用するためには安定な乳化が必要となり、安定に乳化させるためには一般的にポリエーテル変性シリコーンが用いられます(文献2:2012)

次に、乳化とは1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

PEG-12ジメチコンの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
5.0 , 8.0 , 13.0 W/O型乳化 , O/W型乳化 わずかに分散 , 撹拌により分散 , 透明溶液

このように報告されており(文献5:-;文献6:-;文献7:-)、シリコーンを乳化し、シリコーン特有のベタつきの少ないさっぱり感を付与するシリコーンW/O型乳化剤(親油性界面活性剤)またはシリコーンO/W型乳化剤(親水性乳化剤)として、主にファンデーション、口紅、乳化系スキンケア化粧品、日焼け止め製品、ボディケア製品、ヘアスタイリング剤、アウトバスヘアケア製品、ネイル製品などに使用されています(文献8:2006)

ポリエーテル変性シリコーンは、主鎖であるシロキサン骨格の長さと酸化エチレンの付加モル数を変えることにより、そのHLBを自由に設計できることから、同じPEG-12ジメチコンでも親油性や親水性など異なる乳化機能を有したものがあります(文献2:2012)

陰イオン界面活性剤の刺激緩和作用

陰イオン界面活性剤の刺激緩和作用に関しては、ラウリル硫酸Naなど比較的皮膚刺激性が高い陰イオン界面活性剤と併用することで、陰イオン界面活性剤による皮膚や毛髪への刺激性を低下・緩和させることが知られています(文献8:2006)

このような背景から、陰イオン界面活性剤を主剤としたシャンプー、ボディソープなどに使用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

PEG-12ジメチコンの配合製品数と配合量の調査結果(2014年)

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PEG-12ジメチコンの安全性(刺激性・アレルギー)について

PEG-12ジメチコンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1990年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの皮膚に100%PEG-12ジメチコン0.5mLを4時間半閉塞パッチ適用し、パッチ除去1,24,48および72時間後に皮膚刺激性を評価したところ、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は0.44であり、非常にわずかな紅斑を誘発したが72時間以内に消散した(Silicone Environmental Health and Safety Center,2014)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.5%,2%および5%PEG-12ジメチコンと1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(SLS)を同時に24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24および48時間後に試験部位の皮膚刺激性を評価したところ、SLSのみを適用した部位と比較してSLSとPEG-12ジメチコンを適用した部位は皮膚刺激が少なく、この試験物質は濃度依存的に皮膚保護力が認められた(Silicone Environmental Health and Safety Center,2014)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の皮膚刺激が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼にPEG-12ジメチコン0.1mLを5日間毎日投与し、眼刺激性を評価したところ、一時的な軽度の結膜発赤がみれらたが、角膜または虹彩の刺激の兆候はみられなかった(Silicone Environmental Health and Safety Center,2014)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 20匹のモルモットを用いてPEG-12ジメチコンにおけるMagnusson and Kligman感作試験を行った。皮内誘導として1:1のFCA:水(0.1mL)の注射2回、50%PEG-12ジメチコン水溶液0.1mLの注射2回および50%PEG-12ジメチコンFCA0.1mLの注射2回を実施し、注射の6日後に試験群の適用部位を10%ラウリル硫酸ナトリウムを含むワセリン0.5mLで前処理した。誘導期間においては100%PEG-12ジメチコン0.4mLを48時間閉塞パッチ適用し、2週間の無処置期間を設けた後に未処置部位にチャレンジパッチ適用した。パッチ除去24および48時間後にDraize法に従って試験部位を評価したところ、PEG-12ジメチコンは感作剤ではなかった(Silicone Environmental Health and Safety Center,2014)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

PEG-12ジメチコンは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, Alkyl-Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, and Related Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 近藤 秀俊(2012)「パーソナルケア製品におけるシリコーンの利用」化学と教育(60)(7),318-319.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. DOW(-)「DOWSIL SH 3775 M」技術資料.
  6. DOW(-)「DOWSIL ES-5373 Formulation Aid」技術資料.
  7. DOW(-)「DOWSIL SH 3771 M」技術資料.
  8. 日光ケミカルズ(2006)「ポリエーテル変性シリコーン」新化粧品原料ハンドブックⅠ,249-251.

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