ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンとは…成分効果と毒性を解説

乳化
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
[化粧品成分表示名称]
・ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン

化学構造的に分岐状シロキサン構造をもつシリコーンのメチル基の一部に、酸化エチレン(約9モル)および炭化水素基(ラウリル)を結合して得られる重合体(∗1)であり、ポリエーテル変性シリコーンのシリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンに分類されるシリコーン系界面活性剤です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、一般的に高分子化合物です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、日焼け止め製品、スキンケア化粧品などに使用されています。

シリコーン油の乳化

シリコーン油の乳化に関しては、まず前提知識としてシリコーン油(シリコーンオイル)、乳化およびエマルションについて解説します。

シリコーン油とは、ケイ素(Si)と酸素(O)が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格として構成された合成高分子化合物の総称であり、代表的なシリコーンであるジメチコンは、直鎖状に伸びた Si-O-Si(シロキサン)主鎖に、側鎖として各ケイ素原子に2つのメチル基をもつ高分子化合物です。

シリコーン油は、炭化水素と比較して分子容積が大きく、主鎖の屈曲・回転が容易に起こり、化学反応性の低いメチル基で覆われていることから、安定性および柔軟性が高く、分子間力や表面張力が低いなどの特徴があります(文献2:2012)

このような特徴から、肌表面への拡がり、撥水性(∗2)の付与、低表面張力などに起因するすべり性およびベタつきの防止などの効果が明らかにされており、1950年代から化粧品分野で汎用されています(文献2:2012)

∗2 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、シリコーン油は乳化が困難なオイルであり、感触改良を目的に少量添加する場合はそれほど問題にならないものの、主成分として使用するためには安定な乳化が必要となり、安定に乳化させるためには一般的にポリエーテル変性シリコーンが用いられます(文献2:2012)

次に、乳化とは1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
3.0 W/O型乳化 わずかに分散

このように報告されており(文献5:-)、シリコーンを乳化し、シリコーン特有のベタつきの少ないさっぱり感を付与するシリコーンW/O型乳化剤(親油性乳化剤)として、主にファンデーション、化粧下地、チーク、日焼け止め製品、乳化系スキンケア化粧品などに使用されています(文献6:2006)

ポリエーテル変性シリコーンには、直鎖状シリコーンに酸化エチレンを付加した直鎖型と分岐状シリコーンに酸化エチレンを付加した分岐型があり(∗3)、また分岐型には分岐型変性と分岐型アルキル変性があります(∗4)

∗3 分岐型は主にPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであり、直鎖型にはPEG-3ジメチコンPEG-9ジメチコンPEG-10ジメチコンPEG-12ジメチコンなどがあります。

∗4 分岐型変性はシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンのことで、主にPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであり、分岐型アルキル変性はシリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンのことで、主にラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのことです。両者の化学構造的な違いは分岐状シリコーンのメチル基の一部に炭化水素基が結合しているかどうかです。

直鎖型と分岐型の主な違いは、水を添加した場合に直鎖型は徐々に増粘するためベタつくような感触を付与するのに対して、分岐型はほとんど増粘しないためベタつく感触を付与しないということと、分岐型は直鎖型と比較して高温保存時におけるエマルションの安定性が高いということがあります(文献7:2009)

次に、同じ分岐型でも分岐型変性と分岐型アルキル変性の違いは、油性成分において分岐型変性が主にシリコーンを乳化するのに対して、分岐型アルキル変性はシリコーン以外の油剤にも優れた乳化性を示し、このことから分岐型アルキル変性は、様々な油剤を混合した混合系でも安定なエマルションが得られることが挙げられます(文献7:2009)

つまり、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、

  • 水を添加した場合にほとんど増粘しないため、ベタつく感触を付与しないこと
  • シリコーンだけでなく様々な油剤と優れた乳化性を示し、油剤の混合系においても安定なエマルションが得られること

これらの特徴があります。

混合原料としてのラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン

ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、他の成分と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと以下の成分が併用されている場合は、混合系原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 NIKKOL ニコムルス WO-CF PLUS
構成成分 PEG-10ジメチコンジメチコンジステアルジモニウムヘクトライトラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
特徴・主な用途 有機変性粘土鉱物とシリコーン系乳化剤からなる乳化力に優れたW/O複合乳化剤

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの配合製品数と配合量の調査結果(2014年)

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ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:100%濃度においてほとんどなし-中程度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷および擦過した皮膚に100%ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン0.5mLを24時間閉塞パッチ適用し、OECD404テストガイドラインに基づいてパッチ除去24および72時間後に皮膚刺激性を評価したところ、24時間ではすべてのウサギに無傷および擦過部位の両方で軽度から中等の紅斑が観察され、72時間では6匹のうち5匹の部位は回復し、残りの1匹は無傷および擦過部位の両方で中等の紅斑およびわずかな浮腫を示した(National Industrial Chemicals Notificaton and Assessment Scheme,2012)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、100%濃度において軽度-中程度の皮膚刺激が報告されているため、100%濃度において皮膚刺激性は非刺激-中程度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、実際にはおよそ4%濃度以下で用いられていることから、4%濃度以下での皮膚刺激性試験データが必要であると考えられ、データがみつかりしだい追補します。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの両眼にラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを点眼し、片眼は洗眼し残りの片眼は洗顔せず、OECD404テストガイドラインに基づいて眼刺激性を評価したところ、洗眼の有無にかかわらずすべてのウサギは1および24時間でわずかな結膜刺激が観察され、それらは48時間で完全に消失した(National Industrial Chemicals Notificaton and Assessment Scheme,2012)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、わずかな眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを対象に皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(National Industrial Chemicals Notificaton and Assessment Scheme,2012)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, Alkyl-Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, and Related Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 近藤 秀俊(2012)「パーソナルケア製品におけるシリコーンの利用」化学と教育(60)(7),318-319.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 信越化学工業株式会社(-)「KF-6038」技術資料.
  6. 日光ケミカルズ(2006)「ポリエーテル変性シリコーン」新化粧品原料ハンドブックⅠ,249-251.
  7. 日本油化学会(2009)「シロキサン構造による特徴」界面と界面活性剤 ― 基礎から応用まで 改定第2版,63-68.

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