セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンとは…成分効果と毒性を解説

乳化
セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン
[化粧品成分表示名称]
・セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン

化学構造的にセチルジメチコンと、酸化エチレン(約10モル)および酸化プロピレン(約1モル)を含むジメチコンのアルコキシル化誘導体の重合体(∗1)であり、ポリエーテル変性シリコーンのシリコーン直鎖型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンに分類されるシリコーン系界面活性剤です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が分子結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、一般的に高分子化合物です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、日焼け止め製品、スキンケア化粧品、ボディケア製品などに使用されています。

シリコーン油の乳化

シリコーン油の乳化に関しては、まず前提知識としてシリコーン油(シリコーンオイル)、乳化およびエマルションについて解説します。

シリコーン油とは、ケイ素(Si)と酸素(O)が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格として構成された合成高分子化合物の総称であり、代表的なシリコーンであるジメチコンは、直鎖状に伸びた Si-O-Si(シロキサン)主鎖に、側鎖として各ケイ素原子に2つのメチル基をもつ高分子化合物です。

シリコーン油は、炭化水素と比較して分子容積が大きく、主鎖の屈曲・回転が容易に起こり、化学反応性の低いメチル基で覆われていることから、安定性および柔軟性が高く、分子間力や表面張力が低いなどの特徴があります(文献2:2012)

このような特徴から、肌表面への拡がり、撥水性(∗2)の付与、低表面張力などに起因するすべり性およびベタつきの防止などの効果が明らかにされており、1950年代から化粧品分野で汎用されています(文献2:2012)

∗2 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、シリコーン油は乳化が困難なオイルであり、感触改良を目的に少量添加する場合はそれほど問題にならないものの、主成分として使用するためには安定な乳化が必要となり、安定に乳化させるためには一般的にポリエーテル変性シリコーンが用いられます(文献2:2012)

次に、乳化とは1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
3.5 W/O型乳化 わずかに分散

このように報告されており(文献5:-)、シリコーンを乳化し、シリコーン特有のベタつきの少ないさっぱり感を付与するシリコーンW/O型乳化剤(親油性乳化剤)として、主にファンデーション、化粧下地、リップグロス、コンシーラー、アイペンシル、日焼け止め製品、乳化系スキンケア化粧品などに使用されています(文献6:2006)

ポリエーテル変性シリコーンには、直鎖状シリコーンに酸化エチレンを付加した直鎖型と分岐状シリコーンに酸化エチレンを付加した分岐型があり(∗3)、また直鎖型には直鎖型変性と直鎖型アルキル変性があります(∗4)

∗3 直鎖型は主にPEG-3ジメチコンPEG-9ジメチコンPEG-10ジメチコンPEG-12ジメチコンなどがあり、分岐型は主にPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンがあります。

∗4 直鎖型変性(直鎖型)はシリコーン直鎖型ポリエーテル変性シリコーンのことであり、直鎖型アルキル変性はシリコーン直鎖型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンのことで、主にセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンのことです。

直鎖型と分岐型の主な違いは、水を添加した場合に直鎖型は徐々に増粘しゲルを形成するのに対して、分岐型はほとんど増粘しないためベタつく感触を付与しないということと、直鎖型は分岐型ほど高温保存時におけるエマルションの安定性が高くないということがあります(文献7:2009)

次に、同じ直鎖型でも直鎖型変性と直鎖型アルキル変性の違いは、油性成分において直鎖型変性が主にシリコーンを乳化するのに対して、直鎖型アルキル変性はシリコーン以外の油剤にも優れた乳化性を示し、このことから直鎖型アルキル変性は、様々な油剤を混合した混合系でも安定なエマルションが得られることが挙げられます(文献7:2009)

つまり、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンは、

  • 水を添加した場合に徐々に増粘し、ゲルを形成すること
  • シリコーンだけでなく様々な油剤と優れた乳化性を示し、油剤の混合系においても安定なエマルションが得られること

これらの特徴があります。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンの配合製品数と配合量の調査結果(2014年)

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セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンの安全性(刺激性・アレルギー)について

セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に15%セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンを含むアイブローペンシルを24時間閉塞パッチ適用したところ、この試験物質は非刺激性に分類された(Anonymous,2006)
  • [ヒト試験] 28人の被検者に15%セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンを含むアイブローペンシルを対象にMaximization皮膚感作性試験を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質はいずれの被検者においても皮膚感作の兆候を示さなかった(KGL Inc,2006)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン0.1mLを点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、1および2日目に発赤および結膜刺激が観察されたが、3日目には消失した。この試験物質は眼刺激物の可能性が報告されたが、オーストラリアの労働安全衛生委員会(NOHSC)の有害物質分類基準では眼刺激剤に分類されなかった(National Industrial Chemicals Notificaton and Assessment Scheme,1997)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、わずかな眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, Alkyl-Polyoxyalkylene Siloxane Copolymers, and Related Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 近藤 秀俊(2012)「パーソナルケア製品におけるシリコーンの利用」化学と教育(60)(7),318-319.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 信越化学工業株式会社(-)「KF-6048」技術資料.
  6. 日光ケミカルズ(2006)「ポリエーテル変性シリコーン」新化粧品原料ハンドブックⅠ,249-251.
  7. 日本油化学会(2009)「シロキサン構造による特徴」界面と界面活性剤 ― 基礎から応用まで 改定第2版,63-68.

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