(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとは…成分効果と毒性を解説

乳化
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
[化粧品成分表示名称]
・(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー

[医薬部外品表示名称]
・アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体

化学構造的に高吸水性高分子の一種であるポリアクリル酸に炭素数10-30のメタクリル酸アルキルを導入した共重合体(∗1)であり(文献2:2019)、高分子乳化剤(∗2)です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、一般的に高分子化合物です。

∗2 大きな親水基(アクリル酸部分)と小さな疎水基(メタクリル酸アルキル部分)をもつことから、化学構造的には高分子界面活性剤の側面がありますが、一般の界面活性剤の大きな特徴である界面張力低化能やミセル形成能が低く、また乳化機構も異なることから、高分子界面活性剤というより高分子乳化剤と記載されることが多いです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、クレンジング製品、洗顔料、マスク製品、ヘアケア製品、頭皮ケア製品、メイクアップ化粧品など様々な製品に汎用されています。

高分子乳化によるゲル化

高分子乳化によるゲル化に関しては、まず前提知識として一般的な界面活性剤による乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

一般的な界面活性剤がこのような乳化特性を有しているのに対して、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、O/W型高分子乳化剤であり、以下の図をみるとわかるように、

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの乳化機構

親油基部分が油/水界面に吸着し、親水基部分が水に膨潤(∗3)し油滴の周囲に水和ゲル相を形成することによって、HLBに関わらずシリコーン含む様々な油を安定に乳化・分散することが知られています(文献5:1998)

∗3 膨潤とは、水分を含んで膨れる(膨張する)ことです。

また、一般に安定なエマルション形成のためには2-5%程度の乳化剤が必要とされていますが、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、親油性部分を油滴の周囲に吸着させる一方で、親水性部分は膨潤して水和ゲルを形成し、エマルション中の油滴は水和ゲルによって安定に保持されるため、通常は水和ゲルが形成される0.3%程度の少量でO/W型エマルションを調製できる特徴があります(文献5:1998)

さらに、水と油の界面張力を低下させないため、塗布後の油膜は水になじむことなく耐水性の皮膜を形成する特徴もあります(文献5:1998)

アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 2.0
育毛剤 2.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 2.0

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2011年および2018年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの配合製品数と配合量の調査結果(2011年および2018年)

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(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの安全性(刺激性・アレルギー)について

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1990年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に2%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー水溶液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後24および84時間後に皮膚刺激性を評価したところ、24時間で3人にわずかな反応が、84時間で1人の被検者にわずかな皮膚反応が観察された(Personal Care Products Council,2011)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に0.15%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含むボディローションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(Consumer Product Testing Co,2009)
  • [ヒト試験] 51人の被検者に0.6%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含むクリーム0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(Consumer Product Testing Co,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されており、また皮膚刺激は医薬部外品の配合上限である2%では非刺激-わずかな皮膚刺激が報告されていますが、0,6%濃度以下において皮膚刺激なしと報告されていることから、皮膚感作性はほとんどなく、皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 3匹のグループ2群のウサギの片眼にそれぞれ未希釈の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーおよび1%(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー中和溶液(pH6.9-7.0)を点眼し、眼はすすがず、それぞれの眼刺激性を評価したところ、未希釈では軽度から中程度の結膜刺激が観察され、それらは7日目までに消失した。一方で1%中和溶液ではわずかな虹彩および結膜刺激が観察されたが、すべての眼刺激は72時間で消失した(Lubrizol,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1%濃度において非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、1%濃度以下において眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Cross-Linked Alkyl Acrylates as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(36)(5 2_Suppl),59S-88S.
  2. 住友精化株式会社(2019)「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とは」, <https://www.sumitomoseika.co.jp/productarticles/inrpage.php?seq=12> 2020年1月13日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 栗林 さつき(1998)「O/W型高分子乳化剤の機能と応用」Fragrance Journal(26)(8),79-83.

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