水添レシチンとは…成分効果と毒性を解説

乳化剤 界面活性剤 保湿成分
水添レシチン(精製大豆レシチン)
[化粧品成分表示名称]
・水添レシチン

[医薬部外品表示名称]
・水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄レシチン

[慣用名]
・レシチン、大豆レシチン、精製大豆レシチン、水添大豆リン脂質

レシチンに水素を添加して合成することで熱や酸化に対する安定性を高めたリン脂質です。

レシチンは弱い乳化作用があり、角層になじみやすく、角層の保湿やバリア機能にとって重要な細胞間脂質であるセラミドと同様のラメラ構造を形成する性質を持っており、優れた保湿効果および保護力があります。

セラミド(細胞間脂質)

セラミドがつくっているラメラ構造

そのため、化粧品に配合される場合は、乾燥による肌荒れを防ぎ、柔軟な肌に整える目的でクリーム、乳液および美容液などの保湿化粧品に配合されます。

天然の界面活性剤なので水と油の両方に親和性がありますが、乳化作用は弱く、ごくまれに天然にこだわったコンセプトの化粧品の乳化剤として使用されることがありますが、基本的に水添レシチンのみで乳化することはほとんどありません。

また、有効成分をより皮膚に浸透させるためにリポソーム化またはエマルション化して配合することがありますが、水添レシチンは細胞膜のリン脂質に構造が似ていることから、リポソーム化やエマルション化の材料としてよく使用される成分のひとつです。

リポソームおよびエマルションは、有効成分の皮膚への浸透力や作用を向上させる技術のひとつで、細胞膜とよく似た構造を再現し、有効成分を包み込むことでより皮膚への浸透力を高めたり、有効成分を少しずつ放出することで効果を長時間持続させることができます。

リポソームは、多重分子構造をもつ100nm~130nmほどの物質で、以下のように、

リポソームの構造

水に溶ける物質を水分の中に、油に溶ける物質を油分の層に取り込んで安定させ、皮膚のバリアゾーンを通過し、表皮の奥まで広く浸透させます。

エマルションは、通常は均一に混ざり合わない2種類の液体を混ぜる130nm~180nmほどの物質で、

エマルションの構造

実際は一方が他の液体中に微粒子分散している状態であり、画像では油分に有効成分が混ざっている状態ですが、水分と油分が逆の場合もあり、たとえば水中に油滴分散する牛乳は天然のエマルションです。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

水添レシチンの配合製品数と配合量の調査結果(2014-2015年)

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水添レシチンの安全性(刺激性・アレルギー)について

水添レシチンの現時点での安全性は、皮膚刺激性や毒性および眼刺激性はほとんどなく、光毒性およびアレルギー(皮膚感作)もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献1:2001)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギを用いて水添レシチンの皮膚刺激能を測定した。水添レシチン0.5gを含む閉塞パッチをウサギの背部の無傷および擦過した皮膚に24時間適用し、試験部位をパッチ除去48時間後に評価したところ、1つの部位でわずかな紅斑と剥離した皮膚が観察された。一次刺激スコアは最大8.0のうち0.21であり、一次刺激ではないと結論付けられた(Leberco-Celsis Testing,1997a)

と記載されています。

動物試験結果ひとつのみしかデータがみあたりませんが、使用実績が古く、皮膚外用薬などの医薬品にも使用されていることから、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献1:2001)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に水添レシチン0.07gを滴下し、滴下24,48および72時間後に刺激スコアを採点したところ、水添レシチンの結膜刺激は最小で刺激の兆候は2日目に消失したため、一次刺激剤ではなかった(Leberco-Celsis Testing,1997b)

と記載されています。

動物試験結果ひとつのみしかデータがみあたりませんが、眼刺激性なしと結論づけているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 110人の背中に誘導期間として15%水添レシチンを含むワセリン0.025gをDraize法に基づいて合計10回適用し、パッチ適用の48時間後(週末は72時間後)にパッチを除去し試験部位をすすいで評価した。最後のパッチが除去されてから12日後に未処置部位に48時間チャレンジパッチが適用され、パッチ適用から48および96時間後に評価したところ、誘導期間において1人の被検者において1+の反応(パッチ領域全体にわたる紅斑)が2回観察され、チャレンジ期間においては別の1人の被検者は1+の反応を示した。ワセリン中の水添レシチンに皮膚感作性の兆候はないと結論づけた(International Research Services, Inc.,1997a)

と記載されています。

ヒト試験ひとつのみですが、使用実績が古く、皮膚外用薬などの医薬品にも使用されているため、アレルギー性(皮膚感作性)はほとんどないと考えられます。

光毒性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 15%水添レシチンの光毒性を10人の被検者(男性1人、女性9人)を用いて評価した。1日目に被検者の背中に15%水添レシチン0.017~0.025mgをパッチ適用し、反対側に対照のパッチを適用した。パッチ除去後に試験部位を最小紅斑線量10回に相当する量のUVAをソーラーシミュレーターで照射し、次に最小紅斑線量0.5回に相当するUVBを照射し、5分後および24時間後に採点したところ、水添レシチンは光毒性がなかった(International Research Services, Inc.,1997b)

と記載されています。

ヒト試験ひとつのみですが、使用実績が古く、皮膚外用薬などの医薬品にも使用されているため、光毒性はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
水添レシチン ■■

参考までに化粧品毒性判定事典によると、水添レシチンは■■(∗2)となっていますが、これは合成界面活性剤の共通判定であり、試験データをみるかぎりでは、安全性に問題はないと考えられます。

∗2  毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

水添レシチンは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1080/109158101750300937> 2017年11月6日アクセス.

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