レシチンとは…成分効果と毒性を解説

乳化剤 可溶化剤 界面活性剤 保湿成分
レシチン
[化粧品成分表示名称]
・レシチン

[医薬部外品表示名称]
・大豆リン脂質

マメ科植物である大豆または卵黄より抽出されたリン脂質から成る界面活性剤(乳化剤)です。

レシチンは天然の界面活性剤で安全性が高く、とくに大豆レシチンは乳化力は高くはありませんが、水に分散させると、水が少ない場合はゲル状態で存在し、水の量が増えていくと、しだいに膨潤し、ラメラ液晶などの液晶状態に変化していきます。

ラメラ液晶とは、以下の図のように、皮膚の表皮の細胞間脂質のひとつであるセラミドなどから成る脂質の層と水分子の層が交互に規則正しく何層も重なりあう構造のことであり、角層の保湿やバリア機能を担っているため、レシチンには角層の保湿およびバリア機能を高める機能があるといえます。

セラミド(細胞間脂質)

セラミドがつくっているラメラ構造

さらに水が多くなると、以下の図のようなリポソームという2分子膜構造の小胞体となって水に分散します。

リポソームの構造

レシチンは、リポソームを最もつくりやすいリン脂質であり、リポソームは水溶性および油溶性物質の両方を取り込むことが可能なので、保湿素材をはじめ有効成分や植物エキスなどを皮膚に浸透させやすくするのに活用されています。

レシチンの機能のほとんどは、リン脂質のもつ両親媒性構造による界面活性剤作用ですが、以下の表のように、大豆と卵黄ではリン脂質組成が異なり、ホスファジルコリン純度の高い卵黄レシチンのほうが乳化力は高いです(文献1:1998)

リン脂質 大豆 卵黄
PC(ホスファジルコリン) 24~32 66~76
PE(ホスファチジルエタノールアミン) 20~28 15~24
PI(ホスファチジルイノシトール) 12~20
PA(ホスファチジン酸) 8~15

また、大豆および卵黄レシチンの脂肪酸組成(∗1)は、以下の表のように、

∗1 この脂肪酸組成は、正確にはレシチンのリン脂質の脂肪酸組成です。

脂肪酸 大豆 卵黄
パルミチン酸 17~21 35~37
ステアリン酸 4~6 9~15
オレイン酸 12~15 33~37
リノール酸 53~57 12~17
リノレン酸 6~7 0.5
アラキドン酸 3.7

大豆レシチンはリノール酸、卵黄レシチンはオレイン酸の割合が多く、リノール酸およびオレイン酸は不飽和脂肪酸で非常に酸化しやすいため、現在では水素を添加して安定性を高めた水添レシチンを使用するほうが一般的です。(文献2:2006)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1997年および2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

レシチンの配合製品数の調査結果(1997年)

レシチンの配合製品数と配合量の調査結果(2014-2015年)

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レシチンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

レシチンの現時点での安全性は、皮膚刺激において非刺激性またはまれに最小限の刺激が起こる可能性がありますが、眼刺激性はほとんどなく、皮膚感作性(アレルギー性)および光感作性の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献3:2001)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に65%レシチンを3%含む日焼けオイルを24時間単一閉塞パッチ適用し、対照としてサンタンオイルを用いた。日焼けオイルと対照オイルとの間に刺激性の有意差は観察されず、日焼けオイルの刺激スコアは0.00であった(CTFA,1978a)
  • [ヒト試験] 18人の被検者に0.83%レシチン粉末を含む石けんの0.5%水溶液を24時間単一閉塞パッチ適用し、石けんを対照として使用したところ、試験物質と対照の間に刺激性の有意差はみとめられず、レシチンを含む石けんの刺激スコアは0.25であった(CTFA,1978b)
  • [ヒト試験] 17人の女性被検者の背中に0.3%レシチンの65%を含むファンデーション0.1mLを4日間連続で24時間閉塞パッチ適用し、試験部位はパッチ除去直後に0~4のスケールでスコアリングし、4日目のパッチ除去5時間後に刺激スコアを計算したところ、17人のうち13人の被検者に反応がみられ、最大スコアは1人の被検者で2(中等の紅斑)であった。7人の被検者は±反応(ほとんど知覚できない紅斑)であり、0.3%レシチン65%を含むファンデーションの刺激スコアは0.65であった(CTFA,1981)
  • [ヒト試験] 20人の女性被検者の背中に3%レシチンの65%を含むアイライナーを4日間連続で24時間閉塞パッチ適用し、試験部位はパッチ除去直後に0~4のスケールでスコアリングし、4日目のパッチ除去5時間後に刺激スコアを計算したところ、5人の被検者で±反応(ほとんど知覚できない紅斑)がみられ、刺激スコアは0.13であった(CTFA,1987)
  • [ヒト試験] 11人の被検者の背中に3%レシチンの65%日焼けオイル0.3mLを21日間にわたって23時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1時間後に試験部位をスコアリングしたところ、この製品は非刺激性であった(Hill Top Research, Inc.,1978)
  • [ヒト試験] リポソームとして大豆レシチン3mgを48耳管閉塞パッチ適用したところ、刺激は認められなかった(Nattermann Phospholipid GmbH,1995)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、まれにほとんど知覚できない紅斑が報告されていますが、ほとんどの結果が非刺激性と報告されているため、皮膚刺激性は非刺激性またはまれに最小限の刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献3:2001)によると、

  • [動物試験] 5匹のウサギの左結膜嚢にステアリルアミンを含む卵黄レシチンリポソーム調製物50μLを2時間にわたって15分に1回、合計9回適用し、5匹のウサギの対照群は右結膜嚢に生理食塩水を適用したところ、合計眼刺激スコアは実質的に非刺激性であり、一時的に最小限の眼刺激性が生じたウサギもすぐに非刺激性に回復した(Taniguchi et al.,1988a)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に中性および+電荷の卵黄レシチンリポソーム調製物50μLを点眼し、右結膜嚢に生理食塩水を点眼して、点眼後5分間、各眼の瞬きの回数を数えた。この手順を1時間間隔で6回繰り返したところ、中性レシチンリポソーム調製物は瞬きの数に統計的に有意な変化を生じさせなかったが、+電荷のレシチンリポソーム調製物は瞬きの数を有意に増加させた(Taniguchi et al.,1988b)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献3:2001)によると、

  • [ヒト試験] 99人の被検者の背中に3%レシチン65%を含む日焼けオイルを誘導期間において週3回合計10回48時間または72時間の閉塞パッチを適用し、10日間の無処置期間の後に背中の未処置部位にチャレンジパッチを適用し、48および96時間後にこの部位を評価した。1人の被検者は誘導期間の7回目のパッチ適用後に1+反応(弱い非小胞性反応)を生じ、この反応はチャレンジパッチ後の96時間での評価まで継続した。この被検者に再試験として未希釈の試験物質と1:3に希釈した試験物質の両方を用いて評価したところ、24時間で1+反応を示した。5日間にわたって1日3回毎日解放パッチ適用したところ、陰性であった。この被検者は低感作性であると結論づけられたが、反応が低レベルであり、解放パッチが陰性であったため、臨床的意義はないと結論づけられた。また別の2人の被検者は誘導期間の4回目の適用後に1+反応を示したが、これらは重要とはみなされなかった。3%レシチン65%を含む日焼けオイルは刺激および感作を示さなかったと結論づけられた(Research Testing Laboratories,1978)
  • [ヒト試験] 25人の被検者の前腕の手のひら側に0.1%レシチン65%を含むマスカラ0.3gラウリル硫酸ナトリウム(SLS)適用後に誘導期間において48時間閉塞パッチで5回適用し、10日間の休息期間の後に未処置部位に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去24時間後に試験部位を評価したところ、誘導期間およびチャレンジ期間の両方で試験部位に反応は観察されず、通常使用において接触感作を引き起こす可能性は低いと結論付けられた(Ivy Research Laboratories,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作反応なしと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」(文献3:2001)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者の背中2箇所に15%レシチンを含むワセリン0.017~0.025mgをパッチ適用し、パッチ除去48時間後に0~4のスケールでスコアリングした。次いで片方の試験部位にWG345(2mm)フィルターを用いたソーラーシミュレーターでUVB線量の10倍に相当するUVAを照射し、未処置部位も同様に照射し対照に用いた。照射5分後および24時間後にスコアリングしたところ、15%レシチンを含むワセリンは光毒性がなかった(IRSI,1997)
  • [ヒト試験] 198人の被検者の背中に0.3%レシチン65%を含むファンデーションを誘導期間において週3回合計10回にわたって48または72時間閉塞パッチ適用し、各パッチ除去48時間後にスコアリングした。14日の休息期間の後に背中の未処置部位にチャレンジパッチ適用し、パッチ除去時および48時間後にスコアリングした。また被検者の半分は誘導期間の1,4,7および10回目のパッチおよびチャレンジパッチ除去後に約30cmの距離で1分間UVライト(Hanovia Tanette Mark Iランプ,360nm日ピーク出力)を照射し、照射48時間後に光感作反応を評価したところ、いずれの被検者も0.3%レシチン65%を含むファンデーションが感作を誘発する可能性を示さなかったと結論付けられた(Research Testing Laboratories,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
レシチン

参考までに化粧品毒性判定事典によると、レシチンは△(∗2)となっていますが、これは天然界面活性剤の判定であり、試験データをみるかぎりでは、安全性に問題はないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

レシチンは界面活性剤、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 松本 哲治, 徳永 邦彦, 大山 慶一(1998)「大豆レシチンの機能と化粧品への応用の課題」Fragrance Journal(26)(3),41-48.
  2. 日光ケミカルズ(2006)「界面活性剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,p277-282.
  3. “Cosmetic Ingredient Review”(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Lecithin and Hydrogenated Lecithin」, <http://journals.sagepub.com/doi/10.1080/109158101750300937> 2018年5月7日アクセス.

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