リゾレシチンとは…成分効果と毒性を解説

乳化剤 界面活性剤 可溶化剤 保湿成分 抗シワ成分 抗老化成分
リゾレシチン
[化粧品成分表示名称]
・リゾレシチン

[医薬部外品名]
・卵黄リゾホスファチジルコリン、大豆リゾリン脂質液

マメ科植物である大豆または卵黄より抽出されたレシチンを加水分解(酵素処理)することでアルキル鎖をひとつ取り除いた白色~黄色の界面活性剤(乳化剤)です。

リゾレシチンを構成している脂肪酸組成は、以下の表のように、

脂肪酸 大豆 卵黄
ミリスチン酸 0.2
パルミチン酸 24.0 68.5
パルミトオレイン酸 1.0
ステアリン酸 8.0 26.1
オレイン酸 11.0 3.4
リノール酸 52.0 0.3
リノレン酸 5.0

となっており(文献3:2000)、大豆リゾレシチンは約70%が不飽和脂肪酸、卵黄リゾレシチンは90%以上が飽和脂肪酸で、大豆リゾレシチンは酸化しやすく、卵黄レシチンは酸化しにくいという異なった特性になっています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、ヘアケア製品、日焼け止め製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献3:2012;文献5:2002)

乳化作用・可溶化作用

リゾレシチンは、レシチンから脂肪酸分子(アルキル基)をひとつ減らすことで、親水性が大幅に向上し、水や多価アルコールに容易に溶解するようになり、また界面特性においても、強い乳化性および可溶化性を有し、エマルションを形成しやすい特徴があります。

エマルションとは、通常は均一に混ざり合わない2種類の液体を混ぜる130nm~180nmほどの物質のことで、以下の画像のような構造を形成しています。

エマルションの構造

実際は一方が他の液体中に微粒子分散している状態であり、画像では油分に有効成分が混ざっている状態で、たとえば、水中に油滴分散する牛乳や油中に水滴分散するバターなどは代表的なエマルションといえます。

近年の化粧品の質感指向はさっぱりしたタイプが定着しており、油分を控えた質感においては乳化するよりも可溶化したほうが安定した剤形が得やすく、処方の観点からも自由度が高いのですが、可溶化する場合、高モル数(高分子)のPEGを有する親水性界面活性剤が一般的に利用され、天然系では種類が少ないのが実情ですが、卵黄リゾレチシンは一切の合成反応を伴わずに優れた可溶化特性を示します。

さらに、卵黄リゾレシチン単独では重量に対して20%量の油分が可溶化の限界であるのに対し、卵黄レシチンを併用することで、50~70%の油分を可溶化し、高圧乳化装置も併用すればほぼ100%の可溶化が実現できたという報告もあります(文献3:2000)

保湿作用

保湿作用に関しては、リゾレシチンの構造は細胞膜の組成と非常によく似ているため、レシチンより早く角層に浸透し、細胞膜に取り込まれるように入り込むため、角層の保湿性を向上させる特性を有しています。

ラミニン5産生促進による抗シワ・抗老化作用

ラミニン5産生促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識としてラミニン5を解説します。

まず以下の肌図をみてほしいのですが、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に外部刺激や水分量を調節するバリア機能と保水機能の役割を有し、真皮は主に皮膚のハリや弾力を保つ役割を有しています。

そして、表皮最下部の基底膜(基底層)は、表皮の土台として構造の異なる表皮と真皮をつなぎ、表皮-真皮間でのエネルギーや栄養を輸送したり、物質のやりとりを制御したり、表皮や真皮がダメージを受けた際に修復する因子を生成したり、肌を正常に保つために重要な働きをしています。

さらに基底膜を詳細にみていくと、以下の基底膜拡大図をみてもらうとわかるように、

基底膜におけるコラーゲンの仕組み

基底膜にはⅣ型およびⅦ型コラーゲンが結合しており、Ⅳ型コラーゲンと基底細胞をつないでいるのがラミニン5という細胞接着タンパク質で、ラミニン5の量が多いと表皮とのつながりが強固になり、皮膚がダメージを受けて断裂されたとしてもすぐに表皮をつなぎ合わせて修復することができます。

一方、ラミニン5が減少し、基底膜の機能が乱れると表皮・真皮間のやりとりや栄養・エネルギーの循環がうまくいかなかったり、ダメージの修復機能も低下し、しわやたるみなどの老化現象を促進させる一因となることが資生堂によって解明されています(文献4:2000)

2000年に資生堂によって報告されたラミニン5の産生を促進する成分の検証によると、

ラミニン5の産出を促す成分を探したところ、リピデュールが有効であることがわかった。

リピデュールはもともと体内にある細胞の膜などからつくられるリゾリン脂質で、大豆由来のリン脂質がからつくられる。

真皮細胞の上に表皮細胞を乗せた皮膚モデルにこのリピデュールを加えると、表皮細胞がラミニン5をたくさん産み出し、状態の良い基底膜を生み出した。

このような検証結果が明らかになっており(文献4:2000)、リゾレシチン(大豆リゾリン脂質液)にラミニン5産生促進による抗シワ・抗老化作用が認められています。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

リゾレシチンの配合製品数と配合量の調査結果

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リゾレシチンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

リゾレシチンの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006にも収載されており、皮膚刺激性および眼刺激性はほとんどなく、皮膚感作(アレルギー)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

“レシチン博士【神津健一】情報館”の「リゾレシチンクリームのヒト皮膚一次刺激性試験結果報告書」(文献2:2014)によると、

  • [ヒト試験] 16人の被検者(男性10人、女性6人、31~58歳)の右上腕内側にK-リゾレシチンクリーム(リゾレシチン濃度不明)を24時間単一Finn Chamber適用し、対照として水を用いて、Finn Chamber除去後に医師が判定したところ、いずれの被検者も皮膚刺激は認められなかった

と記載されています。

試験データでは濃度は不明ですが、一次皮膚刺激は報告されていないため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日光ケミカルズの安全データシート(文献1:2015)によると、

  • SIRC-NR法を用いて眼刺激性試験を行ったところ、眼刺激性なし

と記載されています。

試験結果はひとつで根拠としては弱いですが、眼刺激性なしと結論づけられているため、現時点では眼刺激性なしと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日光ケミカルズの安全データシート(文献1:2015)によると、

  • [ヒト試験] 51人の被検者にRIPT法に基づいて皮膚感作試験を行ったところ、皮膚感作性なし

と記載されています。

試験結果はひとつで、根拠としては弱いですが、卵黄由来のリゾレシチンは感作性なしと結論付けられており、アレルギーの報告もないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
リゾレシチン

参考までに化粧品毒性判定事典によると、リゾレシチンは■(∗1)となっていますが、データ不足のため詳細は不明です。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

リゾレシチンは界面活性剤、保湿成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤 保湿成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2015)「安全データシート LPA」,<https://www.chemical-navi.com/product_search/detail636.html> 2017年11月15日アクセス.
  2. “レシチン博士【神津健一】情報館”(2014)「リゾレシチンクリームのヒト皮膚一次刺激性試験結果報告書」,<http://www.k-kozu.net/2014/06/post-57.html> 2018年5月9日アクセス.
  3. 金光 智行(2000)「卵黄リゾレシチンによる可溶化技術とそれを応用した保湿製剤」Fragrance Jpurnal(28)(12),58-64.
  4. “資生堂”(2000)「皮膚基底膜ケアに関する研究」,<https://www.shiseidogroup.jp/rd/ifscc/09.html> 2018年8月16日アクセス.

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