ラウロイルメチルアラニンNaとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ラウロイルメチルアラニンNa
[化粧品成分表示名称]
・ラウロイルメチルアラニンNa

[医薬部外品表示名称]
・ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム液

化学構造的に炭素数12の高級脂肪酸であるラウリン酸の塩化物とアミノ酸の一種であるβ-アラニン(∗1)を合成して得られるラウロイルメチルアラニンのナトリウム塩であり、アミノ酸系界面活性剤のAMA(Acyl Methyl Alaniante:アシルメチルアラニン塩)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

∗1 化粧品にも使用され、表皮に存在する天然保湿因子としても一般的なアラニンは、正確には「α-アラニン」であり、アシルメチルアラニン塩の合成に使用されるアラニンは「β-アラニン」でα-アラニンの構造異性体です。構造異性体とは、元素の構成は同じでも原子の結合関係が異なる分子のことであり、β-アラニンも生体内に遊離アミノ酸として存在しますが、タンパク質の構成分子とはならないアミノ酸で、その多くは筋肉中に存在します。

1960年代、低刺激性の洗浄剤へのニーズを背景にコストおよび性能的にアシルサルコシン塩のみが汎用されていましたが、アシルサルコシン塩もコストおよび刺激性に難点がある中で、アシルサルコシン塩よりも界面活性剤に優れ、皮膚刺激性も少なく、なおかつコスト的にも優れたアシルメチルアラニン塩が上市されました(文献3:1969)

アニオン界面活性剤であるラウロイルメチルアラニンNaの主な性質は、

分子量 cmc(mmol/L) クラフト点(℃) 生分解率(%)
307.4

このように報告されています(文献4:-)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献6:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献5:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ラウロイルメチルアラニンNaは、アミノ酸系界面活性剤であることから生分解性の点で易分解性であると推察されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディ&ハンドソープ製品、洗顔料などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、陰イオン界面活性剤は洗浄力および起泡力を有しており、陰イオン界面活性の中でもアシルメチルアラニン塩(AMA)は、毛髪のケラチンタンパクの等電点に近い弱酸性領域(pH6-7)であることから毛髪に対する親和性が高く、かつとくにラウロイルメチルアラニンNaは硬水中でも優れた起泡性を示すのが主な特徴です(文献2:1968;文献3:1969)

1968年に川研ファインケミカルによって報告されたアシルメチルアラニンナトリウム塩に対する各脂肪酸のpHによる起泡力の比較検証によると、

各脂肪酸アシルメチルアラニンナトリウム塩(濃度0.25%)に対してpHによる起泡性の影響を40℃で検討したところ、以下のグラフのように、

アシルメチルアラニンナトリウム塩に対する各脂肪酸のpHによる起泡力の比較

ラウロイルメチルアラニンNaおよびミリストイルメチルアラニンNaが、最も高い起泡性を示し、またこれらはpH6-7で最高値を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:1968)、ラウロイルメチルアラニンNaはpH6-7の弱酸性領域で最も高い起泡力が認められています。

次に2015年に川研ファインケミカルによって公開された技術情報によると、

ラウロイルメチルアラニンNaの起泡力を、ラウレス硫酸Naおよびアミノ酸系界面活性剤であるラウロイルサルコシンNaココイルグルタミン酸TEAラウロイルアスパラギン酸NaココイルメチルタウリンNaと各濃度0.25%、40℃およびpH6.0(∗2)の条件(∗3)で比較したところ、以下のグラフのように、

∗2 ココイルメチルタウリンNaのみpH5.0での測定です。

∗3 界面活性剤は、各陰イオン界面活性剤、コカミドプロピルベタインおよびコカミドMEAを16:4:2の割合で配合した複合系となっているため、各陰イオン界面活性剤単体の起泡力ではなく、あくまでも同条件による相対的な起泡力比較です。

アニオン界面活性剤の起泡力比較

ラウロイルメチルアラニンNaの起泡力は、40℃およびpH6.0において他のアミノ酸系界面活性剤と比較して高いことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2015)、ラウロイルメチルアラニンNaは弱酸性領域(pH6.0)において高い起泡力が認められています。

また、他の陰イオン界面活性剤とラウロイルメチルアラニンNaを1:1の割合で併用することで、陰イオン界面活性剤の起泡力が向上することが報告されています(文献7:2015)

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ラウロイルメチルアラニンNaの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウロイルメチルアラニンNaの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1960年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性(眼をすすがない場合):軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

川研ファインケミカルの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [動物試験] ウサギに5%ラウロイルメチルアラニンNa水溶液を対象に皮膚刺激性試験を実施したところ、軽度の皮膚刺激であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、10%濃度において非刺激と報告されているため、10%濃度以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

川研ファインケミカルの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に2%ラウロイルメチルアラニンNa水溶液を点眼し、眼刺激性を評価したところ、軽度の眼刺激性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の眼刺激性と報告されているため、軽度の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

川研ファインケミカルの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いてラウロイルメチルアラニンNa水溶液を対象に皮膚感作性試験を実施したところ、陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ラウロイルメチルアラニンNaは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. 川研ファインケミカル株式会社(2013)「アラノンALE」Safety Data Sheet.
  2. 石井 睦雄, 他(1968)「N-アシル-N-アルキル-β-アラニン塩の合成と性能」油化学(17)(11),616-622.
  3. 石井 睦雄, 他(1969)「N-アシルN-アルキル-β-アラニン塩の化粧品への応用」日本化粧品技術者連合会会報(5),73-80.
  4. Tripod Development(-)「Sodium Lauroyl Methylaminopropionate」, <https://tripod.nih.gov/ginas/app/substance/fb227a18> 2019年9月3日アクセス.
  5. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  6. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  7. 川研ファインケミカル株式会社(2015)「ソイポン・アラノンによる泡量向上効果」技術資料.

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