ラウロイルサルコシンNaとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ラウロイルサルコシンNa
[化粧品成分表示名称]
・ラウロイルサルコシンNa

[医薬部外品表示名称]
・ラウロイルサルコシンナトリウム

化学構造的に炭素数12の高級脂肪酸であるラウリン酸の塩化物と、生体内においてコリンからグリシンへの代謝中間体であるサルコシン(N-メチルグリシン)(∗1)を縮合(∗2)して得られるラウロイルサルコシンのナトリウム塩であり、アミノ酸系界面活性剤のAS(Acyl Sarcosinate:アシルサルコシン塩)(∗3)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

∗1 グリシン塩は水に溶けにくいですが、N-メチルグリシン(サルコシン)は結晶性が低下し、水によく溶けるようになるため、グリシンではなくN-メチルグリシンが採用されています。

∗2 縮合(縮合反応)とは、同種または異種2分子から、水・アルコールなどの簡単な分子を分離することで新たに化合物をつくる反応のことです。

∗3 一般的な界面活性剤の分類において、「AS」というとラウリル硫酸Naに代表されるアルキル硫酸エステル塩(Alkyl Sulfate:AS)であり、アシルサルコシン塩は「AS」と略して用いられているわけではありませんが、ここでは慣例的にAcyl Sarcosinateの頭文字から「AS」と略して記載しています。アミノ酸系界面活性剤の中のASといった狭義的な意味合いです。

アニオン界面活性剤であるラウロイルサルコシンNaの主な性質は、

分子量 cmc(wt/wt%) クラフト点(℃) 生分解率(%)
293.38 0.08 90以上(15日後)

このように報告されています(文献3:2006;文献6:-;)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献8:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献7:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ラウロイルサルコシンNaは、生分解性の点で易分解性であることが確認されており、環境への影響は少ないことが知られています(文献6:-)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディ&ハンドソープ製品、洗顔料&洗顔石鹸などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、陰イオン界面活性剤は洗浄力および起泡力を有しており、アシルサルコシン塩はセッケンと比較して耐硬水性に優れ、洗浄力はセッケンに劣らず、かつ皮膚に対して温和な洗浄作用を示すと報告されています(文献3:2006)

各脂肪酸によるアシルサルコシン塩(0.1%濃度)の49℃における起泡力は、以下の表のように、

アシルサルコシンNaの各脂肪酸による泡立ち生比較

ラウロイルサルコシンNaは、比較的広いpH領域で泡立ちが良く、pH5-6付近で最も高い起泡力があることから弱酸性洗浄剤として使用可能であり、毛髪に対する親和性が高く、キメの細かい泡が得られることが報告されています(文献4:1985;文献5:1969)

次に2015年に川研ファインケミカルによって公開された技術情報によると、

ラウロイルサルコシンNaの起泡力を、ラウレス硫酸Naおよびアミノ酸系界面活性剤であるラウロイルメチルアラニンNaココイルグルタミン酸TEAラウロイルアスパラギン酸NaココイルメチルタウリンNaと各濃度0.25%、40℃およびpH6.0(∗4)の条件(∗5)で比較したところ、以下のグラフのように、

∗4 ココイルメチルタウリンNaのみpH5.0での測定です。

∗5 界面活性剤は、各陰イオン界面活性剤、コカミドプロピルベタインおよびコカミドMEAを16:4:2の割合で配合した複合系となっているため、各陰イオン界面活性剤単体の起泡力ではなく、あくまでも同条件による相対的な起泡力比較です。

アニオン界面活性剤の起泡力比較

ラウロイルサルコシンNaの起泡力は、40℃およびpH6.0において他のアミノ酸系界面活性剤と比較して高いことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:2015)、ラウロイルサルコシンNaは弱酸性領域(pH6.0)において高い起泡力が認められています。

他にもシャンプーに用いられる陰イオン界面活性剤(濃度12%)を実際的な洗髪試験によって試験者の評価を100分率で表示した結果として、以下の表のように、

陰イオン界面活性剤 泡立ち 洗浄性 ツヤ くし通り
(ぬれた髪)
ラウリル硫酸TEA 100 0 0 91 9 0 55 27 18 59 33 8
ラウレス硫酸Na 61 30 9 92 4 4 61 39 0 74 26 0
ラウロイルサルコシンNa 80 7 13 80 20 0 40 40 20 40 60 0
ココイルメチルタウリンNa 83 17 0 100 0 0 58 33 9 67 25 8
ヤシ油脂肪酸TEA 92 0 8 66 25 9 25 50 25 50 17 33

このような検証結果が報告されており(文献5:1969)、ラウロイルサルコシンNaは泡立ちや洗浄力に優れており、かつ毛髪親和性を有していることからツヤやぬれた毛髪の櫛通りもある程度良好であることが読み取れます。

これらの検証結果をみてもわかるように、ラウロイルサルコシンNaは単体でも高い洗浄力および起泡力を有していますが、他の陰イオン界面活性剤を主剤とした場合にラウロイルサルコシンNaを併用することによって、陰イオン界面活性剤の起泡力および泡のキメを向上させることが報告されており(文献4:1985;文献9:2015)、他の陰イオン界面活性剤と併用して使用されています。

効果・作用についての補足

ラウロイルサルコシンナトリウムは、乳酸菌に対する抗菌作用があり、口臭予防や虫歯の進行を防止する目的で歯磨き粉に配合されますが、化粧品においてこの効果・作用は影響がないため、抗菌作用については記載していません。

ラウロイルサルコシンナトリウムはネガティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合制限があります。

種類 最大配合量
石けん、シャンプー等の直ちに洗い流す化粧品以外の化粧品 配合不可
歯磨 0.50g

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1998年および2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウロイルサルコシンNaの配合製品数と配合量の調査結果(1998年および2015-2016年)

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ラウロイルサルコシンNaの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウロイルサルコシンNaの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1940年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚浸透性:ほとんどなし

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001;文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] 200人の被検者に5%ラウロイルサルコシンNa水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激の兆候はみられなかった。3週間後に同じく5%濃度でチャレンジパッチを適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚感作の兆候はみられなかった(Technology Sciences Group Inc,1994)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に5%ラウロイルサルコシンNa水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間においていくつかの散発的な紅斑がみられたが、チャレンジパッチにおいていずれの被検者も皮膚反応はみられなかった(Technology Sciences Group Inc,1994)
  • [in vitro試験] 再構築ヒト表皮モデルを用いてラウロイルサルコシンNa20mgを含む食塩水を3,60および240分処理したところ、腐食性ではなかった(European Chemicals Agency,2015)

– 個別事例 –

  • [個別事例] 手、顔および首に急性の重度の湿疹反応を発症した女性に開放パッチテストを実施したところ、使用していたハンドソープで+3の水疱反応がみられたため、個々の成分をパッチテストした。その結果、ラウロイルサルコシンNa水溶液で+3の水疱反応がみられた。2人の被検者に石鹸とラウロイルサルコシンNaをパッチテストしたところ、陰性であった(A. Zemtsov,2005)
  • [個別事例] 慢性手湿疹を有する女性患者にラウロイルサルコシンNaを含むクレンジング製品を半閉塞パッチ適用したところ、陽性反応を示した。ラウロイルサルコシンNaの濃度を0.1%,0.5%および1.0%でフォローアップパッチテストを実施したところ、98時間での反応はそれぞれ-,+/-および+であった(J. L. Hanson,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、5%濃度において非刺激および皮膚感作性なしと報告されているため(∗4)5%濃度以下において皮膚刺激性はほとんどなく、また皮膚感作性もほとんどないと考えられます。

∗4 個別事例はまれに起こる事例であり、事例が増えると一般的な感作性の評価に影響を与えますが、まれである場合は評価に影響しません。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [動物試験] 10匹のウサギの片眼に5%ラウロイルサルコシンNa水溶液0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて点眼2,4および24時間後に眼刺激性を評価したところ、2時間後でいくつかの角膜刺激が観察されたが、これらは数日内にはすべて消失し、角膜への明らかな損傷はなかった(Technology Sciences Group Inc,1994)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、5%濃度において非刺激-最小限と報告されているため、5%濃度以下において眼刺激性は、非刺激性-最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚吸収および体内挙動(代謝、排泄)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001;文献2:2016)によると、

  • [in vitro試験] ヒト表皮を介してラウロイルサルコシンNaの皮膚浸透性を検討したところ、経表皮に0.061 ± 0.013µgの非常にわずかなラウロイルサルコシンNaがみられた(YC Kim et al,2008)
  • [動物試験] ラットにラウロイルサルコシンNaを投与したところ、24時間以内に50mg/kg用量の82%-89%が尿および糞尿に排泄され、さらに24時間後に1%-2%が尿中に排泄された(Geigy Chemical Corp,-)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、経表皮からはほとんど浸透・吸収されず、また吸収・浸透される可能性のある非常にわずかな量のほとんどは適切に排泄されると報告されているため、皮膚吸収はほとんどなく、またごくわずかな量が吸収されたとしてもそのほとんどは尿中に排泄されると考えられます。

∗∗∗

ラウロイルサルコシンNaは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Cocoyl Sarcosine, Lauroyl Sarcosine, Myristoyl Sarcosine, Oleoyl Sarcosine, Stearoyl Sarcosine, Sodium Cocoyl Sarcosinate, Sodium Lauroyl Sarcosinate, Sodium Myristoyl Sarcosinate, Ammonium Cocoyl Sarcosinate, and Ammonium Lauroyl Sarcosinate」International Journal of Toxicology(20)(1),1-14.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Amended Safety Assessment of Fatty Acyl Sarcosines and Sarcosinate Salts as Used in Cosmetics」Final Amended Report.
  3. 日光ケミカルズ(2006)「N-アシルサルコシン塩」新化粧品原料ハンドブックⅠ,180-181.
  4. 竹原 将博(1985)「アミノ酸系界面活性剤」油化学(34)(11),964-972.
  5. 伊藤 知男, 他(1969)「シャンプー」油化学(18)(Supplement),26-35.
  6. Schii+Seilacher Struktol GmbH(-)「Perlastan」技術資料.
  7. 本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  8. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  9. 川研ファインケミカル株式会社(2015)「ソイポン・アラノンによる泡量向上効果」技術資料.

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