ラウロイルアスパラギン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ラウロイルアスパラギン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・ラウロイルアスパラギン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・N-ラウロイル-L-アスパラギン酸ナトリウム液

化学構造的に炭素数12の高級脂肪酸であるラウリン酸の塩化物と、酸性アミノ酸の一種であるアスパラギン酸を縮合(∗1)して得られるラウロイルアスパラギン酸のナトリウム塩であり、アミノ酸系界面活性剤のAA(Acyl Aspartate:アシルアスパラギン酸塩)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

∗1 縮合(縮合反応)とは、同種または異種2分子から、水・アルコールなどの簡単な分子を分離することで新たに化合物をつくる反応のことです。

アニオン界面活性剤であるラウロイルアスパラギン酸Naの主な性質は、

分子量 cmc(mmol/L) クラフト点(℃) 生分解率(%)
337.39 100%(28日)

このように報告されています(文献1:2016;文献2:2019)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献4:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献3:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ラウロイルアスパラギン酸Naは、生分解性の点で易分解性であることが確認されており、環境への影響は少ないことが明らかにされています(文献1:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗顔料&洗顔パウダー、シャンプー製品、ボディソープ製品などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、陰イオン界面活性剤は洗浄力および起泡力を有しており、中でもアミノ酸系陰イオン界面活性剤は比較的マイルドな洗浄力で皮膚刺激性が低いことから皮膚および頭皮の洗浄剤として汎用されています。

アミノ酸系陰イオン界面活性剤の中で代表的なものは酸性アミノ酸であるグルタミン酸を使用したアシルグルタミン酸塩ですが、アシルグルタミン酸塩はすすぎ性が良いとはいえず、いわゆるぬめり感を有し、また泡立ちが遅いことが課題とされています(文献5:1990)

そのような背景の中で、ラウロイルアスパラギン酸Naはアシルグルタミン酸塩と同様に、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸を使用しているものの、すすぎ性が良好でぬめり感のないさっぱりした使用感であること、なおかつ泡立ちが速やかであることから、アシルグルタミン酸塩の課題を解決したアミノ酸系陰イオン界面活性剤であるといえます(文献5:1990)

1990年に三菱化学(現 三菱ケミカル)が公開した技術情報によると、

各アシルアスパラギン酸塩およびアシルグルタミン酸塩それぞれ濃度15%のシャンプー製剤を用いて、起泡力およびすすぎ性を評価した。

起泡力は、各製剤を蒸留水で200倍に希釈した水溶液20mℓ、油成分としてトリオレイン1gを栓付100mℓメスシリンダーに入れ、共栓して20回上下に振った後、直ちに水平な場所に設置し泡の容量を目盛りから読み取り起泡力とした。

すすぎ性は、各製剤を蒸留水で50倍に希釈した水溶液3ℓを洗面器に受け、20-30歳の男女20人の前腕に泡立てるようにこすりつけ、水道水ですすいだ時のぬめり感をすすぎ性基準(+1:サッパリしている、0:どちらともいえない、-1:ぬめり感がある)で数値化し、その合計値で評価したところ、以下の表のように、

界面活性剤(濃度:15%) 起泡力(mℓ) すすぎ性
アシルアスパラギン酸塩 ラウロイルアスパラギン酸Na 60 15
ココイルアスパラギン酸TEA 75 12
ココイルアスパラギン酸Na 100 12
アシルグルタミン酸塩 ラウロイルグルタミン酸Na 30 3
ココイルグルタミン酸TEA 60 -2
ココイルグルタミン酸Na 40 -7

アシルアスパラギン酸塩は、起泡力およびすすぎ性ともにアシルグルタミン酸塩より優れていることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1990)、ラウロイルアスパラギン酸Naに速やかな起泡力および良好なすすぎ性が認められています。

次に2015年に川研ファインケミカルによって公開された技術情報によると、

ラウロイルアスパラギン酸Naの起泡力を、ラウレス硫酸Naおよびアミノ酸系界面活性剤であるラウロイルメチルアラニンNaラウロイルサルコシンNa、ココイルグルタミン酸TEA、ココイルメチルタウリンNaと各濃度0.25%、40℃およびpH6.0(∗2)の条件(∗3)で比較したところ、以下のグラフのように、

∗2 ココイルメチルタウリンNaのみpH5.0での測定です。

∗3 界面活性剤は、各陰イオン界面活性剤、コカミドプロピルベタインおよびコカミドMEAを16:4:2の割合で配合した複合系となっているため、各陰イオン界面活性剤単体の起泡力ではなく、あくまでも同条件による相対的な起泡力比較です。

アニオン界面活性剤の起泡力比較

ラウロイルアスパラギン酸Naの起泡力は、40℃およびpH6.0において他のアミノ酸系界面活性剤と比較して有意に高くはなく、アミノ酸系界面活性剤として平均的な起泡力であることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2015)、ラウロイルアスパラギン酸Naは弱酸性領域(pH6.0)においてアミノ酸系界面活性剤として平均的な起泡力が認められています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2012-2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウロイルアスパラギン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2012-2013年)

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ラウロイルアスパラギン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウロイルアスパラギン酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:30%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:4%濃度において最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

旭化成ファインケムの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いて30%ラウロイルアスパラギン酸Na水溶液を対象に皮膚刺激性試験をDraize法に基づいて実施したところ、無刺激であった
  • [動物試験] モルモットを用いてラウロイルアスパラギン酸Naを対象に皮膚感作性試験(Buehler法)を実施したところ、陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

旭化成ファインケムの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いて4%ラウロイルアスパラギン酸Naを対象に眼刺激性試験をDraize法に基づいて実施したところ、最小の眼刺激性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、4%濃度において最小限の眼刺激性と報告されているため、4%濃度において最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

∗∗∗

ラウロイルアスパラギン酸Naは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. 旭化成ファインケム株式会社(2016)「アミノフォーマー FLDS-L」安全データシート.
  2. “Pubchem”(2019)「Sodium N-lauroylaspartate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sodium-N-lauroylaspartate> 2019年9月6日アクセス.
  3. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  4. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  5. 三菱化学株式会社(1990)「好すすぎ性洗浄剤組成物」特開平02-268114.
  6. 川研ファインケミカル株式会社(2015)「ソイポン・アラノンによる泡量向上効果」技術資料.

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