ラウレス-9とは…成分効果と毒性を解説

乳化
ラウレス-9
[化粧品成分表示名称]
・ラウレス-9

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル

化学構造的に炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールに酸化エチレン(約9モル)をエーテル結合して得られるエーテルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンアルキルエーテルに分類される分子量582.8の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献3:2019)

一般的に化粧品によく使用されているポリオキシエチレンラウリルエーテルは、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗1)
ラウレス-2 2 親油性

親水性

ラウレス-3 3
ラウレス-4 4
ラウレス-7 7
ラウレス-9 9
ラウレス-16 15
ラウレス-21 21
ラウレス-23 23
ラウレス-25 25

∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため(文献4:1990)、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレンラウリルエーテルが配合されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、ヘアケア製品など様々な製品に使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献5:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献5:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献6:2015)

ラウレス-9の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
12.0 , 13.6 , 14.5 O/W型乳化 透明分散物 – 透明溶液

このように報告されており(文献7:-;文献8:-;文献9:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主にメイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、ヘアケア製品などに使用されています。

混合原料としてのラウレス-9

ラウレス-9は、他の成分と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ラウレス-9と以下の成分が併用されている場合は、混合系原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 チノビス GTC HLB
構成成分 (アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー、ラウリル硫酸Naラウレス-9フェノキシエタノールメチルパラベンエチルパラベンプロピルパラベンブチルパラベン、イソブチルパラベン
特徴・主な用途 透明度が非常に高く、伸展性の良い透明ジェルを形成する増粘剤

ラウレス-8、ラウレス-9およびラウレス-10は、麻酔性を有していることからネガティブリストに分類されており(文献4:1990)、化粧品に配合する場合は以下の配合制限があります。

種類 最大配合量(100g中)
すべての化粧品 2.0g
(ラウレス-8,ラウレス-9,ラウレス-10の合計)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウレス-9の配合製品数と配合量の調査結果(2010年)

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ラウレス-9の安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウレス-9の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1960年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [ヒト試験] 1992-1999年において3,186人の被検者に0.5%ラウレス-9を対象にパッチテストを実施し、パッチ除去72時間まで皮膚反応を評価したところ、29人(0.94%)にほとんど知覚できない紅斑、28人(0.88%)にわずかな刺激反応、30人(0.97%)に弱い陽性反応、8人(0.25%)に強い陽性反応がみられた(W. Uter,2000)
  • [ヒト試験] 6,202人の被検者に3%ラウレス-9を対象にパッチテストを実施し、パッチ除去72時間まで皮膚反応を評価したところ、111人(1.79%)にほとんど知覚できない紅斑、30人(0.48%)に刺激反応、109人(1.77%)に弱い陽性反応、21人(0.34%)に強い陽性反応がみられた(W. Uter,2000)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな皮膚刺激が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に5%ラウレス-9水溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激を示さなかった(Food and Drug Administration,-)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2012)によると、

  • [ヒト試験] 51人の被検者に10%,15%および20%ラウレス-9を含むクリーム製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間においてすべての濃度で皮膚反応が観察された。反応のほとんどは軽度であったが、20%濃度の3回目のパッチ以降およびすべての濃度の6回目のパッチ以降で中程度の反応がいくつかみられ、これらは皮膚疲労であると解釈された。チャレンジ期間においては10%および15%濃度でそれぞれ5人、20%濃度で9人に軽度の反応がみられたが、これらはいずれも感作反応ではなかった(DA Berberian,1965)
  • [動物試験] 7匹のモルモットに0.02%ラウレス-9水溶液を対象に皮内試験を実施したところ、いずれのモルモットも即時および遅延感作反応を示さなかった(DA Berberian,1965)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

– 個別事例 –

イタリアのジェノバ大学皮膚科およびサンマルティーノ病院アレルギー科の臨床データ(文献2:2002)によると、

  • [個別事例] ニッケルおよび香料にアレルギーを有する32歳の看護師(アトピー性皮膚炎ではない)は様々なブランドの使い捨て手袋が多く使用されている救急病棟で働いており、仕事に関連した手の湿疹が1年ほど続いていることから、天然ゴムラテックスアレルギーのパッチテストを行ったところ皮膚感作反応を示さず、またイタリアの標準シリーズでのパッチテストでは、明らかに無関係であるニッケルと香料に対する感作が確認されただけだった。彼女は無香料の保湿ローションを1日に数回使用しており、保湿ローションの使用を停止したところ、湿疹は3週間以内に治りました。この保湿ローションの個々の成分をパッチテストする中で3%ラウレス-9水溶液およびポリクオタニウム-7で陽性反応を示した。0.3%,3%および10%ラウレス-9水溶液および0.1%,0.5%および1%ポリクオタニウム-7水溶液を彼女および対照の20人にパッチテストしたところ、彼女は両方の物質のすべての希釈液に++の陽性反応を示したが、対照の20人は反応を示さなかった。彼女には無香料、ラウレス-9およびポリクオタニウム-7を含まないスキンケア製品が処方され、それ以来症状はなかった

と記載されています。

試験データは個別事例のみですが、1例の皮膚感作症例が報告されているため、アレルギーを有する場合はごくまれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

ラウレス-9は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2012)「Safety Assessment of Alkyl PEG Ethers as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(31)(5),169S-244S.
  2. R Gallo, et al(2002)「Allergic contact dermatitis from laureth‐9 and polyquaternium‐7 in a skin‐care product」Contact Dermatitis(45)(6),356-357.
  3. “Pubchem”(2019)「Polidocanol」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Polidocanol> 2019年11月17日アクセス.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  6. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  7. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX 709」技術資料.
  8. 三洋化成工業株式会社(-)「エマルミンNL-90」技術資料.
  9. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL BL-9EX」技術資料.

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