ラウレス-7とは…成分効果と毒性を解説


・ラウレス-7
[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル
化学構造的に炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールに酸化エチレン(約7モル)をエーテル結合して得られるエーテルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンアルキルエーテルに分類される分子量494.7の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)。
一般的に化粧品によく使用されているポリオキシエチレンラウリルエーテルは、
種類 | 平均酸化エチレン付加モル数 | HLB(∗1) |
---|---|---|
ラウレス-2 | 2 | 親油性
↑ ↓ 親水性 |
ラウレス-3 | 3 | |
ラウレス-4 | 4 | |
ラウレス-7 | 7 | |
ラウレス-9 | 9 | |
ラウレス-16 | 15 | |
ラウレス-21 | 21 | |
ラウレス-23 | 23 | |
ラウレス-25 | 25 |
∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。
これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため(文献3:1990)、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレンラウリルエーテルが配合されています。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的でスキンケア製品、メイクアップ製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、ヘアスタイリング製品などに使用されています。
乳化
乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。
乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献4:1990)。
そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、
水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献4:1990)。
身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。
また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、
HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献5:2015)。
ラウレス-7の特性は、
HLB | 作用 | 分散・溶解性 |
---|---|---|
11.0 , 12.4 , 12.5 | O/W型乳化 | 透明分散物 |
このように報告されており(文献6:-;文献7:-;文献8:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主にスキンケア製品、メイクアップ製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料などに使用されています。
混合原料としてのラウレス-7
ラウレス-7は、他の成分と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ラウレス-7と以下の成分が併用されている場合は、混合系原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | SEPIGEL 305 | HLB | – |
---|---|---|---|
構成成分 | ポリアクリルアミド、水添ポリイソブテン(∗2)、ラウレス-7 | ||
特徴 | 一般的な増粘剤や乳化剤に必要な分散・膨潤・中和・加熱といった処理を必要としないアクリル系増粘剤であり、ソフトでなめらか、伸びの良いクリーム調整剤として配合 |
∗2 水添ポリイソブテンは、「(C13,14)イソパラフィン」と表記されることもあります。水添ポリイソブテンと(C13,14)イソパラフィンは、表示名称が異なるだけで同様の成分であり、化粧品成分一覧に記載する際はどちらの表記でも記載できます。
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
ラウレス-7の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 1960年代からの使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
- [ヒト試験] 8名の被検者に10%C₁₂-₁₃AE₆.₅水溶液0.5mLを対象に皮膚刺激性試験を実施したところ、わずかな皮膚刺激反応を示した(Benke et al,1977)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、わずかな皮膚刺激が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
- [ヒト試験] 176名の被検者に2.5%10%C₁₂-₁₃AE₆.₅水溶液を対象に皮膚感作性試験を実施したところ、1名の被検者に陽性反応が観察されたが、残りの175名は皮膚反応を示さなかった(Benke et al,1977)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、1名を除いて皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
∗∗∗
ラウレス-7は界面活性剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:界面活性剤
∗∗∗
参考文献:
- 化学物質評価研究機構(2006)「ポリ(オキシエチレン)ラウリルエーテル」CERI 有害性評価書.
- “Pubchem”(2019)「Heptaethylene glycol monododecyl ether」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Heptaethylene-glycol-monododecyl-ether> 2019年11月19日アクセス.
- 田村 健夫, 他(1990)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
- 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
- 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
- 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX 707」技術資料.
- 日油株式会社(-)「ノニオンK-207」技術資料.
- 三洋化成工業株式会社(-)「エマルミンNL-70」技術資料.
- SEPPIC(-)「SEPIGEL 305」技術資料.