ラウレス-4とは…成分効果と毒性を解説



・ラウレス-4
[医薬部外品表示名]
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル
化学構造的に炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールに酸化エチレン(約4モル)をエーテル結合して得られるエーテルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンアルキルエーテルに分類される分子量230.39の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)。
一般的に化粧品によく使用されているポリオキシエチレンラウリルエーテルは、
種類 | 平均酸化エチレン付加モル数 | HLB(∗1) |
---|---|---|
ラウレス-2 | 2 | 親油性
↑ ↓ 親水性 |
ラウレス-3 | 3 | |
ラウレス-4 | 4 | |
ラウレス-7 | 7 | |
ラウレス-9 | 9 | |
ラウレス-16 | 15 | |
ラウレス-21 | 21 | |
ラウレス-23 | 23 | |
ラウレス-25 | 25 |
∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。
これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため(文献3:1990)、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレンラウリルエーテルが配合されています。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的でシャンプー製品、ヘアケア製品、ボディソープ製品、ボディケア製品、スキンケア製品、メイクアップ製品などに使用されています。
乳化
乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。
乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献4:1990)。
そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、
水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献4:1990)。
身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。
また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、
HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献5:2015)。
ラウレス-4の特性は、
HLB | 作用 | 分散・溶解性 |
---|---|---|
9.6 , 9.7 , 11.5 | O/W型乳化 | 透明分散物 |
このように報告されており(文献1:1983;文献7:-;文献8:-;文献9:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主にシャンプー製品、ヘアケア製品、ボディソープ製品、ボディケア製品、スキンケア製品、メイクアップ製品などに使用されています。
洗浄
洗浄に関しては、ラウレス-4自体はHLB9.7であることから洗浄性を有していませんが、HLB16.9であるラウレス-23とラウレス-4を60:40の比率で組み合わせると、洗浄に適したHLB13.8を実現できることが明らかにされており(文献1:1983)、ラウレス-4とラウレス-23が組み合わせてシャンプー製品やボディソープ製品に配合されている場合は、洗浄力増強・調整目的である可能性が考えられます。
複数の乳化剤を組み合わせて最適なHLBに調整して配合する理由は、多くの場合、1種類の乳化剤を配合するよりも、HLB値の異なる乳化剤を複数併用することで界面膜に並ぶ乳化剤密度が増し、その結果として乳化安定性が向上するためであり(文献6:2016)、こういった処方技術は様々な乳化系製品に汎用されています。
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1981年および2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
ラウレス-4の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 1960年代からの使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:20%濃度以下においてほとんどなし-最小限
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
- 光毒性:ほとんどなし
- 光感作性:ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
- [ヒト試験] 50名の被検者に100%ラウレス-4を72時間閉塞パッチ適用し、1週間の休息期間を設けた後に再び72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も試験期間中に皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった。また別の10名に48時間で同様の試験を実施したところ、いずれの被検者も試験期間中に皮膚刺激および皮膚感作反応はみられなかった(ICI Americas,1973)
- [ヒト試験] 10名の被検者に1.8%ラウレス-4を含むバスオイル1.3mLを対象に10日間連続適用したところ、いずれの被検者も皮膚刺激の兆候を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
- [ヒト試験] 25名の被検者に4%ラウレス-4を含むバスオイルを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も遅延型皮膚感作の兆候を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
- [動物試験] 3匹のウサギの両眼に100%,20%および10%ラウレス-4水溶液(pH4.5)を点眼し、片眼はすすぎ、もう片眼はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、100%濃度において非洗眼では中程度の眼刺激剤に、洗眼では最小限の眼刺激剤に分類された。10%および20%濃度においては非洗眼では最小限の眼刺激剤に、洗眼では非刺激剤にぞれぞれ分類された(ICI Americas,1973)
- [動物試験] 5匹のウサギの片眼に17%ラウレス-4を含むボディソープ製品をを点眼し、4秒後に眼をすすぎ、眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、眼刺激スコアは1および24時間後でそれぞれ33および5であり、それ以降は0であった(Food and Drug Research Laboratories,1981)
- [動物試験] 6匹のウサギの両眼に1.8%ラウレス-4を含むバスオイルをを点眼し、片眼はすすがず、3匹はもう片眼をすすぎ、眼刺激性を評価したところ、洗眼の有無にかかわらず、軽度の結膜炎が観察され、洗眼のうち2匹には一過性の虹彩炎がともなったが、これらすべての眼刺激は72時間までに消失した。眼刺激ス間後でそれぞれ33および5であり、それ以降は0であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、20%濃度以下において非刺激-最小限の眼刺激が報告されているため、20%濃度以下において眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。
光毒性および光感作性について
- [ヒト試験] 10名の被検者に3.12%ラウレス-4を含むエタノール溶液を6時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に処置部位および未処置部位にUVAライトを12-15分間照射した。照射から0,24および48時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も光毒性の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
- [ヒト試験] 10名の被検者に1.8%ラウレス-4を含むバスオイル対象に光感作性試験を伴うHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者も光毒性および光感作性の兆候を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。
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ラウレス-4は界面活性剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:界面活性剤
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参考文献:
- Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Laureths -4 and -23」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),1-15.
- “Pubchem”(2019)「2-(Dodecyloxy)ethanol」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/laureth-4> 2019年11月18日アクセス.
- 田村 健夫, 他(1990)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
- 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
- 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
- 太陽化学株式会社(2016)「HLB値の利用方法」, <https://www.taiyokagaku.com/lab/emulsion_learning/06/> 2019年11月18日アクセス.
- 花王株式会社(-)「エマルゲン 104P」技術資料.
- 日油株式会社(-)「ノニオンK-204」技術資料.
- 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL BL-4.2」技術資料.