ラウレス硫酸Naとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ラウレス硫酸Na
[化粧品成分表示名称]
・ラウレス硫酸Na

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム

化学構造的に炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールに酸化エチレンを付加し、末端ヒドロキシ基(水酸基)を硫酸化した、AES(Alkyl Ether Sulfate:アルキルエーテル硫酸エステル塩)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

アニオン界面活性剤であるラウレス硫酸Naの主な性質(∗1)は、

∗1 付加モル数の違いによる性質の違いは後述します。

分子量 cmc(mmol/L) クラフト点(℃) 生分解率(%)
376(付加モル数2)
420(付加モル数3)
3.0(付加モル数2)(50℃)
2.0(付加モル数3)(25℃)
-1(付加モル数2)
<0(付加モル数3)
100(付加モル数2)
73(付加モル数3)

このように報告されています(文献1:1983;文献3:1990;文献4:1990)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献5:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献3:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ラウレス硫酸Naは生分解性の点で易分解性であり、環境への影響は少ないことが明らかにされています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディ&ハンドソープ製品、洗顔料、クレンジング製品、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア製品、ヘアケア製品などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、アニオン界面活性剤は起泡性を有しており、中でもアルキル鎖が炭素数12-14の直鎖構造をもつ界面活性剤の起泡性が優れていることが知られています。

その中でも炭素数12の直鎖構造をもつラウリル硫酸Naは、純水中では最高の起泡性を示すことが知られていますが(文献6:2006)、耐硬水性が悪く、またクラフト点が高く、皮膚刺激性も懸念されることから、現在はラウリル硫酸Naと比較して低温での溶解性が良好で耐硬水性が高く、さらに皮膚刺激性も低いラウレス硫酸Naの使用が一般的になっています。

ラウレス硫酸塩の性質および機能は、オキシエチレンの付加モル数により性質が異なりますが、以下の表のように、

モル数 起泡力(c㎥)
濃度:0.1g/L 温度:70℃
洗浄力(白度)
濃度:0.5g/L 温度:40℃
泡量 泡質 溶解性 刺激性
1 150 51







2 215 45
3 240 26

このように報告されており(文献7:2006;文献8:2012)、モル数が増えると起泡力が増す一方で洗浄力、泡量、泡質は低下していくことが明らかにされています(∗2)(∗3)

∗2 付加モル数と皮膚刺激性の関係は後述します。
∗3 洗浄力についてはモル数1の時が最大であり、それ以降はモル数が増加するごとに洗浄力は低下します。

1990年に資生堂によって報告された陰イオン界面活性剤の人工皮脂に対する洗浄性比較検証によると、

各油脂を混合した人工皮脂にカーボンブラックを加えた汚垢(おこう)を用いて、陰イオン界面活性剤であるラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNaそれぞれ10mM濃度の人工皮脂に対する洗浄力を40℃および2分間の洗浄で評価したところ、以下のグラフのように、

陰イオン界面活性剤の人工皮脂洗浄性比較

ラウレス硫酸Naは人工皮脂に対して他の陰イオン界面活性剤と同等の洗浄力をもつことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1990)、ラウレス硫酸Naは皮脂に対する洗浄力が認められています。

また、シャンプーに用いられる陰イオン界面活性剤(濃度12%)を実際的な洗髪試験によって試験者の評価を100分率で表示した結果として、以下の表のように、

陰イオン界面活性剤 泡立ち 洗浄性 ツヤ くし通り
(ぬれた髪)
ラウリル硫酸TEA 100 0 0 91 9 0 55 27 18 59 33 8
ラウレス硫酸Na 61 30 9 92 4 4 61 39 0 74 26 0
ラウロイルサルコシンNa 80 7 13 80 20 0 40 40 20 40 60 0
ココイルメチルタウリンNa 83 17 0 100 0 0 58 33 9 67 25 8
ヤシ油脂肪酸TEA 92 0 8 66 25 9 25 50 25 50 17 33

このように報告されており(文献12:1969)、ラウレス硫酸Naは他の陰イオン界面活性剤と比較して泡立ちはやや劣るものの、洗浄力、ツヤおよびぬれた毛髪の櫛通り性に優れていることが明らかにされています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2007-2008年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラウレス硫酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2007-2008年)

スポンサーリンク

ラウレス硫酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウレス硫酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 60年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:18%濃度以下においてほとんどなし-軽度
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性(眼をすすがない場合):濃度依存的に増す
  • 眼刺激性(眼をすすぐ場合):一過性の軽度の眼刺激が起こる可能性あり
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし-ごくまれに起こる可能性あり
  • 皮膚浸透性:ほとんどなし
  • タンパク変性:低い
  • キューティクル剥離性:弱い

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に18%ラウレス硫酸Na水溶液を24時間閉塞パッチ適用したところ、3人の被検者は軽度の皮膚刺激を示し、残りの17人の被検者は皮膚反応を示さなかった(Avon,1972)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に18%ラウレス硫酸Na水溶液を24時間閉塞パッチ適用したところ、11人の被検者は軽度の皮膚刺激を示し、残りの9人の被検者は皮膚反応を示さなかった(Avon,1972)
  • [ヒト試験] 196人の被検者に0.5%ラウレス硫酸Naを含むシャンプーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激を示したが、皮膚感作は示さなかった(Hill Top Research,1973)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に0.7%ラウレス硫酸Naを含む製剤を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、累積刺激スコア(最大819)を評価したところ、累積刺激スコアは697であり、明らかに重度の累積刺激性であったが、刺激の詳細は報告されていない(Hill Top Research,1973)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に2.5%ラウリル硫酸Na水溶液の24時間閉塞パッチで前処理したのちに14.3%ラウレス硫酸Naを含むバブルバス製剤を48時間閉塞パッチにて5回適用し、10日間の休息後に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去後に皮膚反応を観察したところ、この試験物質は接触性皮膚感作の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

資生堂の安全性試験データ(文献2:1989)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットに代表的な陰イオン界面活性剤100mMを3日間連続でそれぞれ0.3mL塗布し、1日ごとに0-4の評点で評価したところ、以下の表のように、
    界面活性剤の種類 界面活性剤 累積刺激スコア
    AS ラウリル硫酸Na 2.1
    AES ラウレス硫酸Na 0.8
    AG ラウロイルグルタミン酸Na 0.3
    AMT ココイルメチルタウリンNa 0.2

    ラウリル硫酸Naは中程度の累積刺激性が観察されたが、ラウレス硫酸Naはわずか-軽度であり、ラウリル硫酸Naよりも累積刺激性が有意に低いことがわかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、18%濃度以下においてごくまれに軽度の皮膚刺激性の報告があるものの、多くは皮膚刺激性なしと報告されているため、18%濃度以下において、軽度の皮膚刺激が起こる可能性がありますが、一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

また、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚刺激性のメカニズムに関しては、ラウリルアルコールなど高級アルコールに対するエチレンオキシドの付加反応においては、付加モル数が少ない時は未反応アルコールが残存することが明らかにされており(文献11:1960)、付加モル数2で25%、付加モル数2.5では18%の高級アルコールが残存すると推測されています。

つまり、ラウレス硫酸Na(付加モル数2)の場合、ラウリル硫酸塩(25%)とラウレス硫酸塩(75%)の混合物であり、このような背景から付加モル数が低くなるほどラウレス硫酸Naの皮膚刺激リスクは高まると考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

資生堂の安全性試験データ(文献2:1989)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する29人の患者に代表的な各界面活性剤水溶液それぞれ50mMおよび100mMを対象に48時間閉塞パッチを適用し、パッチ除去24時間後に皮膚刺激性を0,0.5,1,2,3,4の6段階で評価したところ、以下の表のように、
    界面活性剤の種類 界面活性剤 陽性数(29人中) 平均刺激スコア
    100mM 50mM 100mM 50mM
    AS ラウリル硫酸Na 28 1.66
    AES ラウレス硫酸Na 16 13 0.76 0.63
    AG ラウロイルグルタミン酸Na 11 12 0.60 0.63
    AMT ココイルメチルタウリンNa 13 12 0.64 0.62

    ラウリル硫酸Naは刺激反応を起こした患者が多く、また刺激スコアも比較的高かったが、ラウレス硫酸Naは刺激反応人数はラウリル硫酸Naの半分ほどであり、また平均刺激スコアも0.63-0.76(かすかな紅斑)と低刺激であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ラウレス硫酸Naは非刺激-わずかな皮膚刺激が報告されているため、皮膚炎を有する場合において、皮膚刺激性は非刺激またはわずかな刺激性が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に1.3%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1日目に眼刺激スコア1.3を示したが、2日目以降は0であった。この試験物質は一過性の最小限の眼刺激性を示した(Cosumer Product Testing Co,1976)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に1.3%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼は30秒すすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激性はすべて0であり、この試験物質は刺激性を示さなかった(Cosumer Product Testing Co,1976)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1.5%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,および3日目にそれぞれ21,9および1.3であり、4日目以降は0であった。この試験物質は刺激性を示さなかった(Avon,1971)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1.75%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,3,4および7日目にそれぞれ33,24,18,15および8であり、この試験物質は中程度の眼刺激性を示した(Avon,1978)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1.75%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,3,4および7日目にそれぞれ33,24,18,15および8であり、この試験物質は中程度の眼刺激性を示した(Avon,1978)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に10%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,3,4および7日目にそれぞれ32,30,21,20および10であり、この試験物質は中程度の眼刺激性を示した(Avon,1975)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に25%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激スコアは1,2,3,4および7日目にそれぞれ31.2,30.5,29.7,26.3および17.7であり、この試験物質は中程度の眼刺激性を示した(Cosumer Product Testing Co,1977)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に28%ラウレス硫酸Na溶液0.1mLを滴下し、眼を30秒すすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼刺激スコアは1,2および3日目にそれぞれ2,0.7および0であり、この試験物質は一過性の軽度の眼刺激性を示した(Bio-Toxicology Labs,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼をすすがない場合、濃度依存的に眼刺激性が報告されており、また眼をすすぐ場合では共通して一過性の軽度の眼刺激性が報告されているため、一般的に眼をすすがない場合は濃度依存的に眼刺激性が増し、眼をすすぐ場合は一過性の軽度の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

光感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 103人の被検者に0.07%ラウレス硫酸Naを含むバブルバス製剤を対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、103人のうち4人は弱い非小胞性反応を示したが、他の被検者はすべて陰性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 56人の被検者に0.07%ラウレス硫酸Naを含むバブルバス製剤を対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、56人のうち2人に軽度の皮膚反応を示したが、他のすべての被検者は影響がなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ごくまれに感作反応を示す例もみられますが、大部分の被検者において光感作性なしと報告されているため、ごくまれに光感作反応が起こる場合がありますが、一般的に光感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚吸収および体内挙動(代謝、排泄)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] ラットの皮膚に0.2%-2.0%ラウレス硫酸Na溶液を塗布し、24時間ごとに2日間にわたって呼気CO₂、尿および糞便を収集し、また皮膚の試験部位を切断し、ラウレス硫酸Naの皮膚浸透性および排泄を評価したところ、すすぎ中に92.1 ± 10.4%、皮膚には5.8 ± 0.9%、パッチには1.2 ± 0.2%、2日間の尿中には0.39 ± 0.12μg/c㎡であり、皮膚浸透が1%未満であることを示唆した。この結果は、ラウレス硫酸Naのエトキシル化(ポリオキシエチレンの付加)により生物活性が低下することに起因していると考えられた(J. G. Black et al,1979)
  • [動物試験] ラットにラウレス硫酸Na溶液(濃度不明)を経口挿管または腹腔内または皮下注射により投与し、2日間の排泄率を評価したところ、ラットに挿管または非経口注射を行った場合、尿には試験物質が高い割合で含まれており、糞便および呼気には少量であった(J. G. Black et al,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚浸透性は1%未満と報告されているため、一般的に皮膚浸透性はほとんどないと考えられます。

タンパク質変性について

界面活性剤が皮膚刺激性を発現するためには、角層バリアを障害する機能として角質タンパク変性能を有する必要があると考えられています。

1989年に資生堂によって報告された代表的な陰イオン界面活性剤のタンパク変性への影響検証によると、

代表的な陰イオン界面活性剤としてラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNaの10mM濃度におけるタンパク変成作用を資生堂が開発した簡易で制度の高い水系GPCを用いて測定したところ、以下のグラフのように、

代表的な陰イオン界面活性剤のタンパク変性への影響

ラウレス硫酸Naは、タンパク変性作用の影響が低いことがわかった。

また、ASにオキシエチレンを付加したAESならびにアミド基を導入したAMTが低い変性率を示したことから、オキシエチレンの付加あるいはアミド基の導入がタンパク質との相互作用を弱める働きがあることが示唆された。

次に、タンパク質への吸着性を検討するために各界面活性剤水溶液20mLにケラチンパウダーおよびハイドパウダー(∗4)をそれぞれ0.4gおよび0.2g添加し、各界面活性剤のクラフト点以上である40℃にて5時間培養し、吸着量を測定したところ、以下のグラフのように、

∗4 ケラチンパウダーとは、毛髪に類似したタンパク質配合パウダーであり、ハイドパウダーは頭皮に類似したタンパク質配合パウダーです。

ケラチンパウダーおよびハイドパウダーに対する陰イオン界面活性剤のタンパク質吸着性比較

硫酸系のASおよびAESは、強い吸着性がみられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:1989)、ラウレス硫酸Naは他の陰イオン界面活性剤と比較して最もタンパク変性への影響が低いことが認められている一方、毛髪および頭皮タンパク質への吸着性が認められています。

ただし、コカミドプロピルベタインなどアミド基を有した両性界面活性剤を特定の比率で併用することで、陰イオン界面活性剤のタンパク質への吸着量が最小となり、毛髪および頭皮への刺激が緩和されることが知られており(文献10:2005)、両性界面活性剤が併用されている場合は、このようなタンパク質の吸着量を低下させる技術が採用されている可能性があると考えられます。

キューティクルへの影響について

毛髪の表面(一番外側)はキューティクルと呼ばれ、毛髪を保護する働きをしており、またキューティクルは層状に存在しており、以下の表のように、

キューティクルの枚数(層数) 髪質
2 – 3 柔らかい
5 – 6 普通
8 – 10 硬い

キューティクルの枚数(層数)が髪質に直接反映されます。

次に、以下の画像をみてもらうとわかるように、

キューティクルにおける健常時とダメージ時の違い

健常時にはキューティクルが閉塞していて手触りもなめらかですが、損傷・ダメージを受けるとキューティクルが開き、手触りはギシギシ・パサパサといったものとなり、外観の美しさは損なわれることが知られています。

こういった背景から、陰イオン界面活性剤をシャンプー基剤として使用する場合、頭皮に対する影響としてキューティクルの剥離性を考慮する必要があると考えられます。

1989年に資生堂によって報告された代表的な陰イオン界面活性剤のキューティクルへの影響検証によると、

代表的な陰イオン界面活性剤としてラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNaの100mM濃度水溶液250mLに健常な男性被検者(30歳)の毛髪を処理し、損傷させた。

この被検者のキューティクル枚数は7-8枚であり、損傷処理後1および3時間後のキューティクル枚数を評価したところ、以下のグラフのように、

陰イオン界面活性剤処理によるキューティクル枚数への影響

ラウリル硫酸Naはキューティクルの剥離性が強いが、ラウレス硫酸NaはAGやAMTといったアミノ酸系界面活性剤ほどではないものの、比較的剥離性が弱いことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:1989)、ラウレス硫酸Naはキューティクル剥離性が弱いことが認められています。

∗∗∗

ラウレス硫酸Naは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Laureth Sulfate and Ammonium Laureth Sulfate」Journal of the American College of Toxicology(2)(5),1-34.
  2. 宮澤 清, 他(1989)「頭皮・頭髪用洗浄剤としてのアニオン界面活性剤の研究」油化学(38)(4),297-305.
  3. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  4. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤の基本的物性」油脂化学便覧 改訂3版,476-493.
  5. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  6. 日光ケミカルズ(2006)「アニオン界面活性剤の性質」新化粧品原料ハンドブックⅠ,167-172.
  7. 日光ケミカルズ(2006)「アルキルエーテル硫酸エステル塩」新化粧品原料ハンドブックⅠ,191-193.
  8. 花王株式会社(2012)「エマール HP125」技術資料.
  9. 宮澤 清, 他(1990)「頭皮・頭髪用洗浄剤(シャンプー) としてのN-アシル-N-メチルタウリン(AMT)の開発と工業化」油化学(39)(11),925-930.
  10. 永井 邦夫(2005)「低刺激性シャンプー基剤」三洋化成ニュース(430).
  11. 長瀬 邦彦, 他(1960)「ラウリルアルコール, ノニルフェノールに対する酸化エチレン付加物の重合度分布」工業化学雑誌(63)(4),588-592.
  12. 伊藤 知男, 他(1969)「シャンプー」油化学(18)(Supplement),26-35.

スポンサーリンク

TOPへ