ラウレス硫酸アンモニウムとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ラウレス硫酸アンモニウム
[化粧品成分表示名称]
・ラウレス硫酸アンモニウム

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム液、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液

化学構造的に炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコールにオキシエチレンを付加し、末端ヒドロキシ基(水酸基)を硫酸化したアンモニウム塩であり、AES(Alkyl Ether Sulfate:アルキルエーテル硫酸エステル塩)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

アニオン界面活性剤であるラウレス硫酸アンモニウムの主な性質は(∗1)

∗1 付加モル数の違いによる性質の違いは後述します。

分子量 cmc(mmol/L)(∗2) クラフト点(℃) 生分解率(%)(∗3)
(付加モル数1)
328.4(付加モル数2)
(付加モル数3)
3.2(付加モル数3) 93以上(付加モル数3)

∗2 cmcは、102mg/Lと記載されていたものをmmol/Lで算出して掲載しています。
∗3 ラウレス硫酸アンモニウムに限定した生分解性は見当たらなかったため、AESとしての数値を記載しています。

このように報告されています(文献1:1983;文献2:2011;文献3:-)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献4:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献5:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ラウレス硫酸アンモニウムは生分解性の点で易分解性であり、環境への影響は少ないことが明らかにされています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、アニオン界面活性剤は起泡性を有しており、中でもアルキル鎖が炭素数12の直鎖構造をもつラウリル硫酸塩の洗浄力および起泡力が優れていることが知られていますが(文献6:2006)、耐硬水性が悪く、またクラフト点が高く、皮膚刺激性も懸念されることから、現在はラウリル硫酸塩と比較して低温での溶解性が良好で耐硬水性が高く、さらに皮膚刺激性も低いラウレス硫酸塩の使用が一般的になっています。

ラウレス硫酸塩の性質および機能は、オキシエチレンの付加モル数により性質が異なりますが、以下の表のように、

モル数 起泡力(c㎥)
濃度:0.1g/L 温度:70℃
洗浄力(白度)
濃度:0.5g/L 温度:40℃
泡量 泡質 溶解性 刺激性
1 150 51







2 215 45
3 240 26

このように報告されており(文献7:2006;文献8:2012)、モル数が増えると起泡力が増す一方で洗浄力、泡量、泡質は低下していくことが明らかにされています(∗4)(∗5)

∗4 付加モル数と皮膚刺激性の関係は後述します。
∗5 洗浄力についてはモル数1の時が最大であり、それ以降はモル数が増加するごとに洗浄力は低下します。

付加モル数1のラウレス硫酸塩は、洗浄力が高く、シャンプーの処方としては少量で起泡性、泡の増量および泡質の改善が可能になる一方、溶解性が低く、皮膚刺激性が高くなるため、ナトリウム塩と比較して脱脂力や洗浄力は劣るものの溶解性の向上や軽い泡が生成でき、なおかつ皮膚刺激性が軽減されるアンモニウム塩での使用が増えています。

付加モル数1の場合、医薬部外品名称では「ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液」となり、付加モル数2または3の場合は「ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム液」と名称が分けられているので、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液が配合されている場合は、泡にこだわったコンセプト製品である可能性が考えられます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2007-2008年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラウレス硫酸アンモニウムの配合製品数と配合量の調査結果(2007-2008年)

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ラウレス硫酸アンモニウムの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウレス硫酸アンモニウムの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 60年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-中程度の刺激を引き起こす可能性あり
  • 眼刺激性(眼をすすがない場合):濃度依存的に軽度-重度
  • 眼刺激性(眼をすすぐ場合):一過性の軽度の眼刺激が起こる可能性あり
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし-ごくまれに最小限の感作性を引き起こす可能性あり
  • 光毒性:ほとんどなし

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、長時間皮膚に塗布する製品および状況下においては、安全性に問題があると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 189人の被検者に0.29%ラウレス硫酸アンモニウムを含むバブルバス水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において約60人(約⅓)の被検者に軽度-中程度の刺激がみられた。チャレンジパッチでは刺激反応を最小限にするために濃度を下げて0.15%水溶液で適用したところ、9人の被検者に弱感作反応がみられた。この結果からこの試験物質は最小限の接触性皮膚炎を誘発する可能性があると結論付けられた(Hill Top Research,1977)
  • [ヒト試験] 86人の被検者に0.115%ラウレス硫酸アンモニウムを含むバブルバス水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において軽度-中程度の刺激性がみられたが、皮膚感作の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 94人の被検者に0.23%ラウレス硫酸アンモニウムを含むバブルバス水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の刺激性接触性皮膚炎の可能性を示した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に0.28%ラウレス硫酸アンモニウムを含むバブルバス水溶液を対象に24時間単回皮膚刺激性試験を閉塞パッチにて実施したところ、20人のうち11人は皮膚への影響はみられなかった。20人のうち4人は淡い均一の紅斑が観察され、別の4人は適用範囲を覆う明瞭なピンク色の均一な紅斑および浮腫が観察され、残りの1人は丘疹をともなう著しく赤い紅斑を示した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 68人の被検者に0.11%ラウレス硫酸アンモニウムを含むバブルバス水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において68人のうち11人(16%)は中程度の刺激性を示したが、いずれの被検者も皮膚感作の兆候は示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.11%ラウレス硫酸アンモニウムを含むバブルバス製剤を対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、この試験物質は紅斑および丘疹を引き起こしたことから、軽度-中程度の累積刺激性を有する可能性が示唆された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激の報告が多いものの、軽度-中程度の皮膚刺激の報告も少なくないため、皮膚刺激性は非刺激-中程度の刺激が起こる可能性があると考えられます。

また、まれに最小限の皮膚感作の報告されているため、まれに最小限の皮膚感作が起こる可能性があると考えられます。

皮膚刺激性のメカニズムに関しては、ラウリルアルコールなど高級アルコールに対するエチレンオキシドの付加反応においては、付加モル数が少ない時は未反応アルコールが残存することが明らかにされており(文献9:1960)、付加モル数2で25%、付加モル数2.5では18%の高級アルコールが残存すると推測されています。

つまり、ラウレス硫酸アンモニウム(付加モル数2)の場合、ラウリル硫酸塩(25%)とラウレス硫酸塩(75%)の混合物であり、このような背景から付加モル数が低くなるほどラウレス硫酸アンモニウムの皮膚刺激リスクは高まると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に7.5%ラウレス硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1,2,3,4および7日目の眼刺激スコアはそれぞれ15.7,11.8,4.7,1.2および0を示し、この試験物質は一過性の軽度の眼刺激性であった(Consumer Product Testing Co,1976)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に7.5%ラウレス硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1,2,3,4および7日目の眼刺激スコアはそれぞれ13.3,13.6,7.6,10および10.1を示し、この試験物質は軽度の眼刺激性であった(Consumer Product Testing Co,1976)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に7.5%ラウレス硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1,2,3,4および7日目の眼刺激スコアはそれぞれ15.5,8.5,7.3,2.1および0を示し、この試験物質は軽度の眼刺激性であった(Consumer Product Testing Co,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に15%ラウレス硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1,2,3,4および7日目の眼刺激スコアはそれぞれ32,25,33,22および16を示し、この試験物質は重度の眼刺激性であった(Avon,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に25%ラウレス硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1,2,3および7日目の眼刺激スコアはそれぞれ25.1,23.3,24.7および21.5を示し、この試験物質は重度の眼刺激性であった(Food and Drug Research Labs,1976)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に26%ラウレス硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、2秒間眼をすすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1,2,3,4および7日目の眼刺激スコアはそれぞれ2,1.3,1.3,0.6および0.3を示し、この試験物質はわずかな角膜刺激を示した(Hazelton Labs,1973)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に26%ラウレス硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、4秒間眼をすすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1,2,3,4および7日目の眼刺激スコアはそれぞれ3.3,2,0.6,0.6および0を示し、この試験物質は一過性のわずかな刺激を示した(Hazelton Labs,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼をすすがない場合、濃度依存的に軽度-重度の眼刺激性が報告されており、また眼をすすぐ場合では共通して一過性の軽度の眼刺激性が報告されているため、一般的に眼をすすがない場合は濃度依存的に軽度-重度の眼刺激性が起こる可能性があり、眼をすすぐ場合は一過性の軽度の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.11%ラウレス硫酸アンモニウムを含むバブルバス0.5mLを対象に23時間閉塞パッチを5日間連続で適用し、3日目からパッチ除去後に試験部位に30分間直接日光を照射したところ、6人に中程度の一過性の刺激反応がみられたが、この刺激反応は日光を照射していない部位でもみられたため、この刺激反応は光毒性によるものではないと判断された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されているため、光毒性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ラウレス硫酸アンモニウムは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Laureth Sulfate and Ammonium Laureth Sulfate」Journal of the American College of Toxicology(2)(5),1-34.
  2. 日本石鹸洗剤工業会(2011)「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)のヒト健康影響と環境影響に関するリスク評価結果について」, <https://jsda.org/w/01_katud/jsda/jsda_AES_201112.pdf> 2019年8月21日アクセス.
  3. Stepan(-)「STEOL CA-330」技術資料.
  4. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  5. 本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  6. 日光ケミカルズ(2006)「アニオン界面活性剤の性質」新化粧品原料ハンドブックⅠ,167-172.
  7. 日光ケミカルズ(2006)「アルキルエーテル硫酸エステル塩」新化粧品原料ハンドブックⅠ,191-193.
  8. 花王株式会社(2012)「エマール HP125」技術資料.
  9. 長瀬 邦彦, 他(1960)「ラウリルアルコール, ノニルフェノールに対する酸化エチレン付加物の重合度分布」工業化学雑誌(63)(4),588-592.

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