ラウリン酸ポリグリセリル-2とは…成分効果と毒性を解説


・ラウリン酸ポリグリセリル-2
[医薬部外品表示名称]
・グリセリン脂肪酸エステル
化学構造的に炭素数12の高級脂肪酸であるラウリン酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、4個の水酸基をもつジグリセリン(∗2)を親水基としたモノエステル(∗3)であり、多価アルコールエステル型のポリグリセリン脂肪酸エステルに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献1:2016)。
∗1 多価アルコールとは、2個以上のヒドロキシ基(水酸基:-OH)をもつアルコールを指し、水酸基の影響で非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。
∗2 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ジグリセリン(ポリグリセリル-2)とは2個のグリセリンがまとまって二量体(平均重合度2)として機能する重合体であり、ギリシャ語で「2」を「ジ(di)」ということから、ジグリセリンと呼ばれます。
∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、シャンプー製品、クレンジング製品、ボディソープ製品、メイクアップ製品、ボディ&ハンドケア製品などに使用されています。
乳化
乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。
乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献2:1990)。
そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、
水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献2:1990)。
身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。
また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、
HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献3:2015)。
ラウリン酸ポリグリセリル-2の特性は、
HLB | 作用 | 分散・溶解性 |
---|---|---|
8.5 | 乳化 | 安定分散 |
このように報告されており(文献4:2018)、乳化剤(∗4)として、主にシャンプー製品、クレンジング製品、ボディソープ製品、メイクアップ製品、ボディケア製品、ハンドケア製品などに使用されています。
∗4 乳化作用については、HLBからは親水性であると考えられますが、親水性または親油性といった記載がみあたらないため、わかり次第追補します。
一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品用乳化剤として汎用されていることから、安全性の高さが認められており、疎水基である脂肪酸の種類や親水基であるグリセリンの重合度を変えることで様々なHLBのものが利用できることから、化粧品用乳化剤としても汎用されています。
混合乳化剤としてのラウリン酸ポリグリセリル-2
ラウリン酸ポリグリセリル-2は、他の乳化剤と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ラウリン酸ポリグリセリル-2と以下の成分が併用されている場合は、混合系乳化剤として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | NIKKOL ニコガード DL | ||
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構成成分 | カプリン酸グリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル-2、ラウリン酸ポリグリセリル-10 | ||
特徴 | 食添収載のグリセリン脂肪酸エステルで構成された、広い抗菌スペクトルをもつ配合乳化剤 |
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
ラウリン酸ポリグリセリル-2の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
食品添加物および化粧品など20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
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ラウリン酸ポリグリセリル-2は界面活性剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:界面活性剤
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参考文献:
- Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics」Final Report.
- 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
- 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
- 太陽化学株式会社(2018)「サンソフト Q-12D-C」技術資料.