ラウリン酸ポリグリセリル-10とは…成分効果と毒性を解説

乳化 洗浄 起泡
ラウリン酸ポリグリセリル-10
[化粧品成分表示名称]
・ラウリン酸ポリグリセリル-10

[医薬部外品表示名称]
・モノラウリン酸ポリグリセリル

化学構造的に炭素数12の高級脂肪酸であるラウリン酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、12個の水酸基をもつポリグリセリン-10(∗2)を親水基としたモノエステル(∗3)であり、多価アルコールエステル型のポリグリセリン脂肪酸エステルに分類される分子量941.1の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。

∗2 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ポリグリセリン-10とは10個のグリセリンがまとまって10量体(平均重合度10)として機能する重合体です。またギリシャ語で「10」を「デカ(deca)」といい、デカグリセリンとも呼ばれます。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

ポリグリセリン脂肪酸エステルの中で、炭素数8-12の脂肪酸は洗浄性および起泡性を有しますが(文献7:2006)、3%濃度未満では起泡性はほとんどなく、3%濃度以上で起泡性が発揮されることが報告されており、3%濃度以上で主に洗浄および起泡剤・助剤として用いられ、また2%濃度以下においては乳化剤として用いられています(文献8:1998;文献9:2008)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、クレンジング製品、洗顔料、スキンケア化粧品、ハンドケア製品、シート&マスク製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

ラウリン酸ポリグリセリル-10の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
14.7 , 15.3 , 15.5 , 15.7 , 16.1 , 17.1 O/W型乳化 , 可溶化 透明溶液

このように報告されており(文献10:-;文献11:-;文献12:-;文献13:-;文献14:-;文献15:-;文献16:-)、2%濃度以上(好ましくは5%以上)の配合でO/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主にシャンプー製品、クレンジング製品、洗顔フォーム、スキンケア化粧品、シート&マスク製品などに使用されています。

一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品用乳化剤として汎用されていることから、安全性の高さが認められており、疎水基である脂肪酸の種類や親水基であるグリセリンの重合度を変えることで様々なHLBのものが利用できることから、化粧品用乳化剤としても汎用されています。

また、O/W型乳化能およびその安定性において、中性域では同HLBのショ糖脂肪酸エステルと比較すると同等もしくは若干劣るものの、酸性が強くなるにつれてポリグリセリン脂肪酸エステルのほうが優れ、弱酸性域(pH3.5-5付近)ではポリグリセリン脂肪酸エステルに特異的であることが知られています(文献5:1986)

さらに、O/W型のポリグリセリン脂肪酸エステルは、多価アルコールとの混合系で複合体を形成し、そこに多量の油相を分散・保持した自己乳化ゲルを得られることが明らかにされており(文献6:1999)、この技術は透明クレンジングジェルなどに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、低刺激であり、洗浄性および起泡性を有しているものの、3%濃度未満では泡立ちの効果は小さく、一般的に3%濃度以上(好ましくは5%濃度以上)の配合で起泡性を発揮することが知られており(文献9:2008)、一般的には起泡力、泡のクリーミーさ、泡の持続性を増強する目的で陰イオン界面活性剤と組み合わせて配合されます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウリン酸ポリグリセリル-10の配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

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ラウリン酸ポリグリセリル-10の安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウリン酸ポリグリセリル-10の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1980年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [ヒト試験] 35人の被検者に5%ラウリン酸ポリグリセリル-10水溶液0.03gを対象に24時間閉塞パッチ試験を実施し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(Japan Hair Science Association,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に100%ラウリン酸ポリグリセリル-10(0.1mL)を適用し、眼はすすがず、OECD405テストガイドラインに基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、1時間で眼刺激スコアは10.7(中程度の結膜刺激)が観察されたが、24時間で結膜刺激は最小限であり、48時間で完全に消失した。この試験物質は最小限の眼刺激剤に分類された(SafePharm Laboratories,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、最小限の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 個別事例 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [個別事例] 3ヶ月以上にわたってかゆみをともなう再発性紅斑を有する80歳の女性に使用している化粧品を対象に48時間閉塞パッチ試験を実施したところ、++の陽性反応を示したため、使用している化粧品の個々の成分を対象にパッチ試験を実施したところ、0.5%ラウリン酸ポリグリセリル-10水溶液に+陽性反応を示した。濃度を変えてみたところ、+陽性反応は0.05%-1%のすべての濃度で観察され、また0.5%-1%のラウリン酸ポリグリセリル-4およびラウリン酸ポリグリセリル-6でも陽性反応を示した。0.1%-1%のミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10およびオレイン酸ポリグリセリル-10では陰性であった(K Washizaki et al,2008)

と記載されています。

医薬部外品原料規格2006に収載されており、食品添加物および化粧品など1980年代からの使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ラウリン酸ポリグリセリル-10は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. “Pubchem”(2019)「2,3-Dihydroxypropyl 2,2,3,3,4,4,5,5,6-nonakis(2,3-dihydroxypropyl)dodecanoate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/90471646> 2019年10月30日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 松下 和男, 他(1986)「ポリグリセリン脂肪酸エステルの現状」油化学(36)(2),71-79.
  6. 宮本敦之, 他(1999)「ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた透明クレンジングジェルについて」Fragrance Journal(27)(9),77-82.
  7. 日光ケミカルズ(2006)「ポリグリセリン脂肪酸エステル」新化粧品原料ハンドブックⅠ,235-236.
  8. 太陽化学株式会社(1998)「身体洗浄剤組成物」特開平10-218759.
  9. 株式会社資生堂(2008)「洗浄料」特開2008-208050.
  10. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL DECAGLYN 1-L」技術資料.
  11. 坂本薬品工業株式会社(-)「SYグリスター ML-750」技術資料.
  12. 坂本薬品工業株式会社(-)「Sフェイス 10G-L」技術資料.
  13. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト M-12J」技術資料.
  14. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト Q-121Y-C」技術資料.
  15. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト Q-12S-C」技術資料.
  16. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト Q-12Y-C」技術資料.

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