ラウリル硫酸Naとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡 乳化
ラウリル硫酸Na
[化粧品成分表示名称]
・ラウリル硫酸Na

[医薬部外品表示名称]
・ラウリル硫酸ナトリウム

化学構造的に疎水基(親油基)に炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコール(∗1)、親水基に硫酸エステルのナトリウム塩をもった、AS(Alkyl Sulfate:アルキル硫酸エステル塩)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です(∗2)

∗1 ラウリルアルコールは別名として1-ドデカノールまたはドデシルアルコールとも呼ばれます。

∗2 ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate:SLS)は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry:国際純正・応用化学連合)によるIUPAC命名法では「ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate:SDS)」と呼ばれますが、これらは同じ物質です。

アニオン界面活性剤であるラウリル硫酸Naの主な性質は、

分子量 cmc(mmol/L) クラフト点(℃) 生分解率(%)
288.38 8.0(25℃) 10 78(6日)
100(15日)

このように報告されています(文献5:1990;文献6:1990)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献8:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献5:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ラウリル硫酸Naは、生分解性の点で易分解性であり、環境への影響はほとんどないことが明らかにされています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、洗顔料、クレンジング製品、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア製品、ヘアケア製品などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、アニオン界面活性剤は優れた起泡性を有しており、中でもアルキル鎖が炭素数12-14の直鎖構造をもつ界面活性剤の起泡性が優れていることが知られています。

その中でも炭素数12の直鎖構造をもつラウリル硫酸Naは、純水中では最高の起泡性を示すことが知られていますが(文献7:2006)、耐硬水性が悪く、クラフト点も高いことから、現在はラウリル硫酸Naの代替として分子内にPOE(ポリオキシエチレン)鎖を導入したラウレス硫酸NaなどのPOEアルキルエーテル硫酸塩の使用が増えています。

また、油の乳化性に劣ることから、一般的に油の乳化力を補強する目的でノニオン界面活性剤(非イオン界面活性剤)が併用されることが多いです。

1990年に資生堂によって報告された陰イオン界面活性剤の人工皮脂に対する洗浄性比較検証によると、

各油脂を混合した人工皮脂にカーボンブラックを加えた汚垢(おこう)を用いて、陰イオン界面活性剤であるラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNaそれぞれ10mM濃度の人工皮脂に対する洗浄力を40℃および2分間の洗浄で評価したところ、以下のグラフのように、

陰イオン界面活性剤の人工皮脂洗浄性比較

ラウリル硫酸Naは人工皮脂に対して他の陰イオン界面活性剤と同等の洗浄力をもつことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献13:1990)、ラウリル硫酸Naは皮脂に対する洗浄力が認められています。

次に、1953年にスモカ歯磨によって報告されたアルキル硫酸エステル塩の起泡性の検証によると、

アルキル硫酸エステル塩類であるラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸Naおよびセチル硫酸Naの0.3%,0.15%および0.075%水溶液を調製し、30℃で2分後および5分後の泡数および泡量を測定し、泡消率を算出したところ、以下の表のように、

アルキル硫酸塩 濃度(%) 泡数 泡量 起泡係数 泡消率(%)
2分後 5分後 2分後 5分後 2分後 5分後
ラウリル硫酸アンモニウム 0.30 20.7 10.1 970 960 20080 9700 51.7
0.15 16.7 8.7 417 409 6960 3560 48.8
0.075 10.8 6.0 101 96 1090 580 46.8
ラウリル硫酸Na 0.30 6.8 1.6 907 901 6150 1440 76.5
0.24 7.4 2.2 857 852 6340 1870 70.5
0.15 8.4 2.7 758 753 6370 2030 68.2
0.075 8.0 2.3 408 402 3260 920 68.7
セチル硫酸Na 0.30 24.8 16.2 265 256 6570 4150 36.7
0.15 19.8 13.4 180 173 3560 2320 34.7
0.075 16.3 11.5 116 112 1890 1280 32.4

ラウリル硫酸Naは、泡量が安定して多い一方で泡数が少ないことから比較的大きい泡を起泡するが、2-5分後間の泡消率が最も大きいことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1953)、ラウリル硫酸Naの泡の性質は泡量が多く、比較的大きい泡を起泡する一方で2-5分間の泡消率が高いことが明らかにされています。

また、ラウリル硫酸Naと両性界面活性剤を併用することで、相互作用による複合体(ion pair)を形成し、泡立ちの相乗効果が得られることが明らかにされています(文献13:1990)

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献10:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献10:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

ラウリル硫酸Naは、単体では乳化力はほとんどありませんが、コレステロールや高級アルコールと組み合わせることで強固な界面膜をつくり、優れた乳化力を発揮するため、O/W型エマルションの乳化剤としても使用されることがあります(文献11:2015)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1983年および2002年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラウリル硫酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(1983年および2002年)

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ラウリル硫酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウリル硫酸Naの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 80年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:2%濃度以上から濃度依存的に増す
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):刺激性が高い
  • 眼刺激性:2%濃度以上から濃度依存的に増す
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚浸透性:ほとんどなし
  • タンパク変性:極めて高い(ただし詳細は解説を参照のこと)
  • キューティクル剥離性:強い

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品においては、注意が必要な成分であると考えられます。

ただし、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品においても、皮膚炎を有する場合は、皮膚刺激を起こす可能性が増すことから、安全性に問題があると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 28人の女性被検者3群に0.25%,0.5%および1.0%濃度のラウリル硫酸Na水溶液0.3mLを対象に7日間の間に3回の24時間閉塞パッチ試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-4.0のスケールで評価したところ、以下の表のように、
    濃度(%) 被検者数 PII 評価
    0.25 28 0.20 わずかな刺激
    0.5 28 0.36 わずかな刺激
    1.0 28 0.74 軽度-中程度の刺激

    濃度依存的に皮膚刺激性が高まる傾向が観察された(Hill Top Research,1977)

  • [ヒト試験] 16人の被検者に10%ラウリル硫酸Na溶液0.2mLを対象に一次刺激性試験を24時間閉塞パッチにて実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-8.0のスケールで評価したところ、PIIは0.12であり、24および72時間後の皮膚刺激の兆候はなかった(Phillips Jr,1972)
  • [ヒト試験] 濃度およびパッチの種類別にラウリル硫酸Na溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、以下の表のように、
    パッチの種類 濃度(%) 被検者数 累積刺激スコア(最大84) 評価
    閉塞 0.1 2 14.5 わずか
    閉塞 1.0 2 71 ほぼ最大
    閉塞 2.0 2 77 ほぼ最大
    閉塞 4.0 2 78 ほぼ最大
    閉塞 6.0 2 刺激最大で継続不能
    閉塞 8.0 2 刺激最大で継続不能
    開放 1.0 2 0 刺激性なし
    開放 2.0 2 0 刺激性なし
    開放 4.0 1 0 刺激性なし
    開放 6.0 2 0 刺激性なし

    閉塞パッチでは1.0%濃度以上で累積刺激がほぼ最大以上であり、開放パッチでは1.0%-6.0%濃度で刺激性なしであった(Phillips Jr,1972)

  • [ヒト試験] 8人の被検者に10%ラウリル硫酸Na溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施し、累積刺激スコア(最大84)を評価したところ、累積刺激スコアは34.1であり、中程度の累積刺激であった(Phillips Jr,1972)
  • [ヒト試験] 115人の被検者に1.05%ラウリル硫酸Na水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、115人のうち2人の被検者に刺激反応が観察された。感作反応はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 57人の被検者に1.26%ラウリル硫酸Naを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において57人のうち1人の被検者にわずか-重度の紅斑が観察され、この被検者はチャレンジ期間においてわずか-中程度の紅斑が観察された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 54人の被検者に1.26%ラウリル硫酸Naを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間においてわずか-明瞭な紅斑が観察されたが、チャレンジ期間において皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

花王石鹸(現 花王)の安全性データ(文献3:1976)によると、

  • [ヒト試験] 28人の被検者の前腕内側に1.0g/100mL濃度の各種アニオン界面活性剤水溶液0.03mL(pH6.0)を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去2および24時間後に皮膚刺激性を0.0-3.0のスケールで評価したところ、以下のグラフのように、
    アニオン界面活性剤の皮膚刺激性比較
    アニオン界面活性剤の刺激性は、全般として AS > SAS ≧ AOS ≧ LAS の順に弱くなる傾向を示し、ASおよびAOSはアルキル鎖長の変化より皮膚刺激強度も変化が大きく、ASではC₁₂(ラウリル硫酸Na)、AOSではC₁₄に極大がみられた

資生堂の安全性試験データ(文献4:1989)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットに代表的な陰イオン界面活性剤100mMを3日間連続でそれぞれ0.3mL塗布し、1日ごとに0-4の評点で評価したところ、以下の表のように、
    界面活性剤の種類 界面活性剤 累積刺激スコア
    AS ラウリル硫酸Na 2.1
    AES ラウレス硫酸Na 0.8
    AG ラウロイルグルタミン酸Na 0.3
    AMT ココイルメチルタウリンNa 0.2

    ラウリル硫酸Naは中程度の累積刺激性が観察され、他の陰イオン界面活性剤よりも有意に累積刺激スコア高いことがわかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1%濃度以上では濃度依存的に皮膚刺激性が報告されているため、1%濃度以上において皮膚刺激が増す可能性があり、また連用において中程度の累積刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性については、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、ラウリル硫酸Naと両性界面活性剤を併用することで、相互作用による複合体(ion pair)を形成し、皮膚刺激性が相乗的に減少することが明らかにされていることから(文献13:1990)、ラウリル硫酸Naと両性界面活性剤が併用されている場合は、皮膚刺激性が低下している可能性が考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 職業性接触皮膚炎、累積障害性皮膚炎および対照として健常な皮膚を有する495人の被検者に5%ラウリル硫酸Na水溶液を対象に皮膚適用したところ、皮膚炎を有する被検者の52%に紅斑をともなう刺激反応が起こり、また健常な皮膚を有する被検者の12%でも同様の反応が起こった(W. Burckhardt et al,1964)

資生堂の安全性試験データ(文献4:1989)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する29人の患者に代表的な各界面活性剤水溶液それぞれ50mMおよび100mMを対象に48時間閉塞パッチを適用し、パッチ除去24時間後に皮膚刺激性を0,0.5,1,2,3,4の6段階で評価したところ、以下の表のように、
    界面活性剤の種類 界面活性剤 陽性数(29人中) 平均刺激スコア
    100mM 50mM 100mM 50mM
    AS ラウリル硫酸Na 28 1.66
    AES ラウレス硫酸Na 16 13 0.76 0.63
    AG ラウロイルグルタミン酸Na 11 12 0.60 0.63
    AMT ココイルメチルタウリンNa 13 12 0.64 0.62

    ラウリル硫酸Naは50mM濃度において29人のうち28人が皮膚刺激を示しており、また刺激スコアも1.66(1-2:わずかな紅斑-明らかな紅斑)と他の陰イオン界面活性剤と比較すると高かった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、かなり多くの患者において皮膚刺激が報告されているため、皮膚炎を有する場合は皮膚刺激を起こす可能性が高いと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に2%ラウリル硫酸Na溶液0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて7日目まで眼刺激性を評価したところ、1日目で軽度の眼刺激が観察されたが、7日目では実質的に非刺激であった(H. P. Ciuchta et al,1978)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に10%ラウリル硫酸Na溶液0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて7日目まで眼刺激性を評価したところ、1日目で1匹に中程度の眼刺激が観察されたが、7日目では軽度の眼刺激性であった(H. P. Ciuchta et al,1978)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に20%ラウリル硫酸Na溶液0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて7日目まで眼刺激性を評価したところ、24時間で重度の眼刺激が観察されたが、7日目では軽度の眼刺激性であった(H. P. Ciuchta et al,1978)
  • [動物試験] 3匹のウサギの両眼に1%ラウリル硫酸Na溶液を点眼し、30秒後に片眼をすすぎ、残りの片方はすすがず、7日目まで眼刺激性を評価したところ、両眼でとてもわずかな角膜刺激が示された(K. J. Olson et al,1962)
  • [動物試験] 3匹のウサギの両眼に5%ラウリル硫酸Na溶液を点眼し、30秒後に片眼をすすぎ、残りの片方はすすがず、7日目まで眼刺激性を評価したところ、両眼でわずか-中程度の角膜損傷が観察された(K. J. Olson et al,1962)
  • [動物試験] 3匹のウサギの両眼に25%ラウリル硫酸Na溶液を点眼し、30秒後に片眼をすすぎ、残りの片方はすすがず、7日目まで眼刺激性を評価したところ、両眼でわずか-中程度の角膜損傷が観察された(K. J. Olson et al,1962)
  • [動物試験] 9匹のウサギの両眼に28.2%ラウリル硫酸Na溶液0.1mLを点眼し、30秒後に片眼はすすぎ、残りの片眼はすすがず、Draize法に基づいて14日目まで眼刺激性を評価したところ、両眼ともに中程度の眼刺激が観察された(Product Safety Labs,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2%濃度以上で濃度依存的に眼刺激性が報告されているため、濃度依存的に眼刺激性が増すと考えられます。

皮膚吸収および体内挙動(代謝、排泄)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] モルモットの脇腹の皮膚に16.3μCi濃度のラウリル硫酸Na水溶液0.6mLを10分間擦り込み、試験部位を水で洗浄したのち24時間開放パッチで覆った。糞便、肝臓、腎臓で試験物質は検出されず、呼気CO₂および尿内に0.1%が検出された。パッチには23%が含まれ、すすぎには53.4%が含まれていた。この結果から強いアニオン性末端基が存在する界面活性剤では皮膚に浸透する性能が損なわれると結論付けられた(C. Prottley et al,1975)
  • [動物試験] ラットから切除した背部皮膚を25mM濃度のラウリル硫酸Na溶液0.25mLに24時間浸漬し、1時間ごとに皮膚浸透性を評価し、24時間後に表皮を洗浄したところ、試験物質は洗浄のすすぎに30%が含まれ、70%が皮膚に付着したままであった。接触24時間まではラウリル硫酸Naの測定可能な皮膚浸透は起こらないことがわかった(D. Howes,1975)
  • [in vitro試験] 女性の腹部皮膚を25mM濃度のラウリル硫酸Na溶液0.1mLに曝露し、0.5,1,2,3,4,6,7,8,24および48時間で皮膚浸透性を観察したところ、適用24時間までは測定可能な浸透は起こらず、48時間では87.2 ± 24.1μg/c㎡が吸収された(J. G. Black et al,1979)
  • [in vitro試験] ブリーチしたヒト毛髪およびブリーチしていないヒト毛髪を10%ラウリル硫酸Na溶液に曝露したところ、9時間でブリーチした毛髪は試験化合物の8%を吸収し、ブリーチしていない毛髪は1.2%を吸収した。またブリーチした毛髪では8時間で0.1%ラウリル硫酸Na溶液の1%が吸収され、同時に1%ラウリル硫酸Na溶液の4.5%および10%ラウリル硫酸Na溶液の6.6%が吸収された。これらの結果からヒト毛髪へのラウリル硫酸Naの浸透度は濃度依存的であり、ブリーチした毛髪のほうが浸透度が高くなることがわかった(J. A. Faucher et al,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、24時間以下において皮膚浸透性はほとんどなしと報告されているため、一般的に皮膚浸透性はほとんどないと考えられます。

毛髪に関しては、洗浄製品における通常使用下においては、すぐにすすぐことからほとんど浸透性に影響はないと考えられますが、試験データでは9時間適用した場合においては通常の毛髪で約1%、ブリーチした場合で約8%の吸収が報告されており、一般的にブリーチした毛髪ではブリーチしていない毛髪と比較して吸収率が高くなると考えられます。

タンパク質変性について

界面活性剤が皮膚刺激性を発現するためには、角層バリアを障害する機能として角質タンパク変性能を有する必要があると考えられています。

1989年に資生堂によって報告された代表的な陰イオン界面活性剤のタンパク変性への影響検証によると、

代表的な陰イオン界面活性剤としてラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNaの10mM濃度におけるタンパク変成作用を資生堂が開発した簡易で制度の高い水系GPCを用いて測定したところ、以下のグラフのように、

代表的な陰イオン界面活性剤のタンパク変性への影響

ラウリル硫酸Naは、タンパク変性作用の影響が極めて高いことがわかった。

また、ASにオキシエチレンを付加したAESならびにアミド基を導入したAMTが低い変性率を示したことから、オキシエチレンの付加あるいはアミド基の導入がタンパク質との相互作用を弱める働きがあることが示唆された。

次に、タンパク質への吸着性を検討するために各界面活性剤水溶液20mLにケラチンパウダーおよびハイドパウダー(∗3)をそれぞれ0.4gおよび0.2g添加し、各界面活性剤のクラフト点以上である40℃にて5時間培養し、吸着量を測定したところ、以下のグラフのように、

∗3 ケラチンパウダーとは、毛髪に類似したタンパク質配合パウダーであり、ハイドパウダーは頭皮に類似したタンパク質配合パウダーです。

ケラチンパウダーおよびハイドパウダーに対する陰イオン界面活性剤のタンパク質吸着性比較

硫酸系のASおよびAESは、強い吸着性がみられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1989)、ラウリル硫酸Naは他の陰イオン界面活性剤と比較して最もタンパク変性への影響が高いことが認められおり、かつ毛髪および頭皮タンパク質への吸着性が認められています。

ただし、確かにラウリル硫酸Naはタンパク変性作用が強いですが、1984年に資生堂によってラウリル硫酸Naに両性界面活性剤を併用することによってタンパク変性作用は著しく弱まることが明らかにされており(文献12:1984)、また特定の配合比率によって陰イオン界面活性剤のタンパク質への吸着量が最小となり、毛髪および頭皮への刺激が緩和されることが明らかになっていることから(文献14:2005)、ラウリル硫酸Naに両性界面活性剤が併用されている場合は、タンパク変性作用の影響を最小限に抑えた処方である可能性が考えられます。

キューティクルへの影響について

毛髪の表面(一番外側)はキューティクルと呼ばれ、毛髪を保護する働きをしており、またキューティクルは層状に存在しており、以下の表のように、

キューティクルの枚数(層数) 髪質
2 – 3 柔らかい
5 – 6 普通
8 – 10 硬い

キューティクルの枚数(層数)が髪質に直接反映されます。

次に、以下の画像をみてもらうとわかるように、

キューティクルにおける健常時とダメージ時の違い

健常時にはキューティクルが閉塞していて手触りもなめらかですが、損傷・ダメージを受けるとキューティクルが開き、手触りはギシギシ・パサパサといったものとなり、外観の美しさは損なわれることが知られています。

こういった背景から、陰イオン界面活性剤をシャンプー基剤として使用する場合、頭皮に対する影響としてキューティクルの剥離性を考慮する必要があると考えられます。

1989年に資生堂によって報告された代表的な陰イオン界面活性剤のキューティクルへの影響検証によると、

代表的な陰イオン界面活性剤としてラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、ラウロイルグルタミン酸NaおよびココイルメチルタウリンNaの100mM濃度水溶液250mLに健常な男性被検者(30歳)の毛髪を処理し、損傷させた。

この被検者のキューティクル枚数は7-8枚であり、損傷処理後1および3時間後のキューティクル枚数を評価したところ、以下のグラフのように、

陰イオン界面活性剤処理によるキューティクル枚数への影響

ラウリル硫酸Naは他の陰イオン界面活性剤と比較してキューティクルの剥離性が強いことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1989)、ラウリル硫酸Naはキューティクル剥離性が強いことが認められています。

安全性についての捕捉

1978年に花王石鹸(現 花王)によって報告された皮膚の乾燥落屑に対するラウリル硫酸Naの影響検証によると、

5人の被検者の両腕に0%,0.5%および5%ラウリル硫酸Na水溶液を1日1回10分間適用し、37℃の流水20ℓで3回洗浄した上でタオルで水を拭き取る接触処理を2日間にわたって実施し、表皮乾燥落屑性の変化および皮膚刺激性を評価した。

その結果、0.5%濃度以下では2日間において皮膚変化は観察されず、5%濃度では1回目の処理では皮膚変化は観察されなかったが2日目の処理後24時間目に観察されたことから、5%濃度で繰り返し適用することにより乾燥落屑および皮膚刺激が増加することがわかった。

また乾燥落屑性変化を生じさせた5%濃度ラウリル硫酸Na溶液中には、それらを生じさせなかった0.5%濃度以下より、角層の保湿成分と考えられているタンパク質およびアミノ酸が顕著に認められたことから、表皮乾燥落屑性変化の一因が、界面活性剤の乳化および洗浄作用により角層のタンパク質およびアミノ酸を乳化、洗浄することによって引き起こすものと考えられた。

次に、in vitro試験においてヒト足裏の角層タンパク粉末に0%,0.05%,0.5%および5%ラウリル硫酸Na水溶液5mLを添加し培養後にタンパク質およびアミノ酸の溶出量を評価した。

20分処理では、0.5%濃度以下まではほとんど溶出量に差はなく、角質1gあたり62mg(角質乾燥重量の6.2%)が溶出したが、5%濃度は角質1gあたり77mg(角質乾燥重量の7.7%)であった。

120分処理では、0.5%濃度以下までは20分処理と同様にほとんど溶出量に差はなく、角質1gあたり77mg(角質乾燥重量の7.7%)が溶出したが、5%濃度は角質1gあたり125mg(角質乾燥重量の12.5%)と著しい変化を示した。

このような検証結果が報告されており(文献2:1978)、ラウリル硫酸Naは0.5%濃度以下では有意な影響はありませんが、5%濃度以上では保湿成分と考えられているタンパク質およびアミノ酸の溶出が増し、乾燥および落屑を引き起こすことが明らかにされています。

また、5%濃度以上においてタンパク質およびアミノ酸の溶出は、適用時間および連用回数に依存的に増えるため、適用時間および連用回数が増えるほど乾燥落屑性変化も大きくなると考えられます。

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ラウリル硫酸Naは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Lauryl Sulfate and Ammonium Lauryl Sulfate」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),127-181.
  2. 河合 通雄, 他(1978)「皮膚に対する界面活性剤の作用」日本化粧品技術者会会誌(12)(2),36-43.
  3. 芋川 玄爾, 他(1976)「代表的アニオン界面活性剤の各種タンパク質に対する変性作用」油化学(25)(1),24-30.
  4. 宮澤 清, 他(1989)「頭皮・頭髪用洗浄剤としてのアニオン界面活性剤の研究」油化学(38)(4),297-305.
  5. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  6. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤の基本的物性」油脂化学便覧 改訂3版,476-493.
  7. 日光ケミカルズ(2006)「アニオン界面活性剤の性質」新化粧品原料ハンドブックⅠ,167-172.
  8. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  9. 中島 英郎(1953)「合成洗剤の起泡性について(第1~2報)(第1報)アルキル硫酸エステル塩の起泡性及びラウリル硫酸ナトリウムの起泡性に及ぼすラウリルアルコール,芒硝,保護膠質性物質の影響」工業化学雑誌(56)(8),611-613.
  10. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  11. 野々村 美宗(2015)「アニオン界面活性剤」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,43-48.
  12. 宮澤 清, 他(1984)「界面活性剤の組合せによる物理化学的性質とタンパク質変性作用」日本化粧品技術者会誌(18)(2),96-105.
  13. 宮澤 清, 他(1990)「頭皮・頭髪用洗浄剤(シャンプー) としてのN-アシル-N-メチルタウリン(AMT)の開発と工業化」油化学(39)(11),925-930.
  14. 永井 邦夫(2005)「低刺激性シャンプー基剤」三洋化成ニュース(430).

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