ラウリル硫酸アンモニウムとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ラウリル硫酸アンモニウム
[化粧品成分表示名称]
・ラウリル硫酸アンモニウム

[医薬部外品表示名称]
・ラウリル硫酸アンモニウム

化学構造的に疎水基(親油基)に炭素数12の高級アルコールであるラウリルアルコール、親水基に硫酸エステルのアンモニウム塩をもった、AS(Alkyl Sulfate:アルキル硫酸エステル塩)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

アニオン界面活性剤であるラウリル硫酸アンモニウムの主な性質は、

分子量 cmc(mmol/L)[測定法:不明](∗1) クラフト点(℃) 生分解率(%)
283.4 4.24 90%以上

∗1 cmcは、136g/Lと記載されていたものをmmol/Lで算出して掲載しています。

このように報告されています(文献1:1983;文献4:-;文献5:2002)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献7:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献9:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ラウリル硫酸アンモニウムは生分解性の点で易分解性であり、環境への影響は少ないことが明らかにされています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、クレンジング製品などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、アニオン界面活性剤は優れた洗浄力および起泡力を有しており、中でもアルキル鎖が炭素数12の直鎖構造をもつラウリル硫酸塩の洗浄力および起泡力が優れていることが知られています(文献6:2006)

1953年にスモカ歯磨によって報告されたアルキル硫酸エステル塩の起泡性の検証によると、

アルキル硫酸エステル塩類であるラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸Naおよびセチル硫酸Naの0.3%,0.15%および0.075%水溶液を調製し、30℃で2分後および5分後の泡数および泡量を測定し、泡消率を算出したところ、以下の表のように、

アルキル硫酸塩 濃度(%) 泡数 泡量 起泡係数 泡消率(%)
2分後 5分後 2分後 5分後 2分後 5分後
ラウリル硫酸アンモニウム 0.30 20.7 10.1 970 960 20080 9700 51.7
0.15 16.7 8.7 417 409 6960 3560 48.8
0.075 10.8 6.0 101 96 1090 580 46.8
ラウリル硫酸Na 0.30 6.8 1.6 907 901 6150 1440 76.5
0.24 7.4 2.2 857 852 6340 1870 70.5
0.15 8.4 2.7 758 753 6370 2030 68.2
0.075 8.0 2.3 408 402 3260 920 68.7
セチル硫酸Na 0.30 24.8 16.2 265 256 6570 4150 36.7
0.15 19.8 13.4 180 173 3560 2320 34.7
0.075 16.3 11.5 116 112 1890 1280 32.4

ラウリル硫酸アンモニウムは、ラウリル硫酸Naと比較して泡数が多く、泡量は同程度であることから比較的微細な泡を形成し、また2-5分間の泡持続率が高いことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1953)、ラウリル硫酸アンモニウムの泡の性質は2-5分間における泡持続率の高い微細な泡を多量に形成することが明らかにされています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1983年および2002年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラウリル硫酸アンモニウムの配合製品数と配合量の調査結果(1983年および2002年)

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ラウリル硫酸アンモニウムの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウリル硫酸アンモニウムの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:1%濃度以下においてほとんどなし-軽度、1%濃度以上において濃度依存的に皮膚刺激が増し、かつ皮膚疲労をともなう可能性あり
  • 眼刺激性(眼をすすがない場合):15%濃度以下において最小限-中程度
  • 眼刺激性(眼をすすぐ場合):15%濃度以下においてほとんどなし-一過性の軽度の刺激を起こす可能性あり
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚浸透性:ほとんどなし

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、長時間皮膚に塗布する製品および状況下においては、1%濃度以上は安全性に問題があると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.11%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において3人の被検者にわずかな紅斑がみられたが、皮膚感作の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に0.15%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において7人の被検者にわずかな紅斑、2人の被検者に中程度の紅斑が観察されたが、皮膚感作の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 209人の被検者に1.68%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において16人の被検者に最小限-軽度の刺激性が観察され、また56人の被検者に2回以上のパッチ適用で疲労剤であったが、皮膚感作の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 209人の被検者に0.84%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 209人の被検者に0.42%ラウリル硫酸アンモニウムを含むシャンプー水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 56人の被検者に0.84%ラウリル硫酸アンモニウムを含む製剤水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作の兆候は観察されなかった(University if Carifornia at Los Angeles,1979)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に0.98%ラウリル硫酸アンモニウムを含む製剤水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作の兆候は観察されなかった(University if Carifornia at Los Angeles,1979)

花王石鹸(現 花王)の安全性データ(文献2:1976)によると、

  • [ヒト試験] 28人の被検者の前腕内側に1.0g/100mL濃度の各種アニオン界面活性剤水溶液0.03mL(pH6.0)を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去2および24時間後に皮膚刺激性を0.0-3.0のスケールで評価したところ、以下のグラフのように、
    アニオン界面活性剤の皮膚刺激性比較
    アニオン界面活性剤の刺激性は、全般として AS > SAS ≧ AOS ≧ LAS の順に弱くなる傾向を示し、ASおよびAOSはアルキル鎖長の変化より皮膚刺激強度も変化が大きく、ASではC₁₂(ラウリル硫酸塩)、AOSではC₁₄に極大がみられた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1%濃度以下ではほとんど刺激がなく、1%濃度以上では濃度依存的に皮膚刺激が増すだけでなく、疲労剤としても報告されているため、1%濃度以下においてほとんど皮膚刺激がなく、1%濃度以上では濃度依存的に皮膚刺激が増し、かつ皮膚疲労をともなう可能性があると考えられます。

また、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に2%ラウリル硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1日目に軽度の眼刺激性を示したが、7日目では実質的に非刺激性であった(H. P. Ciuchta,1978)
  • [動物試験] 5匹のウサギの片眼に10%ラウリル硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1日目に重度の眼刺激性を示したが、7日目では軽度の刺激性であった(H. P. Ciuchta,1978)
  • [動物試験] 3匹のウサギ2群の両眼に1.25%または2.5%ラウリル硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、片眼はすすがず、残りの片眼は2秒後にすすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼をすすがなかった場合は最小限-中程度の眼刺激が観察され、眼をすすいだ場合はすべての眼で刺激は減少した(J. J. Serrano et al,1977)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に27.4%ラウリル硫酸アンモニウム溶液0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、1日目において眼をすすいだ場合の眼刺激スコアは30.7、眼をすすがなかった場合の眼刺激スコアは36.0であった。この試験物質は中程度の眼刺激性を示した(Product Safety Labs,1980)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に8.4%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、1日目において両方のグループにわずかな角膜刺激が観察されたが、それ以降は消失した(Applied Biological Sciences Laboratory,1979)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に9.8%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、1日目において眼をすすがなかった群にわずかな角膜刺激が観察されたが、眼をすすいだ群では刺激の兆候は観察されなかった(Applied Biological Sciences Laboratory,1979)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に11.2%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、眼をすすがなかった群に48時間までわずかな角膜刺激が観察され、眼をすすいだ群では24時間までわずかな角膜刺激が観察された(Applied Biological Sciences Laboratory,1979)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に11.2%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、眼をすすがなかった群に48時間までわずかな角膜刺激が観察され、眼をすすいだ群では刺激は起こらなかった(Applied Biological Sciences Laboratory,1979)
  • [動物試験] 10匹のウサギの片眼に15%ラウリル硫酸アンモニウム製剤0.1mLを滴下し、Draize法に基づいて1,2,3,4および7日目に眼刺激スコア(最大110)を評価したところ、眼をすすいだ群の1日目および7日目の眼刺激スコアは15および1であり、一過性の軽度の眼刺激であった。眼をすすがなかった群の1日目および7日目の眼刺激スコアは34および6であり、一過性の中程度の眼刺激であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2%濃度以上で濃度依存的に眼刺激性が報告されているため、濃度依存的に眼刺激性が増すと考えられます。

皮膚吸収および体内挙動(代謝、排泄)について

ラウリル硫酸アンモニウムに限定した皮膚吸収および体内挙動の試験データはみあたりませんが、ラウリル硫酸エステル塩としては、複数の動物試験において経皮吸収量は約0.5%未満であり(文献3:2010)、ラウリル硫酸エステル塩の皮膚吸収性は極めて低いことが明らかにされています。

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ラウリル硫酸アンモニウムは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Lauryl Sulfate and Ammonium Lauryl Sulfate」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),127-181.
  2. 芋川 玄爾, 他(1976)「代表的アニオン界面活性剤の各種タンパク質に対する変性作用」油化学(25)(1),24-30.
  3. 青山 博昭(2010)「アルキル硫酸エステル塩の安全性について」日本家政学会誌(61)(5),327-329.
  4. Stepan(-)「STEPANOL AM」技術資料.
  5. Human and Environmental Risk Assessment(2002)「Alkyl Sulphates Environmental Risk Assessment」, <https://web.archive.org/web/20061107201838/http://www.heraproject.com/files/3-E-04-HERA%20AS%20Env%20web%20wd.pdf> 2019年8月20日アクセス.
  6. 日光ケミカルズ(2006)「アニオン界面活性剤の性質」新化粧品原料ハンドブックⅠ,167-172.
  7. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  8. 中島 英郎(1953)「合成洗剤の起泡性について(第1~2報)(第1報)アルキル硫酸エステル塩の起泡性及びラウリル硫酸ナトリウムの起泡性に及ぼすラウリルアルコール,芒硝,保護膠質性物質の影響」工業化学雑誌(56)(8),611-613.
  9. 本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.

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