ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルとは…成分効果と毒性を解説

界面活性剤
ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル
[化粧品成分表示名称]
・ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル

高級脂肪酸のヤシ油脂肪酸と水性成分のポリエチレングリコールをグリセリンを間に挟んで結合させた構造をもつ非イオン界面活性剤です。

化粧品に配合される場合は、乳液やクリーム、クレンジングオイルの乳化剤として、また香料や微量の油を透明化粧水に配合するための可溶化剤として幅広く使用されています。

実際にどのような製品にどれくらいの配合量でしようされているのかというと、2014年の海外の調査になりますが、以下のような調査結果が報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

2014年のヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの配合状況の調査結果

調査結果をみる限りではリンスオフ製品が中心となっており、皮膚接触の製品でも最大10%は配合されているようです。

スポンサーリンク

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの現時点での安全性は、皮膚刺激性や毒性および眼刺激性はほとんどなく、アレルギー(皮膚感作性)や光感作性の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of PEG-7, -30,-40, -78, and -80 Glyceryl Cocoate」(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 4人のボランティアに50%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを含むパッチを適用し、パッチ除去後および24時間後に試験部位を評価したところ、いずれのボランティアにも皮膚刺激は観察されなかった(Kastner,1977)
  • [ヒト試験] 5人の被検者の前腕にヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(濃度不明)を1時間パッチ適用し、パッチ除去後評価したところ、皮膚刺激の証拠はみつからなかった
  • [ヒト試験] 40人のボランティアに希釈されていないヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの一次試験パッチを適用したところ、皮膚の炎症は観察されなかった(Henkel Corp,1996)

BASFの安全性データシート(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギによる試験では刺激がないと記載しており、肌に刺激を与えないとしています

ミヨシ油脂株式会社の安全性データシート(文献3:2011)によると、

  • [in vitro試験] 1%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル溶液を3次元培養皮膚モデル上に24時間さらしたところ、生細胞率は100%を維持しており、細胞毒性は非常に低いことが認められました

と記載されています。

試験結果や安全データシートの記載では共通して皮膚刺激なしとなっているため、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of PEG-7, -30,-40, -78, and -80 Glyceryl Cocoate」(文献1:1999)によると、

  • [動物試験] 2匹のウサギの結膜嚢内に10%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル水溶液を点眼したところ、眼刺激を引き起こさなかった(Henkel Corp,1996)

BASFの安全性データシート(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギによる試験では刺激がないと記載しており、目に刺激を与えないとしています

と記載されています。

試験結果や安全性データの記載は共通して眼刺激性なしとなっているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

BASFの安全性データシート(文献2:2015)によると、

  • 皮膚感作性のエビデンス(証拠・記録・試験結果)はない

と記載されています。

この資料のみでアレルギーが起こらない成分と結論づけるのは早計ですが、国内のアレルギーの報告もないので、現時点ではアレルギーが起こる可能性は低いと考えられます。

光毒性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of PEG-7, -30,-40, -78, and -80 Glyceryl Cocoate」(文献1:1999)によると、

  • [動物試験] ヘアレスマウスの背部に50%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルをコーティングし、30分間紫外線を照射し、照射から6,24,30,48および96時間後にマウスを検査したところ、局所的または一般的な光毒性の兆候は観察されなかった

と記載されています。

この試験結果のみでは根拠が弱いかもしれませんが、重大な光毒性の報告もないため、光毒性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of PEG-7, -30,-40, -78, and -80 Glyceryl Cocoate」(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 28人のボランティアに0.03%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを含むSPF15フェイシャルクリーム80mgを背中に24時間適用し、パッチ除去後キセノンアークソーラーシミュレーターを照射して48時間露出させたまま同じ部位に24時間パッチを再適用という手順を週に2回3週間にわたって実施し、最後の誘導から10~14日後にチャレンジ照射を受けてから48時間および72時間後に光増感反応について評価したところ、26人のボランティアのいずれも光感作の兆候は観察されなかった(Ivy Laboratories,1995)

と記載されています。

この資料のみで光感作性がないと結論づけるには根拠が弱いのですが、光感作性の重大な報告もないので、光感作が起こる可能性は低いと考えられます。

安全性についての捕捉

また、この高級脂肪酸とポリエチレングリコールの間にグリセリンを挟んだタイプの乳化剤は、肌の表面に残すとバリア機能を破壊すると書かれたものがありますが、前提として分子量が大きいので通常使用において肌に浸透してバリア機能を破壊することはありません。

ただし、使用感はしっとりしているのに長期使用していると肌が乾燥を感じるという感想は、そのとおりなのですが、実際に乾燥しているわけではなくそう感じるだけです。

というのも、このグリセリン部分や脂肪酸部分のある非イオン界面活性剤は、肌のつっぱり感が低いのはいいのですが、しっとり感まで与えることがあります。

このしっとり感がオイルなら肌に浸透して乾燥を防ぎますが、このタイプの乳化剤は分子量が大きいため肌に浸透しないので、オイルのように肌に浸透する保湿やエモリエント効果はなく、肌の表面でそう感じさせるだけなんです。

その上で、乳化力はしっかりしてるので肌の皮脂成分を落とします。

つまり、皮脂は奪うのに肌がつっぱらずにしっとり感が残っているように感じる(皮脂を奪われたのに気づかない)ので、洗顔料などの使用後に保湿ケアを怠っていると乾燥につながるので注意が必要です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル ■■

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルは■■(∗2)となっており、毒性・刺激があるという判定になっていますが、化粧品毒性判定事典は合成界面活性剤はすべて■■の極端な判定になっており、実際の試験結果や安全性データを参照する限りでは毒性や刺激性はほとんどないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1999)「Final Report on the Safety Assessment of PEG-7, -30,-40, -78, and -80 Glyceryl Cocoate」, <https://www.researchgate.net/publication/297392720> 2017年10月14日アクセス.
  2. BASF(2015)「Safety Data Sheet」, <https://worldaccount.basf.com/wa/NAFTA~en_US/Catalog/Cosmetics/doc4/BASF/PRD/30528395/.pdf?asset_type=msds/pdf&language=EN&validArea=US&urn=urn:documentum:ProductBase_EU:09007af88026745d.pdf> 2017年8月24日アクセス.
  3. ミヨシ油脂株式会社(2011)「MファインオイルCOG-7M」, <http://www.miyoshi-yushi.co.jp/_userdata/yuka/cog7m_color.pdf> 2017年8月24日アクセス.

スポンサーリンク

TOPへ