ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルとは…成分効果と毒性を解説

乳化 起泡 洗浄
ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル
[化粧品成分表示名称]
・ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル

化学構造的にヤシ脂肪酸と多価アルコールの一種であるグリセリンのモノエステル(∗1)であるヤシ脂肪酸グリセリルに、酸化エチレン(約7モル)をエステル結合して得られるモノエステルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です。

∗1 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でシャンプー製品、ボディソープ製品、クレンジング製品、メイクアップリムーバー製品、ヘアミスト製品、スキンケア化粧品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
10.6 , 13.0 O/W型乳化 透明分散物

このように報告されており(文献5:-;文献6:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として主にヘアミスト製品、フェイスクリーム、ハンドケア製品などに使用されています。

陰イオン界面活性剤の泡質向上作用

アニオン界面活性剤の泡質向上作用に関しては、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル自体には起泡性はほとんどありませんが、陰イオン界面活性剤と併用することで加脂剤として陰イオン界面活性剤(洗浄剤)の泡の増大かつ泡弾性の向上効果が知られており、主にシャンプー製品、ボディソープ製品などに使用されています(文献5:-;文献6:-;文献7:-)

クレンジング系の洗浄基剤

クレンジング系の洗浄基剤に関しては、主にオイルを使用しないクレンジング製品やメイクアップリムーバー製品の洗浄基剤として使用されており、この使用目的の場合は化粧品成分表示一覧の最初のほうに記載されます(文献8:-)

混合原料としてのヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルは、他の乳化剤と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルと以下の成分が併用されている場合は、混合系原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ANTIL 200
構成成分 水添パーム油脂肪酸PEG-200グリセリル、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル
特徴・主な用途 特に増粘が困難な処方に適した非常に効果的な増粘剤であり、また皮膚にマイルドであることから、主にベビー製品や敏感肌向けのボディソープ製品、洗顔料、クレンジング製品に配合

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの配合製品数と配合量の調査結果(2014年)

スポンサーリンク

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの安全性(刺激性・アレルギー)について

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 4人の被検者に50%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを対象に24時間パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応を示さなかった(Kastner,1977)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に100%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを対象に皮膚一次刺激性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(Henkel Corp,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1999;文献2:2015)によると、

  • [動物試験] 2匹のウサギの片眼に10%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル水溶液を点眼し、眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激を誘発しなかった(Henkel Corp,1996)
  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて5.5%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを含む製剤溶液を処理し(HET-CAM法)、眼刺激スコアを0-32のスケールで評価したところ、眼刺激スコアは1.25であり、この試験物質は実質的に非刺激であった(Consumer Product Testing Co,2013)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2015)によると、

  • [ヒト試験] 103人の被検者に8%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(TKL Research Inc,2004)
  • [ヒト試験] 205人の被検者に11%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(TKL Research Inc,2013)
  • [ヒト試験] 57人の被検者に100%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Consumer Product Testing Co,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 28人の被検者に0.03%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを含むSPF15のフェイシャルクリームを対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、チャレンジパッチ後の観察においていずれの被検者も光感作反応を示さなかった(Ivy Laboratories,1995)
  • [ヒト試験] 31人の被検者に0.3%ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルを含むSPF15のフェイシャルクリームを対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、チャレンジパッチ後の観察においていずれの被検者も光感作反応を示さなかった(Ivy Laboratories,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1999)「Final Report on the Safety Assessment of PEG-7, -30,-40, -78, and -80 Glyceryl Cocoate」International Journal of Toxicology(18)(Suppl.1),33-42.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of PEGylated Alkyl Glycerides as Used in Cosmetics」Final Report.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. CRODA(-)「SP GLYCEROX HE MBAL」技術資料.
  6. ミヨシ油脂株式会社(-)「Mファインオイル COG-7M」技術資料.
  7. EVONIK(-)「TEGOSOFT GC」技術資料.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL TMGCO-7」技術資料.

スポンサーリンク

TOPへ