ムクロジ果皮エキス(ムクロジエキス)とは…成分効果と毒性を解説

界面活性剤 乳化剤 抗菌成分 抗シワ成分 抗老化成分
ムクロジ果皮エキス
[化粧品成分表示名称]
・ムクロジ果皮エキス、ムクロジエキス

[医薬部外品表示名称]
・ムクロジエキス

ムクロジ科植物ムクロジ(学名:Sapindus mukorossi 英名:Indian soapberry)の果皮からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)で抽出して得られるエキスです。

ムクロジ果皮エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • ムクロジサポニン

などで構成されています(文献1:2006)

ムクロジは日本や東南アジアに分布し、その果皮は生薬名として「延命皮」と呼ばれ、数種類のサポニンを含み、日本では明治時代に石けんが普及する以前は他の植物洗浄剤とともに洗浄剤として用いられていました。

ムクロジにも含まれているサポニンは、その水溶液を撹拌すると石けんのような持続性のある泡を発生する発泡作用のある配糖体の総称であり、ムクロジサポニンについては、表面張力、乳化性、分散性など界面活性に関する報告がされています(文献3:2006)

また、ムクロジサポニンには比較的弱い抗菌性と顕著な抗真菌作用があることも知られています(文献3:2006)

化粧品に配合される場合は、

これらの作用があることから、天然の界面活性による皮膚刺激の低さを強調するクレンジングや洗顔料などの洗浄製品、乳化補助目的で乳液やクリームなどのスキンケア化粧品、抗老化目的でエイジングケア化粧品をはじめとするスキンケア化粧品などに使用されます(文献1:2006;文献4:2006)

酵母、アクネ菌、フケ菌および皮膚糸状菌に対する抗菌作用

抗菌作用に関して補足ですが、主にムクロジサポニンの作用として、

  • 酵母:製品そのものに発生
  • アクネ菌:ニキビに関与する菌
  • フケ菌:フケの原因菌とされる菌
  • 皮膚糸状菌用:水虫など皮膚疾患に関与する菌

これらの菌に抗菌性を示すことが明らかになっており、特に酵母に強い抗菌作用を示すことがわかっています(文献4:2006)

ムクロジサポニンの抗菌作用機序は、現時点で明確ではありませんが、サポニンはコレステロールや不飽和脂肪酸と作用することが知られており、これらの成分は細胞膜の流動性に関与する成分であることから、サポニンは細胞膜の流動性に関与することにより抗菌作用を示すことが示唆されています(文献4:2006)

また、2006年に丸善製薬によって報告されたムクロジエキスの抗菌活性におよぼす培養条件の影響によると、以下の表のように、

  低pH アルコール 多糖類 タンパク 不飽和脂肪酸
(脂質)
油脂類
(脂質)
高浸透圧
抗菌活性の
変化

低いpHやアルコール共存下では抗菌活性が強化され、多糖類やタンパク質など高分子化合物や遊離不飽和脂肪酸により抗菌活性が低下することが明らかになっています(文献4:2006)

ヘパラナーゼ活性阻害による抗シワ・抗老化作用

ヘパラナーゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として表皮基底膜の役割およびヘパラン硫酸鎖分解酵素であるヘパラナーゼについて解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に外部刺激や水分量を調節するバリア機能と保水機能の役割を有し、真皮は主に皮膚のハリや弾力を保つ役割を有しています。

そして、表皮最下部の基底膜(基底層)は、表皮の土台として構造の異なる表皮と真皮をつなぎ、表皮-真皮間でのエネルギーや栄養を輸送したり、物質のやりとりを制御したり、表皮や真皮がダメージを受けた際に修復する因子を生成したり、肌を正常に保つために重要な働きをしています。

また基底膜が、表皮-真皮間で細胞シグナリングにおいて重要な各種サイトカインの動きを制御することで、表皮と真皮の恒常性が保たれています。

表皮-真皮間でのサイトカインの移動は、以下のヘパラン硫酸プロテオグリカンの構造図をみると想像しやすいと思いますが、表皮基底膜に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカン(パールカン)のヘパラン硫酸鎖に各種サイトカインが結合することで制御されています。

 基底膜におけるヘパラン硫酸プロテオグリカンの構造図

このパールカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン)のヘパラン硫酸鎖を分解するのがヘパラナーゼという分解酵素で、紫外線(UVB)の照射によってヘパラナーゼは増加および活性化し、基底膜におけるヘパラン硫酸鎖が減少することが明らかになっています(文献5:2014)

また、紫外線を浴びない部位(臀部や太腿部など)の皮膚では年齢にかかわらず基底膜にヘパラン硫酸鎖が豊富に存在していることが確認されており、一方で紫外線照射部では加齢にともなって基底膜のヘパラン硫酸鎖が減少することも明らかになっています(文献5:2014)

2014年に資生堂によってヘパリン硫酸分解における表皮基底膜形成に与える影響の検証によると、

通常三次元培養皮膚モデルでは、ヘパラナーゼが恒常的に活性化していることが報告されており、ヘパリン硫酸分解における表皮基底膜形成に与える影響を検討するために、三次元培養皮膚モデルに合成ヘパラナーゼ阻害剤を添加し、ヘパラナーゼ活性を抑制したときの表皮分化、基底膜構造形成の変化を検証した。

通常、三次元培養皮膚モデルでは、ヘパラナーゼが恒常的に活性化しているためヘパラン硫酸鎖は確認できないが、ヘパラナーゼ阻害剤を添加することで、ヘパラン硫酸鎖が基底膜で確認できるようになり、また天然保湿因子の元であるフィラグリンやロリクリンの偏りが改善され、これらのタンパク質発現量の増加が認められた。

フィラグリンとは、以下の図をみるとわかるように、

NMF(天然保湿因子)の産生の仕組み

天然保湿因子の元になるタンパク質の一種です。

また、ロリクリンとは、以下の図をみるとわかるように、

皮膚における角質の構造図

角質を包む周辺帯の構成成分のひとつで、周辺帯はバリア機能に重要な役割を果たします。

つまり、フィラグリンの発現量が増加することで、天然保湿因子(NMF)の増加となり、皮膚水分量が向上し、ロリクリンの発現量が増加することで、バリア機能の向上につながり、これらの相乗効果で健常な角層を保ちます。

これらの結果より、基底膜のヘパラン硫酸分解の抑制は、表皮分化や基底膜構造の維持に重要であることが示唆された。

ヘパラナーゼによる基底膜ヘパラン硫酸分解は、皮膚全体にダメージを与え、シワなどの光老化を促進することから、ヘパラナーゼの活性を阻害する薬剤を300種類の生薬の中から探索・評価した。

生薬の探索・評価の結果、以下のグラフのように、

 ムクロジ果皮エキスによるヘパラナーゼ活性阻害作用

ムクロジエキスは、ヘパラナーゼ活性を濃度依存的に阻害していることを見出した。

このような研究結果が明らかにされており(文献5:2014)、ムクロジエキスには濃度依存的にヘパラナーゼ活性阻害による抗シワ・抗老化作用が認められています。

複合植物エキスとしてのムクロジ果皮エキス

フォームラバージという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 泡立ち・泡切れ改善作用
  2. 皮脂成分抑制作用
  3. 皮膚常在菌に対する静菌作用
  4. 体臭原因物質に対する消臭作用

とされており、洗浄剤として使用されているキラヤ、ムクロジにグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)を一定比率で配合するすることで皮脂分泌抑制効果、静菌作用、消臭作用および泡立ち作用を相乗的に発揮するもので、化粧品または洗浄製品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はフォームラバージであると推測することができます(文献6:-)

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ムクロジ果皮エキスの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ムクロジ果皮エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明ならびに個別事例として接触皮膚炎が1例報告されているので注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

池田回生病院皮膚科の症例報告(文献2:2000)によると、

  • [個別事例] 接触皮膚炎の既往歴のある33歳女性が、化粧品を変更し、2日目から顔面に一部落屑をともなう瘙痒性紅斑を認めたため、使用していたフェイスパウダーをパッチテストしたところ、成分パッチテストでオクテニルコハク酸デンプンAl、ムクロジエキスに陽性であった。さらに濃度希釈パッチテストを施行したところ、0.2%~10%濃度で陽性を示した。以上よりフェイスパウダーの成分であるオクテニルコハク酸デンプンAl、ムクロジエキスによる接触皮膚炎と診断した

と記載されています。

皮膚感作の報告はほとんどないため、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんど起こらないと考えられます。

ただし、個別事例として接触皮膚炎が1例報告されているので注意が必要です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ムクロジ果皮エキス

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ムクロジ果皮エキスは△(∗1)となっており、安全性に問題はないと考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ムクロジ果皮エキスは界面活性剤、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤 抗菌成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,384.
  2. 西井 貴美子, 他(2000)「植物成分配合のフェイスパウダーによるアレルギー性接触皮膚炎」皮膚(42)(2),143-147.
  3. 久保田 弥生, 他(2006)「洗浄液中におけるムクロジ果皮の汚染防止効果」日本家政学会誌(57)(10),687-691.
  4. 田村 幸吉(2006)「油溶性甘草エキスとムクロジエキスの抗菌作用」Fregrance Journal(34)(4),53-59.
  5. 入山 俊介, 他(2014)「光老化における基底膜ヘパラン硫酸の変化とその役割」日本化粧品技術者会誌(48)(1),35-40.
  6. 丸善製薬株式会社(-)「フォームラバージ」技術資料.

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