ポリソルベート80とは…成分効果と毒性を解説

乳化 可溶化
ポリソルベート80
[化粧品成分表示名称]
・ポリソルベート80

[医薬部外品表示名称]
・モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)

化学構造的にソルビタン脂肪酸エステル(非イオン界面活性剤)の一種であるオレイン酸ソルビタンに酸化エチレン(約20モル)を付加重合して得られる、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに分類される分子量604.8の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、シート&マスク製品、ボディ&ハンドソープ製品、フレグランス製品など様々な製品に汎用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

ポリソルベート80の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
15.0 O/W型乳化 透明溶液

このように報告されており(文献5:1983)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主にスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、シート&マスク製品、ボディ&ハンドソープ製品、フレグランス製品などに使用されています。

可溶化

可溶化に関しては、親水性が大きく、液状であることから、香料、色素、有効成分などを溶かし込む可溶化剤として使用されています(文献6:1987;文献7:2012)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1981-1998年および2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ポリソルベート80の配合製品数と配合量の調査結果(1981-1998年および2014-2015年)

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ポリソルベート80の安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリソルベート80の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1960年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に100%ポリソルベート80を対象に72時間閉塞パッチ適用し、7日間の休息期間を設けた後に再度72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(L Schwartz,1970-1971)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に100%ポリソルベート80を対象に48時間閉塞パッチ適用し、7日間の休息期間を設けた後に再度48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(Applied Research Labs,1970-1971)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に30%ポリソルベート80水溶液を対象に48時間閉塞パッチ適用し、7日間の休息期間を設けた後に再度48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(Applied Research Labs,1970-1971)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に100%ポリソルベート80を対象に24時間単一閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に100%ポリソルベート80を点眼し、3匹は眼をすすぎ、6匹は眼をすすがず、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-110のスケールで7日目まで評価したところ、洗眼の有無にかかわらずPIIは0であり、この試験物質は非刺激剤に分類された(Atlas Toxicology Lab,1970-1971)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%ポリソルベート80を点眼し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-110のスケールで7日目まで評価したところ、1,2および3日目においてPIIは2,1および0であり、この試験物質は最小限の刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に30%ポリソルベート80水溶液を点眼し、3匹は眼をすすぎ、6匹は眼をすすがず、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-110のスケールで7日目まで評価したところ、洗眼の有無にかかわらずPIIは0であり、この試験物質は非刺激剤に分類された(Atlas Toxicology Lab,1970-1971)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 303人の被検者に0.6%ポリソルベート80を含むメイクアップ製剤を対象に48時間開放および閉塞パッチを2週間にわたって適用(Schwartz-Peck prophetic patch test)し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、最初の閉塞パッチにおいて25人、2回目の閉塞パッチにおいて14人の被検者に軽度の刺激が観察されたが、皮膚感作の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976-1977)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に2.5%ポリソルベート80を含むシェービングフォームを対象に48時間閉塞パッチを4週間にわたって適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚反応は観察されず、皮膚感作の兆候はなかった(Leo Winter Associates,1980)
  • [ヒト試験] 82人の被検者に2.5%ポリソルベート80を含むシェービングフォームを対象に48時間閉塞パッチを4週間にわたって適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚感作の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 210人の被検者に2.5%ポリソルベート80を含むクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作の兆候はなかった(Leo Winter Associates,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 149人の被検者に0.6%ポリソルベート80を含むメイクアップ製剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も光感作の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976-1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

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ポリソルベート80は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Polysorbates 20, 21, 40, 60, 61, 65, 80, 81, and 85」Journal of the American College of Toxicology(3)(5),1-82.
  2. “Pubchem”(2019)「Polysorbate 80」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Polysorbate-80> 2019年11月8日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 松本 宏一(1983)「化粧品」日本ゴム協会誌(56)(8),513-524.
  6. 目黒 謙次郎(1987)「化粧品と可溶化技術」コロイド化学の進歩と実際,71-75.
  7. 鈴木 一成(2012)「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン」化粧品成分用語事典2012,524-525.

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