パルミチン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
パルミチン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・パルミチン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・パルミチン酸ナトリウム、石けん用素地

化学構造的に炭素数16の高級脂肪酸であるパルミチン酸のナトリウム塩(高級脂肪酸アルカリ金属塩)であり、セッケン(Soap)(∗1)に分類される分子量278.41の陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です(文献1:2019)

∗1 セッケンには、「セッケン」「石けん」「せっけん」「石鹸」など4種の表記法があり、これらの用語には界面活性剤を意味する場合と界面活性剤を主剤とした製品を意味する場合がありますが、化学分野では界面活性剤を「セッケン」、製品を「せっけん」と表現する決まりになっています。それらを考慮し、ここでは界面活性剤を「セッケン」、セッケンを主剤とした製品を「石鹸」と記載しています。

セッケンの歴史は非常に古く、紀元前3000年頃のメソポタミア地方の出土品にセッケンらしきものの記録があるといわれていますが、工業的に大規模生産されるようになったのは1800年代であり、セッケンが普及したのもこの頃です(文献3:1979)

セッケンの製造法には、

  • ケン化法:油脂 + 水酸化Naまたは水酸化K → 油脂脂肪酸Naまたは油脂脂肪酸K + グリセリン
  • 中和法:高級脂肪酸 + 水酸化Naまたは水酸化K → 高級脂肪酸Naまたは高級脂肪酸K + 水

この2種類があり、またケン化または中和に用いるアルカリは水酸化Na水酸化Kでは、

  • 水酸化Naを用いてケン化または中和する場合:固形石鹸
  • 水酸化Kを用いてケン化または中和する場合:液体石鹸

このように利用目的が異なり(文献3:1979)、パルミチン酸Naは高級脂肪酸であるパルミチン酸 + 水酸化Naの中和法によって得られることから、一般に固形石鹸として利用されます。

高級脂肪酸ナトリウム塩は油脂から得られるものを使用しており、一般に油脂の主体となる3種類以上の高級脂肪酸が配合されるため、成分表示一覧には3種類以上の高級脂肪酸ナトリウム塩が記載されることが多く、パルミチン酸Naを含む脂肪酸ナトリウム塩の脂肪酸はヤシ油から得られるため、パルミチン酸Naが配合される場合は一緒にラウリン酸Naおよびミリスチン酸Naをはじめとして、ステアリン酸Naオレイン酸Naのいずれかまたは複数が併用されると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗顔石鹸、ボディ石鹸などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、セッケンは洗浄力および起泡力を有しており、各脂肪酸における洗浄力および起泡力は、

脂肪酸名 洗浄力
(温水)
洗浄力
(冷水)
起泡性 泡持続性
飽和脂肪酸 ラウリン酸
ミリスチン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
不飽和脂肪酸 オレイン酸

このような傾向が明らかにされており(文献4:1990)、パルミチン酸Naなどの炭素数の多い脂肪酸は70-80℃の温度条件で洗浄力が最大化しますが、温度が低下するにつれて水に対する溶解度が低下し(文献7:1965)、それにともない洗浄力が低下するため、実際にすすぎに使用する38℃付近ではラウリン酸Naやミリスチン酸Naと比較すると洗浄力が低くなることが知られています。

次に、1955年に日本油脂によって報告された飽和脂肪酸のナトリウムセッケンの起泡力検証によると、

各飽和脂肪酸のナトリウムセッケンを水道水溶液(温度35℃)で0.25%濃度に希釈し、それぞれの起泡力をRoss&Miles法に基づいて測定したところ、以下の表のように、

飽和脂肪酸 炭素数 起泡力:泡の高さ(mm)
直後 5分後
ラウリン酸 C₁₂ 217 208
ミリスチン酸 C₁₄ 350 350
パルミチン酸 C₁₆ 37 32
ステアリン酸 C₁₈ 25 21

起泡力に最適な脂肪酸はC₁₂-C₁₄に存在し、他の炭素数ではかなり起泡力が低下していることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1955)、パルミチン酸Naはラウリン酸Naやミリスチン酸Naと比較して微細な泡が得られるものの、起泡力はかなり低下することが認められています。

ただし、市販の洗浄製品には使用されている脂肪酸ナトリウム塩は複数の混合物であることから、配合されている脂肪酸ナトリウム塩の総合的な洗浄力、起泡性および泡持続性を示します(文献6:1993)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2016-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

パルミチン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2019年)

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パルミチン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

パルミチン酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 100年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、セッケンを構成する脂肪酸塩のひとつとして100年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないことから、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず(∗2)データ不足のため詳細は不明です。

∗2 古い試験データはたくさんありますが、試験方法自体古く、試験データと実際の使用における関連性が不確かなデータが多かったため、現段階では記載できるデータはみつかっていません。現在採用されている試験規格に基づいた試験データがみつかり次第追補します。

飽和脂肪酸ナトリウム塩の皮膚刺激性に関しては、

ラウリン酸Na(C₁₂) ← ミリスチン酸Na(C₁₄) ← パルミチン酸Na(C₁₆) ← ステアリン酸Na(C₁₈)

この順に皮膚刺激が強いことが知られていますが、一般に洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、セッケンが皮膚に与える影響は極めて少ないことが明らかにされています(文献2:1972)

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

パルミチン酸Naは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Pubchem”(2019)「Sodium palmitate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sodium-palmitate> 2019年9月25日アクセス.
  2. 岩本 行信(1972)「セッケン」油化学(21)(10),699-704.
  3. 小野 正宏(1979)「身のまわりの化学”セッケンおよびシャンプー”」化学教育(27)(5),297-301.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「石けん」香粧品科学 理論と実際 第4版,336-348.
  5. 難波 義郎, 他(1955)「洗浄力に寄与する要因の研究(第1報)」油脂化学協会誌(4)(5),238-244.
  6. 宮澤 清(1993)「化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感」油化学(42)(10),768-774.
  7. 中垣 正幸(1965)「界面化学 (応用篇). IV.」油化学(14)(2),72-78.

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