パルミチン酸ソルビタンとは…成分効果と毒性を解説

乳化
パルミチン酸ソルビタン
[化粧品成分表示名称]
・パルミチン酸ソルビタン

[医薬部外品表示名称]
・モノパルミチン酸ソルビタン

化学構造的に炭素数16の高級脂肪酸であるパルミチン酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、4個の水酸基(ヒドロキシ基)をもつソルビタン(∗2)を親水基としたモノエステル(∗3)であり、多価アルコールエステル型のソルビタン脂肪酸エステルに分類される分子量402.6の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、ソルビタンは四価アルコールです。

∗2 ソルビタンとは、ソルビトールの脱水反応により得られる無水ソルビトールであり、水酸基を4個もつ四価アルコールですが、実際にソルビトールを脱水反応させると、反応する水酸基の位置によっていろいろな異性体ができることから、一般的にソルビタンと呼ばれる化合物は各種ソルビタンの混合物であり、単一の化合物ではありません。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

パルミチン酸ソルビタンの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
6.7 W/O型乳化 撹拌により分散

このように報告されています(文献5:-;文献6:-)

パルミチン酸ソルビタンは、W/O型乳化剤(親油性界面活性剤)ですが、一般的にソルビタン脂肪酸エステルは単独で乳化剤として用いることはほとんどなく、他のO/W乳化剤(親水性乳化剤)と組み合わせてO/W型乳化剤・乳化安定剤として使用されます(文献7:1970)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1981-1998年および2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

パルミチン酸ソルビタンの配合製品数と配合量の調査結果(1981-1998年および2014年)

スポンサーリンク

パルミチン酸ソルビタンの安全性(刺激性・アレルギー)について

パルミチン酸ソルビタンの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1950年代からの使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [ヒト試験] 206人の被検者に4%パルミチン酸ソルビタンを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者に紅斑が観察され、別の1人の被検者に紅斑、丘疹および小胞が観察された。チャレンジパッチにおいては1回目は皮膚反応がみられなかったが、2回目では3人の被検者に紅斑が観察され、別の1人には紅斑および丘疹が観察された。この製品は皮膚一次刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Leo Winter Associates,1977)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に4%パルミチン酸ソルビタンを含む製品を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、累積皮膚刺激スコアを0-630のスケールで評価したところ、累積皮膚刺激スコアは80であり、この製品はわずかな累積刺激剤に分類された(Hill Top Research,1978)
  • [ヒト試験] 15人の被検者に4%パルミチン酸ソルビタンを含む製品を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、累積皮膚刺激スコアを0-630のスケールで評価したところ、累積皮膚刺激スコアは70.7であり、この製品はわずかな累積刺激剤に分類された(Hill Top Research,1977)
  • [ヒト試験] 9人の被検者に4%パルミチン酸ソルビタンを含む製品を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、累積皮膚刺激スコアを0-630のスケールで評価したところ、累積皮膚刺激スコアは47.78であり、この製品はわずかな累積刺激剤に分類された(Hill Top Research,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性はなしと報告されており、また皮膚一次刺激性および皮膚累積刺激性は非刺激-わずかと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられますが、皮膚一次刺激性および皮膚累積刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に30%パルミチン酸ソルビタン水溶液0.03mLを点眼し、3匹は眼をすすぎ、6匹は眼をすすがず、眼刺激性を7日目まで評価したところ、いずれのウサギも眼刺激は観察されなかった(J. F. Treon,1963)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に4%パルミチン酸ソルビタンを含むローション0.04mLを適用し、眼はすすがず、眼刺激性を7日目まで評価したところ、わずかな刺激が観察されたが、3日目までに消失した。この製品はウサギの眼に対して軽度の刺激剤であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

パルミチン酸ソルビタンは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Sorbitan Stearate, Sorbitan Laurate, Sorbitan Sesquioleate, Sorbitan Oleate, Sorbitan Tristearate, Sorbitan Palmitate, and Sorbitan Trioleate」Journal of the American College of Toxicology(4)(3),65-121.
  2. “Pubchem”(2019)「Sorbitan palmitate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sorbitan-palmitate> 2019年10月24日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL SP-10V」技術資料.
  6. クローダジャパン株式会社(-)「SP SPAN 40 MBAL」技術資料.
  7. 広田 博(1970)「多価アルコールエステル型」化粧品のための油脂・界面活性剤,120-125.

スポンサーリンク

TOPへ