デシルグルコシドとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
デシルグルコシド
[化粧品成分表示名称]
・デシルグルコシド

[医薬部外品表示名称]
・アルキル(8~16)グルコシド、オリゴブドウ糖デカノール配糖体液

化学構造的に炭素数10の高級アルコールであるデシルアルコール(∗1)とグルコースオリゴマー(∗2)のエーテル化物であり、多価アルコール縮合型(∗3)のアルキルグリコシド(∗4)に分類される分子量320.42の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 アルコール類のうち炭素数6以上一価アルコールが高級アルコールに分類されることからデシルアルコールは高級アルコールの一種であり、化学物質名として1-デカノール(1-Decanol)と呼ばれます。

∗2 オリゴマーとは、比較的少数のモノマー(単量体)が結合した重合体のことであり、デシルグルコシドを構成するグルコースオリゴマーは、1-2のグルコースが結合した重合体を指します。

∗3 グルコースは単糖であり、糖は多価アルコールの最初の酸化生成物であることから、非イオン界面活性剤の分類においては多価アルコール関連物質として多価アルコールに分類し、ここでは多価アルコール縮合型としています。

∗4 アルキルポリグリコシドとも呼ばれます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、ハンドソープ製品などに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、アルキルグリコシドは非イオン界面活性剤でありながら、すすぎ性に優れたさっぱりとした洗浄力を有しており、陰イオン界面活性剤と同等以上の起泡力および泡安定性・泡持続性を示すことが知られています(文献3:2006;文献4:1993;文献5:2014)

また、金属セッケンの分散能に優れ、硬水中でも使用でき、生分解性にも優れています(文献3:2006)

このような背景から、シャンプー製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、ハンドソープ製品などに使用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

デシルグルコシドの配合製品数と配合量の調査結果(2011年)

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デシルグルコシドの安全性(刺激性・アレルギー)について

デシルグルコシドの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有している場合):ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • タンパク変性:低い
  • 皮膚アミノ酸および脂質溶出性:低い

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に2%デシルグルコシド(pH6.5)を対象に24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、最小限の皮膚刺激剤であった(A. Mehling,2007)
  • [ヒト試験] 90人の被検者に0.5%デシルグルコシド水溶液40μLを対象に48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(M. Corazza,2010)
  • [ヒト試験] 103人の被検者に0.5%デシルグルコシドを含む日焼け製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(AMA Laboratories,2002)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に0.75%デシルグルコシドを含む日焼け製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(Clinical Research Laboratories Inc,2011)
  • [ヒト試験] 103人の被検者に1.8%デシルグルコシドを含むリキッドファンデーションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(Product Investigations Inc and Product,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [ヒト試験] アトピー性皮膚炎を有する15人の被検者に0.5%デシルグルコシド水溶液40μLを対象に48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(M. Corazza,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、皮膚炎を有する場合において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて3%デシルグルコシド水溶液(pH6.5)を処理したところ(HET-CAM法)、わずかな刺激性が予測された(A. Mehling,2007)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデルを用いて、モデル角膜表面に0.6%デシルグルコシド水溶液(pH7.0)を処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、眼刺激性は予測されなかった(A. Mehling,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

タンパク質変性について

アルキルグリコシドは、非イオン界面活性剤ではあるものの洗浄剤に応用されており、化粧品における洗浄剤の対象である毛髪や皮膚の最外層はケラチンタンパク質であるため、これらタンパク質に対するアルキルグリコシド類の影響は重要です。

花王のタンパク質変性試験データによると、

陰イオン界面活性剤であるラウレス硫酸Naと非イオン界面活性剤であるアルキルグリコシド類のタンパク質に対する変性作用を比較検証した。

水溶性タンパク質であるミオグロビンを用いてラウレス硫酸Na水溶液および各アルキルグリコシド水溶液を添加し、UV吸収量によってタンパク質量を測定したところ、ラウレス硫酸Na添加時ではUV吸収が減少し、タンパク変性が起きていることが確認されたが、アルキルグリコシド水溶液の添加では変化しないことが確認された。

このように報告されており(文献4:1993)、アルキルグリコシドはタンパク質変性に対して影響が少ないことが認められています。

この結果は、陰イオン界面活性剤が静電気的および疎水的な相互作用によってタンパク質に結合するのに対して、非イオン界面活性剤は疎水的相互作用および水素結合による結合であるため、結合エネルギーとしてタンパク質変性させるポテンシャルは、陰イオン界面活性剤のほうが高いためと考えられています(文献4:1993)

皮膚のアミノ酸および脂質溶出について

ラウリル硫酸Naなどに代表されるAS系は、皮膚の角質層において水分要素である天然保湿因子やバリア機能を構築しているコレステロール、また皮脂腺由来のスクワレンなどを多く溶出することが知られており、皮膚のアミノ酸や脂質を溶出する洗浄剤の連用はバリア機能の低下や皮膚の乾燥による落屑などにつながる可能性が高まることから、健常な皮膚構成成分の溶出性の低い洗浄剤を使用することが重要であると考えられています。

1993年に花王によって報告されたデシルグルコシドによる皮膚からのアミノ酸、脂質溶出の影響検証によると、

ヒト前腕部に、陰イオン界面活性剤としてラウリン酸Na(石鹸)およびラウレス硫酸Naを、アルキルグリコシドとしてデシルグルコシドおよびラウリルグルコシドを、比較対照としてを用いた洗浄試験を実施し、各溶液における皮膚のアミノ酸および脂質(スクワレン、コレステロール)溶出量を評価したところ、以下のグラフのように、

陰イオン界面活性剤とアルキルグリコシドのアミノ酸溶出量比較

陰イオン界面活性剤とアルキルグリコシドの脂質溶出量比較

アミノ酸溶出量はラウリン酸Naが、脂質溶出量はラウレス硫酸Naが最も高く、非イオン界面活性剤でありアルキルグリコシドであるデシルグルコシドはどちらも陰イオン界面活性剤よりも溶出量は低い値を示した。

このように報告されており(文献4:1993)、アルキルグリコシドは陰イオン界面活性剤と比較して皮膚からのアミノ酸および脂質類の溶出量が低いことが明らかにされています。

また、アルキルグリコシドは皮膚への吸着性も低いことが確認されています(文献4:1993)

∗∗∗

デシルグルコシドは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2013)「Safety Assessment of Decyl Glucoside and Other Alkyl Glucosides as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(32)(5 suppl),22S-48S.
  2. “Pubchem”(2019)「Decyl glucoside」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Decyl-glucoside> 2019年12月2日アクセス.
  3. 日光ケミカルズ(2006)「アルキルポリグルコシド」新化粧品原料ハンドブックⅠ,237-238.
  4. 亀谷 潤, 他(1993)「糖系非イオン性界面活性剤アルキルサッカライドの特性とシャンプーへの応用」日本化粧品技術者会誌(27)(3),255-266.
  5. 東西田 奈都子, 他(2014)「糖系非イオン性界面活性剤アルキルグルコシドの特性と応用」オレオサイエンス(14)(11),473-477.

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