テトラオレイン酸ソルベス-40とは…成分効果と毒性を解説

乳化 ヘアコンディショニング
テトラオレイン酸ソルベス-40
[化粧品成分表示名称]
・テトラオレイン酸ソルベス-40

[医薬部外品表示名称]
・テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるオレイン酸と、酸化エチレン(平均モル数40)を結合したソルビトールを結合して得られるテトラエステル(∗1)であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です。

∗1 「テトラ(tetra)」はギリシャ語で「4」を意味し、テトラエステルとは、4基のエステル結合のことをいいます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でシャンプー製品、ボディソープ製品、クレンジング製品、ボディケア製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献1:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献1:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献2:2015)

テトラオレイン酸ソルベス-40の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
10.0 , 12.5 O/W型乳化 透明分散物

このように報告されており(文献3:-;文献4:2017;文献5:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として主にボディソープ製品、クレンジング製品、ボディケア製品などに使用されています。

一般にクレンジング製品への配合はクレンジング基剤として(文献5:-)、ボディソープまたはボディケア製品への配合は保湿やエモリエント目的の植物油などを安定に可溶化する可溶化剤として配合されます(文献4:2017)

コアセルベート生成促進によるヘアコンディショニング作用

コアセルベート生成促進によるヘアコンディショニング作用に関しては、まず前提知識としてコアセルベートについて解説します。

シャンプーの主剤である陰イオン界面活性剤は、カチオン化高分子(∗2)との相互作用により、シャンプー希釈時にある濃度領域においてコアセルベーションと呼ばれる、溶質が均一に分散した状態から部分的に溶質が集合し溶質の多い領域と極めて少ない領域に分離する現象を起こすことが知られています(文献6:2015)

∗2 シャンプー製剤に陰イオン界面活性剤と組み合わせて配合される代表的なカチオン化高分子としてポリクオタニウム-10グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドなどがあります。

コアセルベーションおよびコアセルベート

このコアセルベーションによって分離した溶質の多い領域は、洗浄機能とコンディショニング機能をもつ複合体でコアセルベートと呼ばれており、コアセルベートはシリコーンや油性成分を取り込み、それらが毛髪表面に吸着することで、すすぎ時に毛髪へ滑らかさを付与し、コンディショニング効果を発現することが報告されています(文献6:2015;文献7:2004)

また、シャンプーには香料が配合されていますが、香料もコアセルベート中に取り込まれる傾向にあり、シャンプーの香り立ちや毛髪の残香はコアセルベートによって向上することが報告されています(文献8:2017)

実際のシャンプー剤においては、シャンプー塗布後の泡立て時には洗浄作用が発現し、その後、汚れをすすぎ流す過程で陰イオン界面活性剤の濃度が低下し希釈されることでコアセルベートが生成され、生成されたコアセルベートが毛髪に吸着し、コンディショニング効果が発現するように設計されています(文献9:2018;文献10:1989)

コアセルベートは陰イオン界面活性剤およびカチオン化高分子の相互作用のみで生成されますが、コカミドプロピルベタインココアンホ酢酸Naなどの両性界面活性剤を加えた3分子の相互作用とすることでコアセルベート生成量が増えることが広く知られており、製品においてはこの3種類を併用することが一般的です(∗3)

∗3 両性界面活性剤は、1種類よりも2種類を併用することでコアセルベートの生成量が増加することが明らかになっており、2種類が併用されている場合も多いです。

さらに、これら3分子に非イオン界面活性剤であるテトラオレイン酸ソルベス-40を添加することでコアセルベート形成が促進・増強されることが報告されていることから(文献4:2017)、シャンプー製品に陰イオン界面活性剤、カチオン化高分子、両性界面活性剤と組み合わせて配合されている場合は、コアセルベート形成促進・増強目的である可能性が考えられます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

テトラオレイン酸ソルベス-40の配合製品数と配合量の調査結果(2014-2015年)

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テトラオレイン酸ソルベス-40の安全性(刺激性・アレルギー)について

テトラオレイン酸ソルベス-40の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

試験データをみるかぎり、テトラオレイン酸ソルベス-30は皮膚刺激性および皮膚感作性がほとんどなく、化学構造的にテトラオレイン酸ソルベス-40はテトラオレイン酸ソルベス-30に類似していること、ならびに20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないことから、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

テトラオレイン酸ソルベス-40は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  2. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  3. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL GO-440V」技術資料.
  4. 日油株式会社(2017)「ユニオックスST-40E」技術資料.
  5. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX PESO-440」技術資料.
  6. 日油株式会社(2015)「毛髪洗浄剤組成物」特開2015-205834.
  7. 樋渡 佳子, 他(2004)「カチオン性高分子と界面活性剤のコアセルベートに関する研究」日本化粧品技術者会誌(38)(3),211-219.
  8. 兼井 典子, 他(2017)「毛髪への香料の付着に及ぼすカチオン性高分子と界面活性剤のコアセルベートの影響」日本化粧品技術者会誌(51)(4),311-316.
  9. 江連 美佳子(2018)「美しい髪をめざして-香粧品ができること-」日本香粧品学会誌(42)(1),15-20.
  10. 奥村 丈夫, 他(1989)「頭髪化粧品と毛髪」色材協会誌(62)(10),615-623.

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