セトリモニウムクロリドとは…成分効果と毒性を解説

帯電防止
セトリモニウムクロリド
[化粧品成分表示名称]
・セトリモニウムクロリド

[医薬部外品表示名称]
・塩化セチルトリメチルアンモニウム

化学構造的に炭素数16のアルキル基をもつ塩化アルキルトリメチルアンモニウムであり、第四級アンモニウム塩型のモノアルキル型四級アンモニウム塩に分類される分子量320の陽イオン界面活性剤(カチオン界面活性剤)です(文献3:2019)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でヘアコンディショナー、ヘアトリートメントなどに使用されています。

帯電防止

帯電防止に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

水道水やシャンプーは一般的に弱酸性(pH5-6)であることから、ぬれた毛髪の表面はマイナスに帯電しており、一方で陽イオン界面活性剤は以下の図のように、

陽イオン界面活性剤の構造図

親水基部分がプラスの荷電をもっている構造であることから、親水基部分がマイナスに帯電した毛髪表面に静電的に吸着します。

そして、疎水基(親油基)部分は外側を向くため、毛髪表面が親油基で覆われることでなめらかになり、その結果として静電気の発生をおさえ(帯電防止)、すすぎや乾燥後の摩擦を低減し、毛髪のくし通りがよくなります(文献4:1990;文献5:2010)

セトリモニウムクロリドは、代表的な陽イオン界面活性剤のひとつであり、帯電防止目的で同じく陽イオン界面活性剤のベヘントリモニウムクロリドおよび炭素数16-18の高級アルコール(∗1)と併用してヘアコンディショナー、ヘアトリートメントなどに使用されています。

∗1 高級アルコールとして主にセタノールセテアリルアルコールまたはステアリルアルコールのいずれかまたは複数が併用されます。

高級アルコールは、陽イオン界面活性剤ととの組み合わせによりゲル構造を形成し、効率よく毛髪に吸着し、塗布からすすぎにかけての毛髪のからみを効果的に除去し、滑らかさを増す役割を果たします(文献5:2010)

一般的に陽イオン界面活性剤と高級アルコールの配合比率は1:3から1:10の範囲であることから、成分表示名称一覧には高級アルコールが先に、陽イオン界面活性剤が後に記載されます。

またセトリモニウムクロリドは、溶剤としてエタノールまたはイソプロパノールで溶かし込んだものが原料であることが多いため、セトリモニウムクロリドが配合されている場合は、成分表示名称エタノールまたはイソプロパノールが記載されている可能性が考えられます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2009-2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

セトリモニウムクロリドの配合製品数と配合量の調査結果(2009-2010年)

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セトリモニウムクロリドの安全性(刺激性・アレルギー)について

セトリモニウムクロリドの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1970年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:1.6%濃度以下においてほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:1%濃度以下において非刺激-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、ヘアケア製品のみに配合されることから、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1997;文献2:2012)によると、

  • [ヒト試験] 114人の被検者に0.25%セトリモニウムクロリドを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において何人かの被検者に軽度の皮膚刺激が観察されたが、試験を通じていずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Hill Top Research Inc,1983)
  • [ヒト試験] 101人の被検者に1.6%セトリモニウムクロリド(25%活性)を含むヘアコンディショナー製剤の10%水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において3人の被検者に丘疹および/または浮腫をともなう一過性の紅斑が観察されたが、試験を通じていずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Hill Top Research Inc,1984)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に1.6%セトリモニウムクロリド(25%活性)を含むヘアコンディショナー製剤の10%水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において1人の被検者にわずかな皮膚刺激が観察されたが、試験を通じていずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Hill Top Research Inc,1984)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に0.5%セトリモニウムクロリドを含むヘアコンディショナー製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間においてわずかな皮膚刺激が観察されたが、試験を通じていずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Hill Top Research Inc,2002)
  • [ヒト試験] 105人の被検者に0.5%セトリモニウムクロリドを含むヘアジェル製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(Institut D’Expertise Clinique,2008)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されており、また1.6%濃度以下において非刺激-わずかな皮膚刺激が報告されていることから、1.6%濃度以下において皮膚感作性はほとんどなく、皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性が考えられます。

ただし、セトリモニウムクロリドはヘアケア製品のみに配合されることから、化粧品配合量およびヘアケア製品としての通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1997)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.1%-2.5%セトリモニウムクロリド水溶液0.1mLを点眼し、点眼24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、以下の表のように、
    濃度
    (%)
    刺激の種類(最大スコア) 観察時点
    24時間 48時間 72時間
    0.1 角膜(4) 0.00 0.00 0.00
    虹彩(2) 0.00 0.00 0.00
    ケモーシス(4) 1.00 0.05 0.00
    結膜発赤(3) 0.50 0.00 0.00
    0.5 角膜(4) 0.05 0.00 0.00
    虹彩(2) 0.25 0.00 0.00
    ケモーシス(4) 1.50 1.25 0.00
    結膜発赤(3) 1.25 0.50 0.00
    1.2 角膜(4) 1.25 0.75 0.00
    虹彩(2) 1.50 1.00 0.50
    ケモーシス(4) 2.75 1.75 1.25
    結膜発赤(3) 1.00 0.75 0.25
    2.5 角膜(4) 2.75 1.50 0.75
    虹彩(2) 2.25 1.25 1.00
    ケモーシス(4) 4.00 2.75 1.75
    結膜発赤(3) 3.50 2.25 1.75

    0.1%濃度付近ではほとんど眼刺激はなく、濃度依存的に眼刺激性が高くなった(Danochemo,1983)

  • [動物試験] 2匹のウサギの片眼に1%および10%セトリモニウムクロリド0.2mLを点眼し、1,24および48時間後に眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、1%および10%セトリモニウムクロリドの眼刺激スコアはそれぞれ3.6および47.5であった(Armour Industrial Chemicals Company,1967)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1%濃度以下において非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、1%濃度以下において眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

また、濃度依存的に眼刺激性が高くなる傾向がみられます。

∗∗∗

セトリモニウムクロリドは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1997)「Final Report on the Safety Assessment of Cetrimonium Chloride, Cetrimonium Bromide, and Steartrimonium Chloride」International Journal of Toxicology(16)(3),195-220.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2012)「Safety Assessment of Trimoniums as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(31)(6 Suppl),296S-341S.
  3. “Pubchem”(2019)「Hexadecyltrimethylammonium chloride」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Hexadecyltrimethylammonium-chloride> 2019年12月13日アクセス.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  5. 鐵 真希男(2010)「コンディショナーの配合成分と製剤」化学と教育(58)(11),536-537.

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