セテス-20とは…成分効果と毒性を解説


・セテス-20
[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
化学構造的に炭素数16の高級アルコールであるセタノールに酸化エチレン(約20モル)をエーテル結合して得られるエーテルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンアルキルエーテルに分類される分子量1123.48の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献1:2012)。
一般的に化粧品によく使用されているポリオキシエチレンセチルエーテルは、
種類 | 平均酸化エチレン付加モル数 | HLB(∗1) |
---|---|---|
セテス-6 | 6 | 親油性 ↑ ↓ |
セテス-10 | 10 | |
セテス-15 | 15 | |
セテス-20 | 20 |
∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。
これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため(文献3:1990)、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレンセチルエーテルが配合されています。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的でスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、シャンプー製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、ヘアスタイリング製品、ヘアカラー剤などに使用されています。
乳化
乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。
乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献4:1990)。
そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、
水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献4:1990)。
身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。
また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、
HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献5:2015)。
セテス-20の特性は、
HLB | 作用 | 分散・溶解性 |
---|---|---|
14.0 , 15.7 , 17.0 | O/W型乳化 , 洗浄 , 可溶化 | 透明溶液 |
このように報告されており(文献6:-;文献7:-;文献8:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として主にスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、シャンプー製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、ヘアスタイリング製品、ヘアカラー剤に使用されています。
混合乳化剤としてのセテス-20
セテス-20は、他の乳化剤と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、セテス-20と以下の成分が併用されている場合は、混合系乳化剤として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | EMALEX ML-158 | HLB | – |
---|---|---|---|
構成成分 | トリイソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、セテス-20 | ||
特徴・主な用途 | マイクロエマルション用の乳化剤混合物であり、主に化粧水、ヘアケア製品に配合 |
原料名 | EMULCIRE 61 WL 2659 CG | HLB | 10.0 |
---|---|---|---|
構成成分 | セタノール、セテス-20、ステアレス-20 | ||
特徴・主な用途 | 安定性に優れたクリーム用O/W乳化剤であり、主にクリームに配合 |
原料名 | TEFOSE HC | HLB | 10.5 |
---|---|---|---|
構成成分 | セタノール、ステアリン酸グリセリル、セテス-20、ステアレス-20 | ||
特徴・主な用途 | チオグリコール酸アンモニウムなども配合できるヘアケア用O/W乳化剤であり、主にヘアケア製品に配合 |
原料名 | TEFOSE 2000 CG | HLB | 10.0 |
---|---|---|---|
構成成分 | ステアリン酸PEG-6、セテス-20、ステアレス-20 | ||
特徴・主な用途 | 乳液またはスプレー用O/W乳化剤であり、主に乳液、スプレー製品に配合 |
原料名 | TEFOSE 2561 CG | HLB | 10.0 |
---|---|---|---|
構成成分 | ステアリン酸PEG-6、ステアリン酸グリセリル、セテス-20、ステアレス-20 | ||
特徴・主な用途 | 乳液またはクリーム用O/W乳化剤であり、主に乳液、クリーム製品に配合 |
原料名 | EMULIUM DELTA MB | HLB | 9.0 |
---|---|---|---|
構成成分 | セタノール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG-75、セテス-20、ステアレス-20 | ||
特徴・主な用途 | 液晶構造を形成し、比較的乳化が難しい活性成分を安定乳化するO/W乳化剤 |
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1996年および2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
セテス-20の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 1960年代からの使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
- [ヒト試験] 200人の被検者に60%セテス-20水溶液を72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった
- [ヒト試験] 200人の被検者に60%セテス-20水溶液を72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去から7日後に再び72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
- [動物試験] ウサギの片眼に60%セテス-20水溶液を点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、洗眼の有無にかかわらず、いずれのウサギにも眼刺激はみられなかった
と記載されています。
試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。
∗∗∗
セテス-20は界面活性剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:界面活性剤
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2012)「Safety Assessment of Alkyl PEG Ethers as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(31)(5),169S-244S.
- 日光ケミカルズ株式会社(2016)「NIKKOL BC-20」安全データシート.
- 田村 健夫, 他(1990)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
- 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
- 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
- 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX 120」技術資料.
- 日油株式会社(-)「ノニオンP-220」技術資料.
- 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL BC-20」技術資料.
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