セスキステアリン酸ソルビタンとは…成分効果と毒性を解説

乳化
セスキステアリン酸ソルビタン
[化粧品成分表示名称]
・セスキステアリン酸ソルビタン

[医薬部外品表示名称]
・セスキステアリン酸ソルビタン

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるステアリン酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、4個の水酸基(ヒドロキシ基)をもつソルビタン(∗2)を親水基としたモノエステルおよびジエステル(∗3)(∗4)の混合物であり、多価アルコールエステル型のソルビタン脂肪酸エステルに分類される分子量1061.4の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、ソルビタンは四価アルコールです。

∗2 ソルビタンとは、ソルビトールの脱水反応により得られる無水ソルビトールであり、水酸基を4個もつ四価アルコールですが、実際にソルビトールを脱水反応させると、反応する水酸基の位置によっていろいろな異性体ができることから、一般的にソルビタンと呼ばれる化合物は各種ソルビタンの混合物であり、単一の化合物ではありません。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

∗4 セスキステアリン酸ソルビタンの「セスキ」とはギリシャ語で1.5(2分の3)を意味し、「セスキステアリン酸ソルビタン」の名称から読み解くことが可能な化学構造としては、ソルビタン1モル:ステアリン酸1.5モルのエステル化による混合物と推測されますが、これは化学上ありえないため、実際はモノとジエステルのみの混合物ではなく、未反応物とトリ(3基)以上のエステルの総和となっていると考えられます(文献3:1980)。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献4:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献4:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献5:2015)

セスキステアリン酸ソルビタンの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
4.2 W/O型乳化 わずかに分散

このように報告されています(文献6:-)

セスキステアリン酸ソルビタンは、不飽和脂肪酸を含まないため酸化安定性に優れたW/O型乳化剤(親油性界面活性剤)ですが、一般的にソルビタン脂肪酸エステルは単独で乳化剤として用いることはほとんどなく、他のO/W乳化剤(親水性乳化剤)と組み合わせてO/W型乳化剤・乳化安定剤として使用されます(文献7:1970)

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セスキステアリン酸ソルビタンの安全性(刺激性・アレルギー)について

セスキステアリン酸ソルビタンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1950年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

日光ケミカルズの安全性データ(文献1:2018)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に30%セスキステアリン酸ソルビタン水溶液を対象に閉塞パッチ試験を実施し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者もこの試験物質に対して皮膚刺激反応を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日光ケミカルズの安全性データ(文献1:2018)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に30%セスキステアリン酸ソルビタン水溶液0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて点眼後に眼刺激性を評価したところ、洗眼および非洗眼にかかわらず、この試験物質は無刺激であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、60年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

セスキステアリン酸ソルビタンは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ株式会社(2018)「NIKKOL SS-15V」安全データシート.
  2. “Pubchem”(2019)「Sorbitan, octadecanoate (2:3)」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sorbitan_-octadecanoate-_2_3> 2019年10月24日アクセス.
  3. 松本 光雄(1980)「界面活性剤」ファルマシア(16)(6),512-515.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  5. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  6. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL SS-15V」技術資料.
  7. 広田 博(1970)「多価アルコールエステル型」化粧品のための油脂・界面活性剤,120-125.

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