スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaとは…成分効果と毒性を解説

分散 乳化
スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa
[化粧品成分表示名称]
・スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa

[医薬部外品表示名称]
・スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)ナトリウム液

化学構造的にスルホコハク酸と高級アルコールの一種である2-エチルヘキシルアルコールのジエステル(∗1)のナトリウム塩であり、アルキルスルホコハク酸塩(Alkyl Sulfosuccinate)に分類される分子量422.6の陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です(文献3:2019)

∗1 ジエステルとは、分子内に2基のエステル結合を持つエステルのことです。

アルキルスルホコハク酸塩にはモノエステル型とジエステル型があり、ジエステル型はエタノールや多価アルコールなど有機溶剤によく溶け、また化学構造的にスルホコハク酸の親水基が分子の中央に存在するため浸透力が大きく、中でもジ2-エチルヘキシルエステル塩はアルキルが分岐していることから陰イオン界面活性剤の中でも最大の浸透力を示すのが特徴です(文献4:2006)

また、疎水基の中央にスルホコハク酸の親水基が存在する変わった構造であることから、陰イオン界面活性剤でありながら洗浄性をほとんど示さないことも特徴のひとつです(文献5:2007)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、アイ系メイクアップ化粧品、ネイル製品などに使用されています。

分散

分散に関しては、エタノールや多価アルコールなどの有機溶剤によく溶け、また油剤にもよく溶けることから、顔料の分散剤としてアイライナーやアイブローなどのアイ系メイクアップ化粧品、マニキュアなどのネイル製品などに配合されます(文献4:2006)

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献6:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献6:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは、アルキルスルホコハク酸塩のジエステル型であり、油に溶けやすく、また油に対する界面張力が小さく、液晶構造をつくりやすいことなどから、O/W型エマルションの調製に用いられます(文献4:2006)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1995年および2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの配合製品数と配合量の調査結果(1995年および2013年)

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スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの安全性(刺激性・アレルギー)について

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1930年代からの使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし-中程度
  • 眼刺激性:10%濃度以下において非刺激-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998;文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に2.5%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製剤を対象に24時間閉塞パッチを適用し、パッチ除去24および48時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さなかった(Gesellschaft für Therapie-und Leistungsforschung,1994)
  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)に2.94%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む4つの製剤を対象に4日間累積刺激性試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を評価したところ、それぞれの製剤のPIIは0.25,0.30,0.80および0.38であり、また0.25%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む2つの製剤のPIIは1.78および1.85であり、さらに0.1%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製剤のPIIは0.04であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 7人の被検者に1.13%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象に21日間累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施し、日々の皮膚刺激性を0-4のスケールで評価したところ、21日間の7人の被検者の総合累積刺激スコアは最大578のうち324であった。被検者1人の平均スコアは最大84のうち46.3であり、被検者のうち最小スコアは15、最大スコアは73であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に0.42%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において4人の被検者に軽度の紅斑が観察されたが、チャレンジ期間においてはいずれの被検者も皮膚反応はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 94人の被検者に0.21%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において27人の被検者にほとんど知覚できないレベルから軽度の紅斑が観察され、チャレンジ期間では5人の被検者にほとんど知覚できないレベルの紅斑が観察された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 94人の被検者に0.1%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において4人の被検者にほとんど知覚できないレベルの紅斑が観察されたが、チャレンジ期間ではいずれの被検者も皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に2.5%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む軟膏0.3gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において11人の被検者に軽度の紅斑が観察されたが、チャレンジ期間ではいずれの被検者も皮膚反応は観察されなかった(European Commission,2013)

– 個別事例 –

  • [個別事例] 1人の女性患者は局所コルチコステロイドの単一皮膚用量成分の後に皮膚刺激が観察されたため、パッチテストを実施したところ、1%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa水溶液に対して+++の反応を示した。これはまれな反応であることが指摘された(AY Lee et al,1998)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、個別事例を除いて皮膚感作の報告はありませんが、非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、皮膚感作性はほとんどありませんが、皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

また、最小限-中程度の累積刺激が報告されているため、非刺激-中程度の皮膚累積刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に10%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含むPG溶液を点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、最小限の眼刺激性に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)
  • [動物試験] ウサギの片眼に0.1%,0.25%,0.5%および1%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを1日1回6日間にわたって点眼したところ、0.1%濃度の単回適用は影響がなく、反復投与は軽度の結膜刺激が生じたものの24時間以内に消失した。0.5%濃度の単回適用は結膜充血、浮腫、上皮の弛緩、わずかな角膜の染色を生じ、反復適用はこれらの影響が増したが、48時間以内には影響は消失した。1%濃度の単回適用は結膜充血、上皮の弛緩、眼瞼痙攣、角膜の曇りと染色がみられたが24時間以内に消失し、反復適用では同様の影響を生じたが72時間以内に消失した(Leopold,1945)
  • [動物試験] 3匹のウサギの両眼にスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを数滴点眼し、右眼は点眼30秒後にすすぎ、左眼はすすがず、1,24時間および48時間および7日後に眼刺激性を評価したところ、1%濃度は両眼にほとんどまたはまったく影響を与えなかった。5%濃度は両眼で同様の最小限の刺激が観察されたが、1週間以内に消失し、角膜の損傷はなかった。25%濃度はすすがれた眼では5%よりわずかに強い刺激が観察され、すすいでいない眼では角膜損傷および視力傷害などの重篤な影響が生じた(Olson et al,1962)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、10%濃度以下において非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、10%濃度以下において非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.25%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間を通じて光感作の兆候はみられなかった((Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1991)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1998)「Amended Final Report On the Safety Assessment of Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」International Journal of Toxicology(17)(4),1-20.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Dialkyl Sulfosuccinate Salts as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(35)(3),34S-46S.
  3. “Pubchem”(2019)「Sodium dioctyl sulfosuccinate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sodium-dioctyl-sulfosuccinate> 2019年10月11日アクセス.
  4. 日光ケミカルズ(2006)「アルキルスルホコハク酸塩」新化粧品原料ハンドブックⅠ,188-189.
  5. 藤本 武彦(2007)「ジアルキルスルホこはく酸エステル塩」界面活性剤入門,89-91.
  6. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.

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