スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaとは…成分効果と毒性を解説

界面活性剤 分散剤
スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa
[化粧品成分表示名称]
・スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa

[医薬部外品表示名称]
・スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)ナトリウム液

スルホコハク酸と2-エチルヘキシルアルコールのジエステルのナトリウム塩で、油溶性の陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

水に溶けにくい物質を水に溶解させる性質の乳化剤および分散剤で、界面活性剤の中でも特に優れた浸透力を有しています。

化粧品に配合される場合は、主に油分の少ない水性のメイクアップ化粧品に使用されます。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの配合比較調査(1984-2013年)

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スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの現時点での安全性は、皮膚一次刺激はほとんどありませんが、累積刺激が起こる可能性があり、眼刺激性は一過性の最小限の眼刺激が起こる可能性がありますが、皮膚感作性(アレルギー性)および光感作性はほとんどなく、安全性に問題ないと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Final Report on the Safety Assessment of Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 正常な皮膚を有する8人および非炎症性皮膚疾患を有する10人のボランティアにスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品のパッチテストを実施したところ、1%および10%濃度は刺激反応およびアレルギー反応を生じなかったが、100%濃度(未希釈)の製品は18人のうち12人が刺激反応を引き起こした(Staniforth and Lovell,1981)
  • [ヒト試験] 50人の被検者の上背部または腕に2.5%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製剤を単一24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24および48時間後に試験部位を評価したところ、反応は認められなかった(GTLF,1994)
  • [ヒト試験] 7人の被検者を用いて1.13%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa溶液の21日間の累積刺激試験において閉塞パッチを同じ部位に毎日適用し、0~4のスケールで毎日スコアリングしたところ、7人の21日間の総刺激スコアは最大578のうち324で、1人あたりの平均スコアは最大84のうち46.3であった。最も刺激スコアが低かった被検者のスコアは15で、最も刺激スコアが高かった被検者のスコアは73であった(CTFA,1991)

と記載されています。

試験結果では10%濃度以下で共通して皮膚一次刺激なしと報告されていますが、累積刺激は1%濃度でも報告されているため、皮膚刺激性は10%濃度以下で一次刺激はほとんどありませんが、1%濃度以上で累積刺激(∗2)が起こる可能性があると考えられます。

∗2 累積刺激とは、最初は刺激を感じなくても毎日連続して使うことで刺激が蓄積していき、ある日刺激を感じるタイプの刺激です。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Final Report on the Safety Assessment of Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」(文献1:1998)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いて10%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa溶液をDraize法に準じた眼刺激性試験で評価したところ、眼刺激は最小限であった(CTFA,1991)
  • [動物試験] ウサギの眼に0.1%,0.25%,0.5%,1%および100%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを1日1回6日間にわたって点眼された100%濃度を除くすべての濃度で6日間にわたって1日に1回2滴または1日4回2滴の反復投与したところ、0.1%濃度の単回適用は影響がなく、反復投与は軽度の結膜刺激が生じたものの24時間以内に消失した。0.5%濃度で単回適用は結膜充血、浮腫、上皮の弛緩、わずかな角膜の染色を生じ、反復使用はこれらの影響が増したが、48時間以内には影響は消失した。1%濃度の単回適用は結膜充血、上皮の弛緩、眼瞼痙攣、角膜の曇りと染色がみられたが24時間以内に消失し、反復投与では同様の影響を生じたが72時間以内に消失した。100%濃度の単回投与は、結膜刺激、浮腫、上皮の脱落、角膜の曇りおよび染色を生じたが、1週間以内に大部分は消失した(Leopold,1945)
  • [動物試験] 3匹のウサギの両眼にスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを数滴点眼し、右眼は点眼30秒後にすすぎ、左眼はすすがず、両眼を1,24時間および48時間および7日で評価したところ、1%濃度は両眼にほとんどまたはまったく影響を与えなかった。5%濃度は両眼で同様の最小限の刺激が観察されたが、1週間以内に消失し、角膜の損傷はなかった。25%濃度はすすがれた眼では5%よりわずかに強い刺激が観察され、すすいでいない眼では角膜損傷および視力傷害などの重篤な影響が生じた(Olson et al.,1962)

と記載されています。

試験結果では10%濃度以下ではほとんど共通で最小限の眼刺激性と報告されているため、眼刺激性は10%濃度以下で一過性の最小限の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Final Report on the Safety Assessment of Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 110人の被検者を用いてスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの感作性を評価した。誘導期間において試験物質0.2mLを24時間半閉塞パッチ適用し、48時間おきに合計9回繰り返された。14日の無処置期間を設けた後に24時間チャレンジパッチを未処置部位に適用し、パッチ除去24および48時間後に試験部位を評価したところ、誘導期間の1%濃度のパッチ適用では110人のうち17人に周辺の皮膚とはわずかに異なる最小限の反応が観察されたが、これらの反応はとくに重大なものではなかった。チャレンジ期間においては反応はなかった。3%濃度では誘導期間において110人のうち最初のパッチ適用で2人および最後(9回目)のパッチ適用では32人の被検者に最小限の反応が観察された。チャレンジ期間においては反応がなかった。5%濃度では誘導期間において110人のうち最初のパッチ適用で8人および最後(9回目)のパッチ適用では65人の被検者に最小限の反応が観察された。チャレンジ期間においては反応がなかった((TKL Research Inc.,1994)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に2.5%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含むアイブロウペンシルの50%水溶液の感作性を評価した。誘導期間において各被検者の背中に試験物質を48時間、週3回3週間にわたって合計10回適用し、パッチ除去時点で部位を評価した。12日間の無処置期間を経た後に48時間チャレンジパッチを未処置部位に適用し、適用48および72時間後に部位を評価した。誘導期間において107人のうち20人の被検者に少なくとも1つの反応が観察された。チャレンジ期間には反応がなかった((International Research Services Inc.,1995)
  • [ヒト試験] 100人の被検者を用いた0.42%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製品の感作性試験において、誘導期間中に各被検者の背中に試験物質0.2mLを24時間閉塞パッチ適用を3週間にわたって合計9回繰り返した。2週間の休息期間の後に同じ部位にチャレンジパッチを適用し、別のパッチを適用する前に試験部位を評価したところ、100人のうち4人は誘導期間の最後に軽度の紅斑を有していたが、いずれの被検者もチャレンジパッチに対しる反応はなかった((CTFA,1991)

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Dialkyl Sulfosuccinate Salts as Used in Cosmetics」(文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] 100人の被検者の背中または前腕に誘導期間において2.5%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含むワセリン0.3gを24時間おきに合計10回閉塞パッチ適用し、7日間の無処置期間の後に未処置部位に24時間チャレンジパッチを適用し、チャレンジ部位はパッチ除去後に評価された。誘導期間において3~10日の間に11人が軽度の紅斑を示し、その中の1人は3~7日に終日軽度の紅斑がみられ、7日に限っては重度の紅斑であった。その中の6人は3~7日は軽度の紅斑が続き、7~10日には激しい紅斑が生じた。チャレンジ期間では反応は観察されなかった((European Commission,2013)
  • [個別事例] 症例報告では、女性患者の一人がスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaからアレルギー接触性皮膚炎を生じた。パッチテストでは1%濃度水溶液に対して+++の反応を示し、スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは2日目および4日目に投与した。これはまれな反応であることを指摘した

と記載されています。

試験結果は共通して皮膚感作性ではないと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、ごくまれにアレルギー接触皮膚炎の発症事例が報告されています。

光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Final Report on the Safety Assessment of Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者を用いて0.25%スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaを含む製剤の光接触アレルギーの可能性を評価する試験を実施した。誘導期間において各被検者に試験物質10μL/cmを2×2cm領域に24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にその部位に3MED(最小紅斑線量)を照射し、この手順を週2回合計6回繰り返した。10~14日の休息期間の後に未処置部位に24時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去後1つの領域にUVAを照射したところ、誘導期間およびチャレンジ期間の両方でスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaに起因する誘発はなかった((CTFA,1991)

と記載されています。

試験結果では光感作性ではないと報告されているため、光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa ■■

参考までに化粧品毒性判定事典によると、スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは■■(∗3)となっていますが、これは界面活性剤共通の判定です。

100%濃度では刺激性が高いのも事実ですが、5%濃度以下では刺激性はほとんどなく、化粧品に配合される場合は5%以下であるため、事実上安全性に問題ないと考えられます。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1998)「Amended Final Report on the Safety Assessment of Dioctyl Sodium Sulfosuccinate 」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/109158189801700403> 2018年3月6日アクセス.
  2. “Cosmetic Ingredient Review”(2016)「Safety Assessment of Dialkyl Sulfosuccinate Salts as Used in Cosmetics」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1091581816673808> 2018年3月6日アクセス.

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