ステアロイルラクチレートNaとは…成分効果と毒性を解説

乳化
ステアロイルラクチレートNa
[化粧品成分表示名称]
・ステアロイルラクチレートNa(改正名称)
・ステアロイル乳酸Na(旧称)

[医薬部外品表示名称]
・ステアロイルナトリウム

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるステアリン酸乳酸の2量体(∗1)のナトリウム塩をエステル化して得られる、AL(Acyl Lactate:アシル乳酸塩)に分類される分子量450.6の陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 2量体とは、2つの同種の分子や単量体が物理的・化学的な力によって結合・重合した化合物のことです。

食品分野では生地の伸び、発酵の安定性および機械耐性の向上目的でパンに、表面のつるつる感およびほぐれ性向上目的で麺に広く使用されています(文献5:-)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シャンプー製品、洗顔料、クレンジング製品、シート製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます。

ステアロイルラクチレートNaの乳化特性は、

HLB エマルションの種類 可溶化
9.5 O/W型

このように報告されています(文献6:-)

ステアロイルラクチレートNaは、主に表皮のラメラ層を形成するように調整されたセラミドのプレミックス原料に配合されていることから、セラミドNG(セラミド2)、セラミドNP(セラミド3)のいずれかまたはセラミドAP(セラミド6Ⅱ)を含むすべてと一緒に化粧品成分一覧に記載されている場合は、セラミドプレミックスによる配合であると考えられます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2017-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ステアロイルラクチレートNaの配合製品数と配合量の調査結果(2017-2019年)

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ステアロイルラクチレートNaの安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアロイルラクチレートNaの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2019)によると、

  • [動物試験] ウサギに未希釈のステアロイルラクチレートNaを対象に皮膚刺激性試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-4.0のスケールで評価したところ、0.5であった(L. J. Murphy et al,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギに未希釈のステアロイルラクチレートNa0.5gを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ適用24および72時間後に皮膚反応を評価したところ、24時間で無傷の5箇所および擦過した5箇所にわずかな紅斑が観察され、72時間で無傷の1箇所および擦過した1箇所に非常にわずかな紅斑が観察された。PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-4.0のスケールで評価したところ、0.5であり、この試験物質は皮膚一次刺激剤および腐食剤ではなかった(International Bio-Research Inc,1974)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2019)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に未希釈のステアロイルラクチレートNaを適用し、眼刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激性に分類された(L. J. Murphy et al,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2019)によると、

  • [動物試験] 20匹のモルモットに1.5%ステアロイルラクチレートNaを含むシリコーン消泡剤水溶液0.5mLを対象に皮膚感作性試験(Buehler法)を実施したところ、試験期間においていずれのモルモットの皮膚感作反応はなく、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(Research Toxicology Centre S.p.A,1995)

– 個別事例 –

  • [個別事例] 掌蹠膿疱症および手足に慢性皮膚炎を有する女性患者は、自身が使用していた化粧品を成分単位でパッチテストしたところ、5%ステアロイルラクチレートNaを含むワセリンを対象としたパッチテストにおいて陽性反応を示したため、2%ステアロイルラクチレートNaを含むワセリンで再テストしたところ、+の反応が観察された(C. D. Jensen et al,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ステアロイルラクチレートNaは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2019)「Safety Assessment of Alkanoyl Lactyl Lactate Salts as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. “Pubchem”(2019)「Sodium stearoyl-2-lactylate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sodium-stearoyl-2-lactylate> 2019年9月5日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. Corbin(2017)「Esterlac SSL」技術資料.
  5. 株式会社武蔵野化学研究所(-)「ステアロイル乳酸ナトリウム SSL-B」技術資料.
  6. 日光ケミカルズ(-)「ステアロイル乳酸ナトリウム」技術資料.

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