ステアロイルメチルタウリンNaとは…成分効果と毒性を解説

乳化
ステアロイルメチルタウリンNa
[化粧品成分表示名称]
・ステアロイルメチルタウリンNa

[医薬部外品表示名称]
・N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるステアリン酸の塩化物とN-メチルタウリン(∗1)を縮合(∗2)して得られるステアロイルメチルタウリンのナトリウム塩であり、タウリン系界面活性剤のAMT(Acyl Methyl Taurate:アシルメチルタウリン塩)に分類される分子量427.6の陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です(文献1:2019)

∗1 アミノ酸は、化学的にアミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称であり、タウリンは化学構造としてカルボキシル基を持たないことから厳密にはアミノ酸ではなく、したがってメチルタウリンと高級脂肪酸塩を骨格とする陰イオン界面活性剤は、厳密にはアミノ酸系界面活性剤ではないといえます。ただし、タウリンは体内では含硫アミノ酸であるシステイン代謝により生合成されることから、栄養学をはじめタウリンを含硫アミノ酸に分類していることも多く、そういった背景から一般的にはアミノ酸の一種として説明されていることも多いです。

∗2 縮合(縮合反応)とは、同種または異種2分子から、水・アルコールなどの簡単な分子を分離することで新たに化合物をつくる反応のことです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、ジェル系クレンジング製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献2:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献2:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます。

ステアロイルメチルタウリンNaの乳化特性は、

HLB エマルションの種類 可溶化
O/W型

このように報告されています(文献3:1990)

ステアロイルメチルタウリンNaは陰イオン界面活性剤ですが、脂肪酸鎖長の長いステアリン酸(炭素数18)をもっており、それゆえクラフト点が58℃と高いことから(文献3:1990)、洗浄性および起泡性が発揮されることはなく、一般的に乳化剤として使用されています。

また、耐塩性に優れており、電解質(∗3)と相性が良く、電解質を含む乳化物において乳化安定性が高いことから(文献4:2010)、主にビタミンC誘導体、アミノ酸類およびPCA類といった電解質を含む製品の乳化剤として汎用されています(∗4)

∗3 電解質とは、水に溶けると電気を通す物質(イオン)のことであり、電解質をO/Wエマルション製剤に多量に配合すると、乳化粒子が凝集するため保存安定性が著しく損なわれることから、電解質を含む乳化には技術的考慮または電解質と相性の良い乳化剤が必要になります(文献4:2010)。

∗4 アミノ酸類はアミノ酸だけでなく、たとえばラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)などアミノ酸誘導体も含みます。またPCA類に関しては、保湿成分でありNMF成分であるPCA-Naが代表的なPCA類です。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ステアロイルメチルタウリンNaの配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

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ステアロイルメチルタウリンNaの安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアロイルメチルタウリンNaの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、安全性に問題がなく乳化剤として汎用されているステアロイルグルタミン酸Naと化学構造的に類似しており、30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

ステアロイルメチルタウリンNaは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. “Pubchem”(2019)「Ethanesulfonic acid, 2-[methyl(1-oxooctadecyl)amino]-, sodium salt」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/23667652> 2019年9月9日アクセス.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  3. 宮澤 清, 他(1990)「頭皮・頭髪用洗浄剤(シャンプー) としてのN-アシル-N-メチルタウリン(AMT)の開発と工業化」油化学(39)(11),925-930.
  4. 小澤 祐子, 他(2010)「電解質を配合した超低粘性O/Wエマルション製剤の開発」日本化粧品技術者会誌(44)(1),34-40.

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