ステアルトリモニウムクロリドとは…成分効果と毒性を解説

界面活性剤 帯電防止
ステアルトリモニウムクロリド
[化粧品成分表示名称]
・ステアルトリモニウムクロリド

[医薬部外品表示名称]
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム

脂肪酸のステアリルアミンまたはステアリルジメチルアミンに陽イオンをつけてつくられる4級カチオン界面活性剤(陽イオン界面活性剤)です。

化粧品に配合する場合、帯電防止効果(∗1)、洗浄効果、弱い殺菌効果などがあり、毛髪をしなやかにする柔軟作用を有するため主にヘアリンスやヘアトリートメントなどのヘアコンディショニング剤に広く使用されています。

∗1 静電気を防ぐ効果。

毛髪の表面は「-」に帯電しているため、陽イオンの「+」が吸着しやすい状態で、軽く塗布してすすぐだけでも毛髪がしなやかになるのがわかります。

実際の配合製品数や配合量の範囲は、海外の2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ステアルトリモニウムクロリドの配合製品数と配合量の調査

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ステアルトリモニウムクロリドの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ステアルトリモニウムクロリドの現時点での安全性は、洗浄製品での通常使用において、皮膚刺激性はほとんどなく、重度の眼刺激性はあるものの、重大なアレルギー(皮膚感作)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

ステアルトリモニウムクロリドは、1時間以上の皮膚への適用または20%以上高濃度配合の場合は、皮膚刺激が起こる可能性がありますが、ヘアコンディショナーやトリートメント、寝ぐせ直しなど毛髪につける製品に配合されている場合は問題ないと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Trimoniums as Used in Cosmetics」(文献2:2012)によると、

  • [動物試験] ウサギの剃毛した皮膚に79.2%ステアルトリモニウムクロリド0.5gを半閉塞パッチ下で3分および1時間単一適用したところ、1時間適用したウサギでは22日目までグレード2の紅斑が観察され、7日目まではグレード1の浮腫がみられ、22日目にピンク色の新しい皮膚と傷跡が認められた。3分適用したウサギについては紅斑および浮腫は観察されなかった。79.2%ステアルトリモニウムクロリドは1時間の適用では刺激性であったが、3分の適用では刺激性ではないと結論づけた
  • [動物試験] 3匹のウサギの剃毛した皮膚に2%および20%ステアルトリモニウムクロリド0.5mLを半閉塞パッチで4時間適用したところ、20%ではグレード2の紅斑が72時間まで続き、7日目に痂皮形成がみられ、グレード1の浮腫が72時間まで観察された。2%では1匹のウサギにおいて1,24および48時間でグレード1の紅斑がみられたが、浮腫は観察されなかった。20%ステアルトリモニウムクロリドは刺激性であるが2%ステアルトリモニウムクロリドは非刺激性であると結論づけた

花王ケミカルの安全性データシート(文献3:2016)によると、

  • [動物試験] 60%~70%ステアルトリモニウムクロリドをウサギに4時間塗布したところ、皮膚刺激性はなく、区分外(安全性が高い)に分類された

日光ケミカルズの安全性データシート(文献4:2016)によると、

  • [動物試験] 25%ステアルトリモニウムクロリド溶液をウサギに点眼後、非洗顔で1日後33.5、2日後37.8、7日後73.8(最大評価110)となっており、強い刺激性と示された。また、2.5%溶液をウサギに点眼後、非洗顔で1日後10.7、2日後6.7、7日後0(最大評価110)となっており、弱い刺激性と示された

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、2%以下では刺激性がなく、20%以上の濃度では刺激性がありますが、3分間の適用では刺激性ではないというデータもあるため、低濃度(2%以下)の場合は皮膚刺激性はほとんどなく、高濃度の場合は3分ほどの適用では刺激性はほとんどないが、1時間以上の適用では皮膚刺激性があると考えられます。

ステアルトリモニウムクロリドは、ヘアコンディショニング剤以外にほとんど使用されず、洗い流すことが前提となるので、実質ほとんど刺激がないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Cetrimonium Chloride, Cetrimonium Bromide, and Steartrimonium Chloride」(文献1:1997)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギにステアルトリモニウムクロリド(濃度や用量は記載なし)を点眼したところ、すすいだ眼およびすすいでいない眼の両方で最大13日間刺激が続いた。1匹は液状のめやにを有し、6匹は眼の周りに出血がみられた。これらの結果からステアルトリモニウムクロリドは重度の眼刺激性と結論付けられた(Sherex Chemical Company, Inc.,1986)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢に10%ステアルトリモニウムクロリド水溶液100μLを点眼し採点したところ、最大眼刺激スコア110のうち60.3であり、最大角膜刺激スコアは36.7で、非常に刺激性が強かった(Itagaki et al.,1991)
  • [動物試験] モルモットの結膜嚢にステアルトリモニウムクロリド水溶液100μLを点滴注入し、0.5,1,2,3,4,5,6および24時間後に刺激の兆候について眼を評価したところ、最大眼刺激スコア110のうち96で、非常に刺激性が強かった(Bracher et al.,1988)

花王ケミカルの安全性データシート(文献3:2016)によると、

  • [動物試験] 60%~70%ステアルトリモニウムクロリド溶液をウサギで試験したところ、区分1(刺激性が高い)に分類された

日光ケミカルズの安全性データシート(文献4:2016)によると、

  • [動物試験] 25%ステアルトリモニウムクロリド溶液をウサギに点眼後、非洗顔で1日後33.5、2日後37.8、7日後73.8(最大評価110)となっており、強い刺激性と示された。また、2.5%溶液をウサギに点眼後、非洗顔で1日後10.7、2日後6.7、7日後0(最大評価110)となっており、弱い刺激性と示された

と記載されています。

動物試験結果のほとんどで重度の眼刺激性と結論付けられているため、強い眼刺激性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Cetrimonium Chloride, Cetrimonium Bromide, and Steartrimonium Chloride」(文献1:1997)によると、

  • 20匹のモルモットに誘導期間において0.75%ステアルトリモニウムクロリドを含むエタノールを、チャレンジ期間において0.5%ステアルトリモニウムクロリドを含むエタノールを適用したところ、20匹中15匹が陽性反応を示した(Sherex Chemical Company, Inc.,1986)

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Trimoniums as Used in Cosmetics」(文献2:2012)によると、

  • [動物試験] 20匹のモルモットに誘導期間として4%ステアルトリモニウムクロリドを含むエタノールを閉塞パッチ下で6時間適用し、8日目と15日目に繰り返し適用した。チャレンジパッチは29日目に1%ステアルトリモニウムクロリドを含むイソプロパノールを同じ部位に6時間適用し、パッチ除去後に評価したところ、臨床的に誘導期間およびチャレンジ期間において感作反応は観察されず、これらの条件下では感作物質ではないと結論付けられた
  • [動物試験] 10匹のモルモットの剃毛した皮膚に誘導期間として0.1%ステアルトリモニウムクロリドの皮内注射を行ない、そのあと5%ステアルトリモニウムクロリドの閉塞パッチを48時間適用した。チャレンジパッチは21日目に行われ、右肩に10%、左肩に5%ステアルトリモニウムクロリドのパッチが適用された。24および48時間で誘導部位に中等~重度の明瞭な紅斑がみられたが、チャレンジ部位では皮膚反応は観察されなかったため、これらの条件下ではステアルトリモニウムクロリドは感作物質ではないと結論づけた

と記載されています。

試験結果をみたところ、1997年に掲載されている試験結果では75%が陽性反応を示したものがありますが、2012年に掲載されている試験結果では皮膚感作性なしで共通しており、ステアルトリモニウムクロリドはヘアコンディショナーに広く使用されていますがアレルギーの報告はみあたらないため、ヘアコンディショナーなど洗浄製品に配合される場合において皮膚感作(アレルギー)はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ステアルトリモニウムクロリド ■■

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ステアルトリモニウムクロリドは■■(∗3)となっており、毒性・刺激があるという判定になっていますが、化粧品毒性判定事典は合成界面活性剤はすべて■■の極端な判定になっています。

ステアルトリモニウムクロリドはヘアコンディショナーやトリートメントなど毛髪に塗布する製品に配合され、なおかつ洗い流しが前提の製品に配合されるので、皮膚への毒性の心配はありません。

∗3 ∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ステアルトリモニウムクロリドは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1997)「Final Report on the Safety Assessment of Cetrimonium Chloride, Cetrimonium Bromide, and Steartrimonium Chloride」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1080/109158197227152> 2017年11月27日アクセス.
  2. “Cosmetic Ingredient Review”(2012)「Safety Assessment of Trimoniums as Used in Cosmetics」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1091581812467378> 2017年11月27日アクセス.
  3. 花王ケミカル(2016)「安全データシート」, <一般非公開> 2017年8月24日アクセス.
  4. 日光ケミカルズ(2016)「安全データシート」, <https://www.chemical-navi.com/product_search/detail488.html> 2017年8月24日アクセス.

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