ステアリン酸PEG-100とは…成分効果と毒性を解説

乳化
ステアリン酸PEG-100
[化粧品成分表示名称]
・ステアリン酸PEG-100

[医薬部外品表示名称]
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるステアリン酸に酸化エチレン(約100モル)をエステル結合して得られるモノエステル(∗1)であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン脂肪酸エステル(∗2)に分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です。

∗1 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

∗2 分類名称としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの他にもポリエチレングリコール脂肪酸エステルまたは単にポリエチレングリコールエステルとよばれることもありますが、呼び方が違うだけで同様の分類です。

一般的に化粧品によく使用されているモノステアリン酸ポリエチレングリコールは、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗3)
ステアリン酸PEG-2 2 親油性


親水性

ステアリン酸PEG-10 10
ステアリン酸PEG-25 25
ステアリン酸PEG-40 40
ステアリン酸PEG-45 45
ステアリン酸PEG-55 55
ステアリン酸PEG-75 75
ステアリン酸PEG-100 100
ステアリン酸PEG-150 150

∗3 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため(文献2:1990)、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のモノステアリン酸ポリエチレングリコールが配合されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、洗顔料などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

ステアリン酸PEG-100の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
17.0 O/W型乳化 , 可溶化 透明溶液

このように報告されており(文献5:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として主にフェイスクリーム、乳液、ボディ用乳液、ハンドクリーム、洗顔フォームなどに使用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1983年および2002年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ステアリン酸PEG-100の配合製品数と配合量の調査結果(1983年および2002年)

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ステアリン酸PEG-100の安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアリン酸PEG-100の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に100%ステアリン酸PEG-100を対象に1週間のうち48時間パッチを2回適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚反応はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 188人の被検者に1%-3%ステアリン酸PEG-100を含むスキンコンディショナーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、チャレンジパッチ後にいずれの被検者も皮膚反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 188人の被検者に1%-3%ステアリン酸PEG-100を含むスキンコンディショナーを対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も光感作反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ステアリン酸PEG-100は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of PEG-2,-6, -8, -12, -20, -32, -40,-50, -100, and -150 Stearates」Journal of the American College of Toxicology(2)(7),17-34.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX 8100」技術資料.

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