ステアリン酸ポリグリセリル-10とは…成分効果と毒性を解説

乳化 分散
ステアリン酸ポリグリセリル-10
[化粧品成分表示名称]
・ステアリン酸ポリグリセリル-10

[医薬部外品表示名称]
・モノステアリン酸ポリグリセリル

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるステアリン酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、12個の水酸基をもつポリグリセリン-10(∗2)を親水基としたモノエステル(∗3)であり、多価アルコールエステル型のポリグリセリン脂肪酸エステルに分類される分子量432.6の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。

∗2 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ポリグリセリン-10とは10個のグリセリンがまとまって10量体(平均重合度10)として機能する重合体です。またギリシャ語で「10」を「デカ(deca)」といい、デカグリセリンとも呼ばれます。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、シート&マスク製品、日焼け止め製品、ヘアスタイリング製品、ネイル製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

ステアリン酸ポリグリセリル-10の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
12.0 , 12.5 , 14.0 , 14.1 , 15.1 , 17.5 O/W型乳化 透明分散 – 透明溶液

このように報告されており(文献6:-;文献7:-;文献8:2010;文献9:-;文献10:-;文献11:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主に乳化系スキンケア化粧品、ボディケア製品、ハンドケア製品、洗顔料、シート&マスク製品などに使用されています。

一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品用乳化剤として汎用されていることから、安全性の高さが認められており、疎水基である脂肪酸の種類や親水基であるグリセリンの重合度を変えることで様々なHLBのものが利用できることから、化粧品用乳化剤としても汎用されています。

また、O/W型乳化能およびその安定性において、中性域では同HLBのショ糖脂肪酸エステルと比較すると同等もしくは若干劣るものの、酸性が強くなるにつれてポリグリセリン脂肪酸エステルのほうが優れ、弱酸性域(pH3.5-5付近)ではポリグリセリン脂肪酸エステルに特異的であることが知られています(文献5:1986)

分散

分散に関しては、水相(水中)における酸化チタンなどの顔料を分散する目的で日焼け止め製品などに使用されています(文献12:-)

混合乳化剤としてのステアリン酸ポリグリセリル-10

ステアリン酸ポリグリセリル-10は、他の乳化剤と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ステアリン酸ポリグリセリル-10と以下の成分が併用されている場合は、混合系乳化剤として配合されている可能性が考えられます。

原料名 NIKKOL Decaglyn 1-50SV HLB 15.0
構成成分 ステアリン酸ポリグリセリル-10、ポリグリセリン-10
特徴・主な用途 親水性乳化剤、分散剤
原料名 HELIOGEL
構成成分 リン脂質、ヒマワリ種子油、アクリレーツコポリマーNa、水添ポリイソブテンステアリン酸ポリグリセリル-10
特徴・主な用途 べたつき感のない優れた質感のジェルクリームを調製する、ヒマワリ由来のリン脂質及びヒマワリ種子油を配合した乳化作用を併せもつゲル化剤

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ステアリン酸ポリグリセリル-10の配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

スポンサーリンク

ステアリン酸ポリグリセリル-10の安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアリン酸ポリグリセリル-10の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1980年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [ヒト試験] 48人の被検者に10%ステアリン酸ポリグリセリル-10を対象に48時間閉塞パッチ試験を実施し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(Nikko Chemicals Co Ltd,2016)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギ角膜上皮由来細胞(SIRC細胞)に最大1,000mg/Lステアリン酸ポリグリセリル-10を暴露した後、72時間培養後のSIRC細胞の細胞生存率を評価指標として、眼刺激性を評価したところ、非刺激であった(Nikko Chemicals Co Ltd,2016)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、食品添加物および化粧品など1980年代からの使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ステアリン酸ポリグリセリル-10は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. “Pubchem”(2019)「3-(2,3-Dihydroxypropoxy)-2-hydroxypropyl stearate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/3-_2_3-Dihydroxypropoxy_-2-hydroxypropyl-stearate> 2019年11月1日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 松下 和男, 他(1986)「ポリグリセリン脂肪酸エステルの現状」油化学(36)(2),71-79.
  6. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL Decaglyn 1-SV」技術資料.
  7. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL Decaglyn 1-SVEX」技術資料.
  8. 日清オイリオグループ株式会社(2010)「サラコス PGMSV」技術資料.
  9. 阪本薬品工業株式会社(-)「Sフェイス S-1001P」技術資料.
  10. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト Q-18S-C」技術資料.
  11. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト Q-18Y-C」技術資料.
  12. 大日本化成株式会社(-)「コスメサーブR WP-40W」技術資料.

スポンサーリンク

TOPへ